イベントレポート

2022年08月16日

室内楽演奏会2022「ポプコン・リマインド―現代J-popの原点を見つめ直す―」が開催されました

室内楽演奏会が企画、運営をするシリーズ 音楽の力。8回目となる今回の公演は、「競う」をテーマにポピュラーソングコンテストについてレクチャー&コンサートを開催しました。ゲストには、ポプコンの司会者、ラジオ番組コッキーポップのDJを長年務められた大石吾朗さんと、ポプコン入賞者でもあり浜松出身のシンガーソングライターの相曽晴日さんをお招きし、ポプコンにまつわる様々なお話を伺いました。
相曽さんとポプコンの出会いは、深夜に聞いていたラジオ番組コッキーポップだったと思い起こします。恐らく多くの出演者がそうであったように、アマチュアミュージシャンが作る斬新な歌がラジオから流れてくるのを聴き、自分も応募してみようと思ったそうです。
本選会のつま恋のステージに立った際は、まるで「音楽の甲子園」のような盛り上がりで、8地区の地方予選を勝ち上がってきたミュージシャンと、それを応援しに集まった来場者の熱気、アーティスト名や作品名が入ったのぼり旗もあり、会場がうねっているようであったと当時を振り返りました。

大石さんは司会をされる中で、当時の他の歌謡番組の華麗な世界とは異なり、着古したジーパンやTシャツのまま舞台にあがるアマチュアミュージシャンの姿を見て、初めはとても驚かれたそうです。
しかし、現実味に溢れ、本音をストレートに歌で表現する彼らと接していくうちに、次第に考え方が変わり、その歌が生まれた背景を研究してみたくなったと回想します。本番前には楽屋に赴き、ミュージシャンたちの「人となり」をインタビューし、彼らの生活パターンや友人関係、家庭環境があってこそ生まれた歌なんだということを、司会者として客席にも伝えたかったと語られました。

第一部の最後には、ポプコンが現代J-popに与えた影響について意見が交わされました。ポプコンを機に、シンガーソングライターというスタイルが世間に広まっただけでなく、プロではなくアマチュア音楽愛好家が審査員を担っていたという点が、現代J-popや若者たちの文化に共通していると話されます。今日では、プロに限らず多くのアーティストがYoutube等の動画投稿サイトを通して自身の作品を発信し、その評価は一般の人が作り上げていることがほとんどです。当たり前のように思われるこの構造も、実はポプコンが作りあげた遺産なのではないかと考察しました。
この他にも、グランプリを受賞された中島みゆきさんの若かりし頃のお話や、審査員長であった川上源一さんとの思い出話など貴重な話が繰り広げられ、会場は大いに盛り上がりました。
第二部は、相曽さんのピアノ演奏にあわせ、コッキーポップのオープニングナレーションを大石さんが披露され、懐かしい雰囲気に包まれて開演しました。「舞」、「コーヒーハウスにて」や「銀河鉄道」などご自身の作品に加え、ポプコン出身のシンガーの作品、明日香「花ぬすびと」、柴田まゆみ「白いページの中に」、中島みゆき「時代」などの名曲が披露され、相曽さんの透き通る歌声が会場に響き渡りました。 

会場に足をお運びいただいた年配の方々にとっては、1970年代、80年代にポプコンで発表されたさまざまな曲を通して「懐かしい思い出」と出会えたことと思います。ポピュラー音楽は時代を映す鏡であり、また自身を映す鏡でもあるからです。また、今回の公演では、大学生の世代がこのコンテストを知り、その時代の音楽に初めて出会い、ポプコンの意義、現在のJ-POPへの影響について触れることができたことも大きな成果と言えるでしょう。今回のタイトル「ポプコン・リマインド」が目指したことは、まさにここにありました。このレクチャーコンサートをきっかけに、今一度、静岡県で長年実施されてきたポプコンが再考される機運が高まることを願っています。 

学生からのコメント

河合琴美さん
私達学生は、企画・運営をする立場として準備や広報等に取り組みました。このレクチャー&コンサートを開催するにあたり、携わっていただいた沢山の方々と共に創り上げてきたものが、演奏会の成功として形に表れたように感じます。今回、事前準備の段階で改善点が見つかり、話し合いを重ねて工夫し変更した点もありました。そこで、当日起こりうる様々な状況を予測し、準備または対応をすることの重要性を改めて学びました。当日を迎え、受付係として多くのお客様がご来場になる様子を見て、非常に嬉しく思いました。皆様にとって、当時のポプコンを懐かしみ思い返すだけでなく、新たな時代の音楽について考え直す契機となれば幸いです。
菊地来夏さん

今回の室内楽演奏会では、私たち学生の間ではあまり知られていないポプコンについて再注目しました。一からポプコンとその歴史について学び、この企画を通して多くの方にポプコンを振り返ってもらえるように宣伝文やチラシの配架場所を考え、準備してきました。また、コロナ禍でも安心して企画を楽しんでいただけるような運営を計画しました。
このような貴重な経験を体験することが出来て本当に良かったです。アンケートでも温かいお言葉を頂くことができ本当に嬉しく思います。

室内楽演奏会について

室内楽演奏会は、文化政策学部梅田英春教授の指導のもと、大学ならではのテーマや特徴あるジャンルを取り上げ、学生が中心となって演奏会を企画・運営をするプロジェクトです。また、本学のカリキュラム「地域連携演習」のプログラムの一つでもあり、現在は浜松市の創造的な取り組みを行うクリエイティブコア事業に指定されています。

開催概要

シリーズ 音楽の力「競う」 ポプコン・リマインド―現代J-popの原点を見つめ直す―

「ポプコン・リマインド―現代J-popの原点を見つめ直す―」チラシ
「ポプコン・リマインド―現代J-popの原点を見つめ直す―」チラシ

【日時】 2022年7月23日(土曜日)
     開場:午後2時30分 開演:午後3時
【場所】 静岡文化芸術大学 講堂
【参加費】無料(先着順、要申込)

【出演】 相曽晴日、大石吾朗
【曲目】 トワイライト
     花ぬすびと
     白いページの中に
     コーヒーハウスにて
     舞
     銀河鉄道 ほか

【主催】 静岡文化芸術大学 文化・芸術研究センター
【後援】 浜松市
【運営】 静岡文化芸術大学室内楽演奏会2022

注:「ポプコン」は、ヤマハ株式会社の登録商標です。

発行部署:地域連携室