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出版助成


日中比較産業史 本の表紙画像

日中比較産業史: 取引慣行と制度に見る戦前期日中経済の特質

四方田 雅史[著]
春風社 2016年2月
ISBN 978-4861104862

著者からのメッセージ

この本は、私が15年間書いてきた論文を「1つの論旨」からまとめたものです。
現在、グローバル化の中で経済制度やそれをめぐる私たちの観念は1つに収斂すると言われてきました。にもかかわらず、各国・地域の制度や仕組みの違いは維持され、そこから文化摩擦があちこちで起きています。その歴史的淵源を、戦前東アジアを対象に史料や統計などから分析することが、先に述べた「1つの論旨」に当たります。戦前期も東アジアを舞台に文化・経済交流が盛んでした。しかし、この活発な交流ゆえに日本と中国・台湾との経済的差異が強く意識され、そのため文化摩擦や経済摩擦が数多く起きました。当時日本・中国双方に存在した製造業や、ともに導入を試みようとした取引所・輸出検査・会社制度を分析対象にして、産地、企業間協力や品質などに対する日本人と中国・台湾人の経済意識の違いを、摩擦の原因・背景として本書で明らかにしようとしました。
もう1つの特徴は、こうした違いを互いに理解し得ない違いとして捉えるのではなく、それぞれの異なる慣行や制度・価値観を成り立たせているのは、別の意味においてですが、同じ「合理性」であると捉え、この2種類の合理性を相対化しようとしたことです。すなわち、ある環境では日本、または中国の制度が合理的になることがあり、日本の慣行は「19世紀的近代化」には有利だったかもしれませんが、必ずしも有利になるわけではないことも示唆されます。この解釈の当否は読者にゆだねるしかありませんが、そう考えることにより多文化理解の糸口になると考えたためです。
もともと論文のために文体が硬く冗長なところもあるかと思いますが、今目の当たりにしている日本・アジア間の経済における文化摩擦や制度的差異に関心を持っている方に一読いただきたい本となっています。そして、最後に本学の出版助成によって出版にこぎつけられたことに感謝いたします。
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