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出版助成


中東欧の文化遺産への招待表紙

中東欧の文化遺産への招待―ポーランド・チェコ・旧東ドイツを歩く

四方田 雅史/加藤 裕治[編著]
青弓社 2018年3月
ISBN 978-4-7872-2073-8
 

著者からのメッセージ

 本書『中東欧の文化遺産への招待―ポーランド・チェコ・旧東ドイツを歩く』は中東欧のさまざまな文化遺産とその周辺・関連領域を渉猟しながら、広く一般読者に触れてもらうために平易な文章と写真を使いその研究成果を紹介しようとしたものである。
 「はじめに」にも書いたように、これは本学の共同研究の成果の一部であるが、それを始めた理由は、中東欧が現在文化政策にとってホットな地域だとの認識があったからである。まず、中東欧に限らないが、文化遺産の範囲が世界的に拡大していることが挙げられる。第二次世界大戦前までの中東欧はユダヤ人やドイツ人、ロマ、ウクライナ人などさまざまな民族が共存する多文化的地域であった。戦後は単一民族国家に近い構成になっているが、そうしたマイノリティの遺産を重視していく状況は、多文化主義の流れから中東欧をはじめ各地で起きている。また、産業遺産やナチ時代・社会主義時代の「負の遺産」、歴史的町並みの保全など、文化遺産の新たな領域が文化政策にさまざまな課題を突き付けていることも紹介した。特に前半部(第1章から第5章まで)はそのような文化遺産の新たな領域を、中東欧を舞台に紹介し、その現状について分析を加えている。
 また後半部(第6章から第9章まで)は文化遺産と各隣接領域との関係性に着目して本書を編集している。この視点も本学ならではの視点であり本学の個性でもあると言える。まず、メディア(とりわけ映画)と文化遺産・観光との関係、芸術施設と文化遺産の融合の可能性について紹介・分析している。特に後者の領域は「創造都市」を謳う浜松市にとっても学ぶべきことがあるのではないか。またデザイン学部の先生の協力も得て、現代建築、古い建築のリノベーション、それらをも包摂した「建築ツーリズム」の可能性、および中東欧特有のデザインのあり方、それと関連する「デザイン・ツーリズム」の可能性についても紹介している。
 以上のように文化遺産は文化財政策だけではなく、さまざまな文化諸領域とも関連しあっており、それを見出そうとした意味で静岡文化芸術大学の個性がにじみ出た本に仕上がっているのではないか。この本を読んで文化遺産の新たな動向に関心を持っていただき、ひいては中東欧を違った目線で観光・旅行する助けになったら編者・執筆者ともに幸甚である。
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