教育・研究
2021年11月24日
「博物館実習」にて日本通運中部美術品支店の方々をゲストに迎え梱包の実演と実技指導が行われました(11月4日実施)

芸術文化学科では博物館学芸員の資格取得のための「学芸員養成課程」を開設しています。必修科目の一つ「博物館実習」(担当:田中裕二准教授)では博物館(美術館)で実習を受けるなど実践的な学びが行われています。このたび11月4日(木曜日)に日本通運美術品支店の方々を外部講師としてお招きし、美術品梱包の実演と実技指導が行われました。
普段私たちが博物館や美術館で目にする美術品の梱包・輸送は専門業者が行っています。歴史ある文化財や国宝を安全・安心に輸送する場合、その扱い方は引っ越しとは全く違うものになります。今回はその美術品梱包の基礎である紐の結び方や梱包資材を使った梱包方法をプロの方々から直接指導をいただく貴重な機会となりました。
お越しいただいたのは名古屋に拠点を置く日本通運中部美術品支店の根木宏政次長と小長谷猛志さんです。初めに日本通運の紹介や最近取り扱った展覧会について、次に作品に触れる前の注意点についてお話をいただきました。日本通運では、服装はボタンや胸ポケットのないシャツを着て、ベルトのバックルが隠れるズボンを履き、腕時計といった金属品を身に付けいないなど、作品を傷つけないよう配慮されています。また作品に触れる前に手を洗うことは欠かせないと根木次長は強調されていました。箱を紐で結んでみよう

最初の実技は箱を紐で結ぶかことから始まりました。箱を紐で結ぶ目的は、箱が開かないようにすること、そして持ちやすくすることの二つです。結び方ひとつで締まりの強さが変わります。紐を箱に二周巻きつけたら片方の紐の端を巻いた二本の紐の下をくぐらし、引っ張るとしっかりと締まって緩みにくくなります。巡回展は何回も梱包することになり、梱包資材を使いまわせるよう紐を用いるそうです。この紐の結び方は日常生活にも役立ちそうです。



梱包資材「白薄葉紙」

「白薄葉紙」は作品に触れても影響がない中性の和紙で様々な美術品を梱包する際に使用されます。その使い方は多様で、広げて包んだり、くしゃくしゃに丸めて作品を保護したり、細く割いて紐にしたり(薄紐)、綿をつめて緩衝材にしたりします。その素材の特徴は吸湿性に優れ、揉み込めば揉み込むほど柔らかくなり、一方で紐状に割いて繊維にそってしごくとピンと立つぐらい強くなります。一枚約50円と安くはないそうですが、美術品を梱包する際は惜しみなく使われます。



手を梱包してみよう

梱包の実技では、手を仏像の手と見立てて梱包し、解く(開梱)までを行いました。三人一組になり、交代で仏像役、補助役、梱包役に分かれました。仏像の手は複雑な形をしていることが多く、繊細な作業が求められます。白薄葉紙をくしゃくしゃに丸め手の形に合わせて角を埋めるように当てていき、単純な形にしていきます。最後に包むように梱包し、薄紐を強すぎず、弱すぎない程度に結びます。梱包に挑戦した学生からは白薄葉紙の当て方が難しい。仏像の手の役は、きつく包まれていないのに指が動かない、包まれて暖かさが丁度よいという声が上がりました。小長谷さんは「美術品は何も言ってくれない。状態を汲み取りながら梱包することが大事。また、学芸員とどこが危ない場所か確認し合うコミュニケーションが欠かせない。」と梱包の極意を学生に伝えました。




参加した学生からは、「梱包が難しかった。白薄葉紙の詰め具合で安定感がまったく違い面白かった。美術品は梱包されているとき不満を言えないので汲みとることが大事ということが印象的だった。座学では得られない貴重な体験になった。」という感想が寄せられました。
発行部署:企画室