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中日新聞・静岡新聞の両編集局長を迎えたゲスト講義を行いました。(12月1日開催)

公開日:2020年12月7日

本年度後期授業より開講している「メディアとしての新聞/社」(担当:文化政策学科・加藤裕治教授)では、全15回の授業のうち中日新聞、静岡新聞の両社が6回ずつを担当し、報道の最前線で活躍する両社の記者や社員の方々が講師を務めています。

12月1日の第9回では、中日新聞東海本社編集局長・林浩樹氏、静岡新聞編集局長・荻田雅宏氏をお招きし、「新聞の役割」について講義が行われました。講義に先立ち、本学横山学長から「両社編集局長がそろうのは珍しく、またとない機会。コロナ禍でメディアに対する見方が変わってきている中で、貴重なお話をお伺いしたい」と挨拶がありました。
中日新聞・静岡新聞の両編集局長を迎えたゲスト講義のようす
本学と中日新聞社(愛知県名古屋市)・静岡新聞社(静岡市)は、ジャーナリズムやメディア・リテラシー、文化事業、また地域貢献など、新聞社が社会に果たしてきた役割について、授業を通じて学生に対して講義する共同授業に関する連携協定を締結しています(2019年11月)。

中日新聞東海本社編集局長 林 浩樹氏

過去に特派員としてバンコクに駐在していた林局長
地元・石川県小松市で記者のキャリアをスタートした林局長は、国内勤務を経てバンコクで特派員を経験しました。その頃のタイ国内は、政情不安により反政府運動が勃発し、パタヤで開催されたASEAN会議にデモ隊が乱入するなど、不安定な状況が続いていました。国際報道の最前線でそのダイナミズムを感じたといいます。

国内では2000年をピークに新聞の発行部数は減少し、多くの人がインターネット上で情報を得るようになりました。新聞(朝刊)1部あたり約300本の記事が掲載されていますが、Facebookに流れる一日の情報量は新聞の10万年分ともいわれ、その差は歴然です。

しかし、昨今問題となっている「フェイクニュース」のように、情報を得る側にはメディアリテラシーが求められます。特に政治や経済の世界では、「オルタナティブファクト(もう一つの真実)」「ポスト・トゥルース(ポスト真実)」のような言葉もあり、民主主義の主権者としてどのように情報を取捨選択し真偽を確かめるのかは課題です。
そのような中で新聞の使命は、事実を伝えることであり、埋もれた問題を掘り起こし、人権・民主主義・言論の自由を守ることであるといいます。新聞記者は、権力を監視し、社会的弱者や地域社会に寄り添うことで、それを担保しています。
講義をする林局長

作り手が記事を選び多くのチェックが入ることにより、新聞は内容の信頼性が比較的高くなります。また、政治、経済、社会から地域、スポーツに関することまで広く取り上げている新聞は、読者が興味がある記事だけでなく、紙面をめくっていくと見出しが目に入り「新しい出会い」が生まれます。それを林局長は「寄り道文化」と表現しました。

最後に学生に対して、インターネットで得る効率性ある最短距離の情報だけでなく、道草をしながら良い記事との出会いを楽んでほしい、と結びました。

静岡新聞社編集局長 荻田雅宏氏

荻田局長から学生に対し、普段どのようにニュースを知るかを問いかけ
総務省が行った調査によると、年代別のニュースを得る手段は10代から20代のほとんどはSNSやポータルサイトからであり、新聞の割合は減り続けているといいます。
しかし、SNSやポータルサイトにはない新聞の機能「社説・コラム」は、新聞社のニュースに対する考え方が示されています。
ベテラン記者で構成される論説委員が直近のニュースについて議論し、分析した内容が書かれている「社説」は、個人ではなく新聞社の視点で書かれているという前提から署名がありません。明治時代に国内で新聞ができたときからあった「社説」は、事実を伝えるだけではない新聞の役割を担っています。「コラム」(静岡新聞:大自在、中日新聞:中日春秋)は、主義・主張よりも読者に共有したいことや共感を得られる内容が書かれており、時事性をもった各社さまざまな切り口になっています。
新聞の役割は、いま何が起こっていているのかを正しく伝えることで、知恵を出し合い問題を解決する民主主義の土台を支えることである、といい、学生たちにも問題や話題を共有し、意見を交わしてみてほしい、と結びました。

トークセッション

両編集局長、加藤教授によるトークセッション

トークセッションでは加藤教授から「コロナ禍の報道の現場」がどうなっているのか、という話題が提供され、両編集局長がそれぞれ振り返りました。

林局長は、取材の方法での試行錯誤が挙げられ、「人と会って、話を聞いてなんぼ」という従来の取材方法が制限されることになり、リモート取材も取り入れているということ。また、情報インフラとしての新聞として業務停止を防ぐため、ウイルスを社内に持ち込まないためにしっかりと対策に取り組んでいるということが話されました。

荻田局長からも取材方法への対応に関して、特に医療関係者には取材が出来ない状況があり、一般でも感染を恐れて取材を遠慮する人もいるということもあるいうことに触れました。また、今回のコロナ禍に際して、新聞社がいかに労働集約型労働であるかを感じているそうです。印刷や記事整理などの人との距離が近い中で行う作業や、自宅では出来ない作業もあり、対策は徹底しながらもギリギリの状態であるといいます。

リモート取材に関しては、これまでとは違う方法ではありますが、取材先の都合がつけやすかったり、遠方の方にも取材がしやすいなどのメリットも感じているそう。しかし、本来は顔を見て話したいこと以外も聞いていくことが取材であり、つっこんだ内容は難しくなるということでした。
学生からは「毎日の感染者数報道が市民の不安を高めているのでは。報道のあり方はどうあるべきか」という質問が挙がりました。
これに対しては、正しく恐れて正しく判断するためにも、事実を基本として報道することが重要であり、一方で、このような社会状況だからこそ明るい話題は積極的に取り上げるようにしていると返答。またクラスター発生の店舗等には配慮は必要だが、感染対策やその後の対応、言い分までしっかり伝えることで、最後まで責任をもって報道していると述べられました。
[発行部署:企画室]