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出版助成


クロードロラン

クロード・ロラン―17世紀ローマと理想風景画

小針 由紀隆[著]
論創社 2018年3月
ISBN 978-4-8460-1684-5

著者からのメッセージ

本書はクロード・ロラン(1604/05-1682)を軸にした西欧風景画論です。クロードはフランス生まれですが、少年時代にローマに移り住み、画家として揺るぎない地位を築きました。温かい光に包まれた牧歌的風景や、均衡のとれた秩序ある構図は、とりわけ富裕な貴族層に好まれました。カンパーニャと呼ばれるローマとその近郊を愛したクロードは、変化してやまない自然の様態を繰り返し素描する一方で、美術史でいう理想風景画の様式を確立しました。本書はこうした画家を中心に、17世紀風景画の成立と展開、そして19世紀の自然主義の興隆との関連を描き出すものです。

本書で取り上げる課題は以下の三点です。(1)クロード以前、すなわち理想風景画の確立される以前のローマにおける風景画の諸事情はどのようなものだったのか。(2)クロードはいかなる過程を経て、理想風景画の様式を確立・展開していったのか。(3)クロードのカンパーニャにおける自然研究は、没後100年を経て興隆した自然主義的風景画とどのような関係にあったのか。――本書における主役はクロード・ロランですが、著者が目指したのは「風景画家論」というより「風景画論」です。したがって全体の構成も、最初の3章は理想風景画の「兆候」、次の3章は理想風景画の「誕生」、続く4章は理想風景画の「諸相」、そして最後の2章は理想風景画と「19世紀」となっています。

本書の執筆には2年半を費やしました。しかし、「あとがき」でも述べたとおり、著者とクロードとの付き合いは30年余に及び、本文に収めきれなかった話題も多々あります。一冊の本ですべてを書こうというのは愚かな行為ですので、それらはいきおい削除されたわけです。わたしたち日本人にとって理想風景画は理解しやすい芸術でなく、邦語で読める専門書もこれまで出版されていません。今回の出版によって、クロード・ロランと理想風景画の史的展開への理解が深まり、美術史研究の欠落部を補うことができれば、筆者としては幸いと考えています。
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