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教員からのメッセージ

四方田雅史 准教授写真

戦前の日本とアジアの経済交流を事例にして、
現在の状況に至った過程や原因を研究。
 

四方田 雅史 准教授 文化政策学部
文化政策学科

研究・取り組みの内容について教えてください。

私は、主に戦前の日本とアジアの経済交流を事例にして、各国・各地の経済活動の根底にある観念・価値観や意識の違いについて研究を進めてきました。現在でも日本企業が海外に進出しそこでさまざまな文化摩擦を経験しますが、その先駆は戦前にも見られました。経済活動というものはとかく世界共通とか、普遍的と捉えられがちですが、実際には、経済活動に潜んでいる文化(専門的には制度と呼ぶことが多い)は多様です。しかし、その意識や観念は、その国や地域にいると自明すぎて気づいていないことも多いのです。それを理論などから説明しようとする研究者もいますが、私はそれを歴史(経済史)の立場から明らかにしようとしてきました。すなわち、現在にまで続く経済行為に潜む文化の多様性の歴史的淵源を探る試みと言えるでしょうか。

研究・取り組みについてのモットーを教えてください。

まず、歴史の研究では一次史料や統計に直接当たり、それを緻密に分析することで真実に接近しようとします。それは当然大切なことですが、もう1つ、その史料に登場する場所に行ってみることもモットーにしています。そこには何も残っていないこともありその時期と同じはずもありませんが、その場所や(残っていれば)遺構からその歴史が取り囲む雰囲気に思いを馳せることができます。
最近、その経験から歴史が残してきた文化財や遺産の問題も考えるようになりました。歴史学はできるだけありのままの史実を明らかにしようとしますが、文化財とはそこの「記憶」にまつわる問題で、忘れたい記憶は忘却・消去されますし、残したい記憶は史実以上に強調・創造されます。歴史と(歴史学が扱わない)記憶の関係を考えるのも重要と思い始めています。
注)このインタビューは2015年度に行なったものです。
四方田 雅史 准教授
●担当学科・授業
経済学基礎、社会科学の方法、静岡学、日本経済論、産業遺産と産業史、文化政策演習Ⅰ、Ⅱなど
●研究分野
経済史、産業史 特に戦前期日本と中国の比較経済史・経済関係史
●主な経歴
早稲田大学経済学研究科博士後期課程満期退学、博士(経済学)、日本学術振興会特別研究員、早稲田大学政治経済学術院助教などを経て現職。
●著書
『日中比較産業史―取引慣行と制度に見る戦前期日中経済の特質』(春風社、2016年)
(共著)猪木武徳編著『戦間期日本の社会集団とネットワーク―デモクラシーと中間団体』(NTT出版、2008年)
(共著)内田日出海ほか編『地域と越境―「共生」の社会経済史』(春風社、2014年) など。
●論文・解説
橘樸の経済社会思想―「封建」概念と発展段階説に関する見解をめぐって」『日本経済思想史研究』第14号、2014年
「上海・青島の紡織工場遺産の保全と利活用―在華紡の事例を中心に―」『産業考古学』第153号、2016年 など