教育・研究

2021年05月12日

本学助成制度で出版された書籍のご紹介

本学では教員の研究活動の成果を公開する手段として、出版助成制度を設けています。
2020年度に採択された3件の出版物をご紹介します。
「梅若 猶彦作品集(一) ―竜宮小僧と随想」書影

梅若 猶彦作品集(一) ― 竜宮小僧と随想

ー[Ryugu Kozo: The Boy from the Dragon Palace in the Abyss] & Essays
梅若猶彦 著
能楽書林 2021年2月

【梅若教授からのコメント】

浜松・久留女木にゆかりのある「竜宮小僧伝説」を元に、シテ方観世流・梅若猶彦が書き上げた新作能。 令和元年10月10日『第19回静岡文化芸術大学特別公開講座』にて創作能「竜宮小僧」を初演。 「この物語は、都に住んでいる僧侶が夢を見るところから始まる。彼は夢の中で少年の声を聞く。 「僕は遠江の国、久留女木の山中に一人で住む者だが、遊び相手もなく寂しい毎日が続いている。 どうか私を弔ってほしい。」-僧侶は弔いという言葉が気にかかり、久留女木への旅を決意する。」 (本文より)

The Noh play “Ryugu Kozo: The Boy from the Dragon Palace in the Abyss” was written and performed by Noh master Umewaka Naohiko in 2019. This bilingual compilation of works consists of the Noh play lyrics, story context and Dr. Umewaka’s introspective of his performance. An essay on the application of Noh basics in Budo is also included.
「企業と美術―近代日本の美術振興と芸術支援」書影

企業と美術―近代日本の美術振興と芸術支援

田中裕二 著
法政大学出版局 2021年3月
ISBN 978-4-588-42021-4
『美術手帖』2021年6月号で紹介されました。
中日新聞(5月13日付朝刊)17面で紹介されました。

【田中准教授からのコメント】

本研究は純粋な美術史ではなく、そうかと言って歴史学の分野で扱われるようなテーマでもない。しかも博物館史の正史でもない。あえて言うのであれば官による博物館史を補う、民による、サブタイトルにもあるように企業の芸術支援・美術振興の歴史を扱った内容である。

近代日本において、整備が遅れた公立美術館の代替機能を果たしてきたのは民間企業であった。とりわけ三井・三越の高橋義雄・日比翁助を軸に経営者の系譜をたどり、その経歴や美術館を通じて、企業経営に美術が導入されてゆく背景を論じた。
「文化的に生きる権利 ―文化政策研究からみた憲法第二十五条の可能性」書影

文化的に生きる権利 ―文化政策研究からみた憲法第二十五条の可能性

中村美帆 著
春風社 2021年3月
ISBN 978-4-86110-724-5
京都新聞(5月3日付朝刊)1面「凡語」で紹介されました。

【中村准教授からのコメント】

本書は、日本国憲法第25条第1項「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」の「文化」についての研究です。

「憲法第25条の文化って何なの?」
「どうして文化という言葉を使っているの?」

日本国憲法全103条のうち、「文化」という言葉が含まれるのは、この第25条のみです。 文化政策の研究者として、この第25条「文化」の可能性を大切に考えてみたいと思ったのが、本書の研究のきっかけでした。

本書の第一部「憲法第二十五条における「文化」」では、従来の研究を整理し、第25条の「文化」という言葉が、きちんと検証されてこなかったことを明らかにしました。
第二部「日本国憲法と「文化」」では、そもそもなぜ第25条に「文化」という言葉が用いられたのか、歴史をさかのぼって考察しました。
そして第三部「生存権と「文化」」では、憲法第25条に「文化」という言葉が入ったことの意義について、生存権の思想史と、文化政策における文化権(cultural right)の理念をふまえて、論じました。

本書は、何のために文化政策をするのかという、根本的な問いに対する1つの回答でもあります。憲法第25条の生存権に「健康」「最低限度」に加えて「文化」が入っていることの意味を、本書をきっかけに改めて考えていただけたらうれしいです。

詳しい目次等は、出版社の内容紹介もご参照ください。

発行部署:企画室