教育・研究

2023年03月30日

国際文化学科二本松ゼミ(伝承文学)の学生が編著した書籍『春野の民話』が刊行されました

文化政策学部国際文化学科の二本松康宏ゼミ(伝承文学)では、浜松市北部の中山間地域で昔話や伝説を採録し、書籍として刊行する活動に取り組んでいます。
『水窪のむかしばなし』(2014年度)、『みさくぼの民話』(2015年度)、『みさくぼの伝説と昔話』(2016年度)、『たつやまの民話』(2017年度)、『春野のむかしばなし』(2018年度)、『春野の昔話と伝説』(2019年度)、『北遠の災害伝承―語り継がれたハザードマップ—』(2020年度)、『春野の山のふしぎな話』(2021年度)と刊行を続け、今回の『春野の民話』で9冊目になりました。

今回の『春野の民話』を編纂したのは、二本松ゼミに所属する奥 理咲子さん、島津華梨さん、中澤明音さん、永田絵美梨さんの4名(いずれも国際文化学科3年)です。
2020年度と2021年度は新型コロナウイルス禍により調査規模の縮小やテーマの限定を余儀なくされましたが、2022年度は3年ぶりに自治会(集落)ごとの集団採録を再開。高齢者の皆さんには最寄りの公民館へお集まりいただき、和やかで活気ある雰囲気のなかでの採録調査が戻ってきました。

浜松市長と本学学長に採録調査の成果を報告し、献本を行いました

浜松市長への献本の様子の画像
書籍の刊行を鈴木康友浜松市長と本学横山学長に報告し、献本を行いました。
学生4名が思い出に残ったエピソードなどを述べると、鈴木市長からは採録調査や編集に至る地道な活動に対する労いと、出版へのお祝いの言葉をいただきました。
横山学長は学生一人ひとりに調査の思い出や苦労話を尋ね、本を出版することの大変さに労いの言葉をかけられました。
学生たちは「地域の人たちが温かく迎えてくださった」「行政やNPOの方たちの協力がなければできなかった」「解説の執筆は難しくて何度も心が折れかかったけど、4名のメンバー同士で助け合いながら出版までこぎつけた」とそれぞれの思いを語りました。
学生らから横山学長に献本を行う様子の画像
学生らに調査について質問する横山学長の画像

春野町では5年目となる本年度の調査では町内の豊岡地区と宮川地区を訪問。2022年5月から2023年1月までに計23回の調査を重ね、約80名の高齢者の方にお会いし、そのうちの52名から昔話95話、伝説56話、世間話41話、言い伝え49話、合計241話を採録しました。調査で採録された民話は学術的な位置付けや記録価値を検証し、「民間口承文化財」としての保存と継承を目的として「方言のまま」「語り口のまま」に翻字・記録し、地域の解説などを書き添えて書籍として編集します。

二本松康宏教授からのコメント

地域に伝えられた「伝説」、家庭の中で語り継がれてきた「昔話」、ごく身近なコミュニティのなかでまことしやかに語られた「世間話」などは、いずれも本来は「民間口承文化財」と呼ばれるべき価値を持つものです。それは地域と家庭に受け継がれた「心と記憶の文化遺産」と言えます。

近年の極端な高齢化と過疎化によって、そうした民話の伝承は風前の灯火ともいえる状況にあります。それは伝承や伝統が途絶えるというだけではなく、それを語り継いできた地域、家庭、コミュニティの断絶や消滅を意味します。

私たちのゼミの活動理念の一つに「学術をもって地域に貢献する」があります。民話を採録するということは、「生活の誇り」を記録するということ。ただ昔話や伝説を本にまとめるのではなく、その土地で暮らす人たちに「自分たちが語り継いできた話に、実はこんな意味があったのか」「自分たちが暮らすこの土地に、そんな背景があったんだ」と再認識していただけるような書籍の刊行を目指しています。

書籍情報

『春野の民話』書影画像

『春野の民話』

監修:二本松康宏
編著:奥 理咲子、島津華梨、中澤明音、永田絵美梨
発行:三弥井書店
発行日:2023年3月21日
ISBN 978-4-8382-3405-9 C3039
定価:1200円(税抜)
表紙画:川嶋結麻(本学国際文化学科卒業生)

書籍は全国の書店をはじめ、各オンラインショップで購入可能です。

発行部署:企画室