教育・研究

2021年06月01日

中日新聞・静岡新聞 両編集局長によるトークセッションが行われました(5月25日開催)

本学では新聞の魅力・必要性を伝える講義「メディアとしての新聞/社」(担当:文化政策学科 加藤裕治教授)全15回が開講されています。講師は中日新聞社・静岡新聞社の報道の最前線で活躍されている記者や社員の方々が務めています。

今年度第7回では、両社編集局長をお招きし、それぞれ新聞の役割についてのお話と、後半は学生からの質疑応答に答えるトークセッションが行われました。

事実の積み重ねの大事さ(林 浩樹局長)

中日新聞東海本社 林 浩樹編集局長講義の様子
中日新聞東海本社 林浩樹編集局長
現在、多くの人がインターネットを利用し、効率よく情報を得ています。Facebook一日の情報量は新聞(朝刊)の約10万年分あるといわれ、その情報量の差は比べ物になりません。その反面、「フェイクニュース(虚偽)」や「ポストトゥルース(心地よい嘘)」などデマが横行し、情報の真偽が問われています。中日新聞東海本社の林編集局長は「こんな時代こそ事実を積み重ねることが大事である。」と強調し、新聞はインターネットに比べ情報の信頼性が高いことを挙げました。

新聞の使命は事実を伝え、権力(立法・行政・司法)を監視し、民主主義や言論の自由を守ること。そして社会的弱者や地域社会に寄り添い、問題提起たけでなく課題解決を探すこと(ソリューションジャーナリズム)であるといいます。

また新聞の個性として、自分の興味以外の記事との新しい出会いがあることを挙げました。紙面をめくり、たまたま目に入った見出しを見て面白いと読み進める新聞を「寄り道文化」と表現し、「効率性ばかり追い求めるのではなく、役に立たないことも大事ではないか、道草するように楽しんで新聞を読んでほしい。」と伝えました。

意見を社会に出し議論のきっかけを作る(荻田 雅宏局長)

静岡新聞社 荻田雅宏局長講義の様子
静岡新聞社 荻田雅宏編集局長
静岡新聞社の荻田編集局長はインターネットにはない新聞ならではの記事は社説とコラムだといいます。社説はニュースに対し新聞社の意見が書かれており、その主張はベテラン記者たちの議論により決められているため、個人の意見ではありません。ですから記事に個人の署名はなく、各新聞社で主張が違います。
またコラムは随想で書かれており、多くは話題性のある内容を取り挙げ読み手の共感を生みます。荻田局長は「ただ社説やコラムを読むだけでなく、是非感想を話し合ってほしい。」といいます。その上で新聞は民主主義の基盤となる「皆で議論し良い社会をつくる」きっかけになると伝えました。

トークセッション

トークセッションでは加藤教授が県知事選に関する両社の記事を紹介し、選挙報道に対しての意義を問いました。
林局長は「投票に行って欲しいと思って特集している。コロナという有事の時代はリーダーの力が反映しやすい。性格や人柄など幅広い情報を提供し判断材料にしてほしい。」と答え、荻田局長は「知事の仕事がどういうものなのか、どんな政策に力を入れてきたのか読者に評価してもらうため、通信簿のような素材を提供している。」と答えました。
学生からは「新聞社は主義・主張は一貫させるものなのか、それともコロコロ変えるのか。」という質問が挙がり、両局長とも「筋は通したほうがいい。意見を変えるならばその理由も説明するべきであるが、しなやかさは必要である。」と声をそろえました。他に「事実を書くことと、意見を書くことの線引きをどうしているのか。」という質問に対し、「記事を書くには相手側になりきってはいけない、距離をとることは大事。だからこそ社説やコラムがある。」と答えました。
 
講義に参加した学生は「新聞記事は記者の方々が選び抜いたものであること、社説は議論し合って書かれていたことなど、思っていた以上に作りこまれた内容だということが分かった。」「新聞が社会の課題を解決する役割があることを知った、読んでみようと思う。」など感想を述べました。

発行部署:企画室