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教員からのメッセージ

上山典子 講師写真

音楽を単に作品レパートリーとしてではなく、
生きた体験として捉えることを重視しています。

上山典子 講師 文化政策学部
芸術文化学科
ヨーロッパの建物の画像

研究・取り組みの内容について教えてください。

専門は西洋芸術音楽(いわゆるクラシック音楽)で、とくに「長い19世紀」(1789-1914年)の音楽史や音楽文化に関心を寄せています。現在の研究テーマも、その19世紀に音楽社会現象ともなった「ピアノ編曲」です。編曲とは、例えば交響曲をピアノ1台で演奏できるように楽譜を書き換えることで、当時多くの作曲家がこの作業に興味を示しました。編曲興隆の背景には、仏革命前までの王侯貴族社会に代わってリベラルなブルジョア市民階級がヨーロッパの音楽文化を形成、牽引するようになったという社会変化があり、その副産物でもある演奏会や楽譜出版、ピアノ楽器産業の発展といった当時の音楽文化史との関連から、編曲の社会的意味と役割を考察しています。
壁にぎっしりと本が並んだ図書館の画像

研究・取り組みについてのモットーを教えてください。

音楽学の研究対象は極めて多岐にわたり、またその方法も多様です。作品を楽譜上で分析することもその一つですが、音楽を単に作品レパートリーとしてではなく、生きた体験として捉えることを重視しています。それはすなわち作品の美的価値だけでなく、音楽が生み出された周囲の状況(社会的・政治的イデオロギーとの関連性)を考慮すること、音楽が人々の生活で果たしてきた役割(演奏や社会的機能)に注目すること、そしてそれぞれの時代や地域に特有の音楽文化(社会文化史的脈絡)に目を向けることです。今後も音楽の歴史を作品や構造に加えて、作用や実践において発生する媒体、行為についての歴史として捉えることをモットーに、研究に取組んでいきます。
注)このインタビューは2014年度に行なったものです。
上山典子 講師
●担当学科・授業
芸術文化学科・音楽史I、音楽文化論、文化と芸術 ほか
●研究分野
音楽学(西洋音楽史)
●主な経歴
東京芸術大学音楽学部楽理科教育研究助手(2010年度)
沖縄県立芸術大学音楽学部助教(2011-2013年度)
●著書
『「新ドイツ派」概念の成立――リストのヴァイマル時代(1848-1861)と「未来音楽」をめぐる論争』、コンテンツワークス(Book Park 博士論文シリーズ)2011年
●論文・解説
「リストの《ベートーヴェンの交響曲 ピアノ・スコア》考」、『音楽表現学』No.6、2008年
「オーケストラツィクルスとしてのリストの12の交響詩――詩的素材に基づく配列と調的関連性」、『音楽学』第57巻、2011年
「ヴァーグナーのパリ演奏会(1860年)とフランスの批評家たち」『ムーサ』第13号、2012年
「フランツ・ブレンデルの『新ドイツ派』とその概念の変遷」、『音楽学』第59巻、2013年 ほか