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令和元年度・前期公開講座「匠とデザイン」第1回「布のデザインと匠の技」を開催しました。(7月13日)

公開日:2019年7月22日
静岡文化芸術大学では、平成31年4月、デザイン学部デザイン学科の中に匠領域を開設しました。それに伴い、日本の伝統建築・伝統工芸についての理解を深めていただく機会として、前期公開講座「匠とデザイン」(全2回シリーズ、今年度は7月13日・7月27日)を開催しております。

令和元年度 前期公開講座「匠とデザイン」チラシ[PDF:1.4MB]


講演する藤井尚子准教授
7月13日(土曜日)には、第1回目の講座「布のデザインと匠の技」が開催され、高校生を含む多くの市民の皆さまにご聴講いただきました。
参加者は、大型スクリーンに映し出される豊富な資料や写真とともに藤井准教授が解説する布づくりの技術の変遷などに熱心に耳を傾けました。

講演では藤井准教授の研究内容や作品についての紹介もあり、参加者の皆さまからは「予想以上に奥深い内容で、とても有意義でした」「単に作品を紹介するだけでなく、作り手の哲学みたいなものに触れられた思いでいます」などの感想が寄せられ、大変好評でした。

講演後に設けられた質問コーナーでは藤井准教授に多くの質問が寄せられ、いくつかの質問については、来場者の皆さまの前で回答させていただきました。講師にとっても非常に有意義な時間となりました。
残念ながら、時間の都合で、当日はすべての質問にはお答えできませんでしたが、回答できなかったご質問には、藤井准教授から以下のとおりお返事をいただいておりますので、ご高覧いただければ幸いです。
 
 
匠とデザインチラシ
染色の技術について説明する様子

藤井准教授の作品の一部分

質問コーナーの様子
前期公開講座「匠とデザイン」テキスタイルのデザインと匠の技(7月13日開催)質問票への回答

Q1.染めは染めるところと染めないところの制御との話でしたが、最初の方ににじませたものは、どのように制御されているのか

A1.制御には、二つの点があります。一つは「物質による制御」、もう一つは「意図による制御」です。防染は、親水性のある布(=繊維)に浸透する染料の特性を、状態が変化すると疎水性になる物質(ロウ、糊など)を置く、もしくは板や糸などで圧する等、物理的に防いでいます。同時に、制作者のイメージに合わせ[形]を与えるといった、意図的に染めない部分を作り出してもいます。
「にじみ」は、布の厚さ・密度と染料と水の量によっても調整ができますが、物質的な特性ならではの効果だと考えています。その点では、「物質による制御」といえます。「意図による制御」とは違う、思いがけない表情が現れ、新たなイメージが生まれることが多々あります。

Q2.一枚の作品を満足いくように染め上げようと思うと、どのくらいの時間がかかりますか?

A2.作品の大きさにもよります。30×30cm程度の小さなサイズだと、1〜2日で染色できます。500×100cm程度の大きなサイズですと、約1〜2週間かかります。私の場合は防染剤にロウを使用していますので、ロウを置いてすぐに染め始められます。友禅や型染めなど糊を使用する方は、糊置きしてから乾かすまで1日はかかります。また、染色した後の乾燥、染着、水洗、乾燥など、人間の気持ちではどうすることもできない[待つ時間]も加味しなくてはなりません。防染と染色を繰り返すため、その度に待つ時間を加算します。また、「満足いくように」という観点からは、作品から離れて見る、[眺める時間]も必要になります…どんなものでも、ものづくりは時間がかかるものですね!
 

Q3.納得いくまでなんども染め直す事が普通なのでしょうか

A3.はい。納得いくまで、何度も、作業を行います。私は刷毛染といって、刷毛に染液を含ませ布をしごいて染めていく方法をとっています。そのため、一つの色でも濃度の異なるものを複数準備し、また、一つの色を分解した二色以上の色なども準備し、これらを少しずつ重ねていきます。布は紙と違って濡れた状態でもほつける(・・・・)ことがないため、布の上で納得いく色を抽出します。
 

Q4.作品を考えたりしている間、寝る時間はありますか?

A4.はい、しっかり寝ています。ですが、目を瞑っても顔突き合わせている作品の色などが浮かび上がってくることもあります。しっかり眠ったほうが、フレッシュな気持ちで作品に向き合えますよ!

Q5.道具はどこで購入していますか?

A5.最近は染色を趣味となさる方が多くいらっしゃるため、東急ハンズや手芸店などでも染料を求めることができます。ですが、道具類は、専門店などで求めるのがベターです。道具類は「田中直染料店」、染料や助剤は「藍熊染料」などで購入しています。

Q6.実際に体験できる場はありますか?

A6.染色ワークショップは、様々な場所で開催され、参加できる機会も多くあるようです。これらのワークショップに参加する際には、「染料(藍染や植物染料/化学染料など)」、「技法(浸染、絞り染、型染め、友禅染、ロウケツ染など)」などテーマも広いため、体験したい内容に合ったワークショップを探すのがポイントです。
匠領域では、これから様々な防染技法も学んでもらいますので、本学に入学していただければ、体験可能です!
 

Q7.手ぬぐいを愛する高校1年の娘が匠領域に大変興味を持っています。今後の過ごし方についてアドバイスをいただけたら幸いです。

A7.本学では、毎年8月にオープンキャンパスが行われています。実際に訪ねてみられると良いかと思います。大学の雰囲気や、大学生とのフレンドリーな触れ合いをとおして、近い未来を具体的に想い描けるようになると思われます。また、手ぬぐいを愛する、という素敵な嗜好は大切に育てていってください。「好きこそ物の上手なれ」です。
 

Q8.物質の持つ力を科学的に芸術として誕生させる技は、まさに匠の技ではないでしょうか?先生は「民藝」という伝統工芸について、どんな考えがありますか?

A8.「民藝」は、これからのデザインを考える手がかりとしても興味深いものと考えています。イタリアのデザイナーであり幼児教育者でもあるB.ムナーリは、最適解を求め繰り返すデザイン=「リデザイン」こそが、日本のデザインの特徴であると指摘しました。民藝はまさに、日本人自らが自らの生活の最適解を求めた「リデザイン」であると考えられます。「民藝」の持つ役割は、生活の中に当たり前に合った当時と現代とでは大きく様変わりし、今日では教養的・趣味嗜好的評価にシフトしています。「ざざんざ織」など魅力的な民藝を残す浜松は、初期民藝運動の蠕動が現れた地でもありますので、民藝を手がかりに、この地の工芸やデザインを考えていくことも可能かもしれませんね。
 

Q9.雪花絞りの「おしめ」が、アフリカ向けの輸出品になった理由は、なんだったのですか?

A9.雪花絞りとは、布を三角形になるよう規則的に屏風だたみし、それを正三角形や二等辺三角形の板で挟み、三角形の頂点を浸染することで、雪の結晶のようなパターンが生じる「板締め染」の技法のことです。「嵐絞り」と同じように、一気に着尺丈を染めることができ、生産性が高く、また、多色の染液を使用することで、カラフルな模様を染め出すことができます。手間のかからない「雪花絞り」は、日本においては「おしめ」など廉価な製品の加工技法として見なされていました。しかし、アフリカ向け輸出が始まり、大柄でカラフルな模様の大判の生地に需要が生まれると、他の絞り技法にはない「雪花絞り」の特徴が注目されました。現在でも日本では、手間がかかる=高級品とみなす向きがありますが、手間を掛けなくても魅力的な製品を生み出し、付加価値をつけることは可能です。そのためにはデザインの役割はたいへん大きなものとなります。
 

Q10.病院のアートに関心があります。 総合病院で何時間も待たされるときあの空間にウンザリしたことがあるからです。
先生のプロジェクトが実現したその大学病院は、どのような背景があって、企画されたのでしょうか。
また、病院側にどういう条件が揃うと、アートが入っていく可能性が生まれるのでしょうか。

A10.昨今、病院のアートは、様々な観点から注目されています。患者やその家族の不安や苦痛を和らげる効果だけでなく、病院で働く医師・看護師、スタッフにとっても働く環境を整え、ストレスを軽減させる効果など、様々な研究がなされています。病院のアートワークを作成する前から病衣研究を行なっており、折々研究協力いただくため病院を訪れていましたが、清潔でありながらも殺風景なエントランス・アトリウムを「よそよそしく」感じていました。さらに、(違う病院ですが)父が入院したという個人的な出来事が重なり、患者だけでなく付き添い家族の様子にも気がつきました。病院の中を観察していると、患者さんだけでなく付き添い家族、スタッフの皆さんも、辛いことや心配事があるためでしょうか、一様に下を向いて歩いていたのです。そこで、気分転換できる、上を向いて深呼吸できるような空間を提案したい、と考えました。今回ご紹介したプロジェクトの場となった病院は、当時勤務していた大学の附属病院であったこともあり、プロジェクトを計画し、交渉・実行しやすかった背景があるかと思います。同時に、附属病院は多くの市民が利用していたこともあり、大学内の閉じた研究を開いて示す、絶好の機会でもあると考えておりました。このことからも、「場」の課題(多くの方がそう感じている課題)と、潜在的な要望(プロジェクトを実施した際の裨益者を限定せず、場に関わる人々がなんらかの形で裨益できることも考え、様々な潜在的な要望を勘案すること)を掬い上げながら企画しました。病院側にとってもメリットがあることを示したことが、協力を得られた一因だったと考えています。
 
なお、静岡文化芸術大学では、7月27日(土曜日)にも前期公開講座「匠とデザイン」(第2回)「日本を創った漆芸文化」と題して、東京藝術大学名誉教授 三田村有純氏による講座を開催します。ご興味のございます方は、下記リンク先からお申込のうえ、是非ご参加ください。
第2回 前期公開講座「匠とデザイン」 7月27日(土曜日) 午後1時から午後3時30分 南176講義室

「日本を創った漆芸文化」
      東京藝術大学参与、名誉教授 三田村有純

世界最古の漆の木、掻き傷のある漆の枝、漆塗り遺物が日本列島から出てくること。
100年前のヨーロッパ各国で日本の蒔絵を真似た産業があったこと。
日本の衣食住の生活に漆が密接に関わっていたこと。
これらの歴史的事実を通して日本とは何かについて考察していきます。
これからの日本の新しい姿を共に考えて参りたいと思います。

   トークセッション 「漆芸のこれから」
          三田村有純 × 小田伊織 (静岡文化芸術大学 デザイン学部 講師)                                        

お申込み・お問合せ先

静岡文化芸術大学 地域連携室
430-8533 浜松市中区中央2-1-1
Tel. 053-457-6105 Fax. 053-457-6123

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