教育・研究

2022年02月22日

デザイン学科「木造建築演習」にて「林業と木材」について外部講師をお招きした特別講義が行われました

「木造建築演習」特別講義、鈴木さんと梅林さんによる講義中の写真
デザイン学科専門科目「木造建築演習」(担当:新妻淳子准教授)では、木造建築の空間・意匠等の様々な特徴を理解して、その構法と大工技術について学び、森林国・日本における建築のあり方を考察しています。
2021年11月4日に、林業家で天竜林業研究会会長の鈴木将之さんと、浜松木材商同業協同組合理事長の梅林大介さんを外部講師としてお招きし、「林業と木材」をテーマに特別講義が行われました。鈴木さんからは「日本三大人工美林」の一つ「天竜美林」と呼ばれる天竜の山の歴史や生態系、林業の役割について、梅林さんは木の性質や、木材から建築その他の用材を切り出す「木取」についてまで幅広くお話いただきました。

森林認証について

浜松市の森林は平成22年3月に国際認証である「FSC森林認証」を取得したことが大きな特徴です。森林認証とは「森林が適切に管理されているのか」を、第三者機関が全世界統一の基準に沿って審査、認証するもので、保護する価値の高い森林の伐採を防ぐ効果的な仕組みです。さらに、製材・加工業者・工務店など流通にかかわる全ての業者も認証事業体であり(COC認証)、認証された森林から生産された木材・木材製品へ認証ラベルを貼ることにより、消費者の選択的な購買を通じて持続可能な森林経営を支援する制度です。浜松市の森林認証取得面積は、4万3千ヘクタールで全国2位、市町村別では日本一となっています(2019年10月時点)。天竜のFSC材は東京オリンピック2020年大会関連施設に使用されるなど需要が高まっています。
「木造建築演習」特別講義教室全体の写真
講義で配られた木材や枝の写真
講義で配られた木材の写真

ウッドショック

2021年3月頃から木材の需給がひっ迫し、木材の不足により価格が高騰しています。この混乱をかつてのオイルショックになぞらえて「ウッドショック」と呼ばれています。現在、日本の住宅メーカーの木材のほとんどを輸入材に頼っており、コロナ禍の影響や、海外の木材使用の増加により、日本に輸入材が届かない状況が続いています。さらに輸入材の代用として国産材を使用することで国内の木材も不足しています。ですが林業や製材関係者側としては、今、沢山の木を伐採し販売すれば儲かるチャンスでもあります(ウッドチャンス)。しかし、鈴木さんは 「愛情がない林業はどうなのか、必要以上に価格が高い今は注意が必要。儲かりたいだけの自分本位のやり方はいけない。木は何代にもわたって育てられたもの、木を切るタイミングは難しい。」と木の大切さを訴えました。
梅林さんと鈴木さんの写真
左:梅林大介さん 右:鈴木将之さん
講義の最後に梅林さんは「割りばしや爪楊枝は木材の端材でできています。出元がはっきりしているもの、FSC認証がついているものを買うことで、森を守っていることになります。」と学生に勧めました。さらに、「30年、50年サイクルの山ってどうなのか?自然は多様な植物があってこそ。本当は1000年後の山のことを考えていかないといけない。SDGsとあるが、何が本当にいいのか自分で考えてほしい。」と講義を締めました。
参加した学生からは「ウッドショックという言葉を初めて知った。」「木が成長したらすぐに切るのではなく、未来のために、動物のために、守っていくべき木があることを知った。」「木を無駄なく使いきることが大切だと知った。」という感想が寄せられました。

発行部署:企画室