教育・研究

2022年06月10日

「地域福祉論」第1回特別講義が行われました(6月6日開催)

令和4年6月6日(月曜日)に文化政策学科のカリキュラム「地域福祉論」(担当:小林淑恵准教授)の授業で、外部講師による第1回特別講義「日本の介護福祉分野における外国人人材活用のための制度と実践」が行われました。今回の講師は森下哲司様(社会福祉法人聖隷福祉事業団 法人本部)です。森下様は現在、法人本部人事企画課にて学生の採用、外国人の介護福祉人材受け入れの仕事に携わっています。また本学文化政策学科の第1期の卒業生でもあります。

講義では、日本の介護人材の需給動向に続き、聖隷福祉事業団での海外人材受け入れの枠組みについてお話がありました。

高齢化によって医療福祉の必要性は高まる一方、厚生労働省資料によれば2025年時点で全国の介護人材が33.6万人不足し、静岡県においても7,000人以上の不足になることが見込まれています。聖隷福祉事業団での外国人受け入れのための枠組みは、以下の3つがあります。

  1. 経済連携協定(EPA):インドネシア、フィリピン、ベトナムの3国から一定の日本語力のある人材が介護の仕事をしながら介護福祉士の国家資格を目指すもの。国全体では年間300人までと上限が決められている。

  2. 留学生(在留資格:介護):留学生として来日し、聖隷福祉事業団と静岡県の奨学金を受けつつ語学学校に2年間、介護福祉専門学校に2年間通い国家資格を取得する制度で、卒業後4年半の就労で奨学金の返還が免除になる。

  3. 在住外国人採用:浜松市の高校から新卒採用するケース、また既に日本に定住・永住している外国人を聖隷福祉事業団での介護人材として採用する。
経済連携協定(EPA)の枠組みで2021年までに126名を受け入れましたが、語学と介護資格の勉強をするので本人も指導する職員も本当に大変です。一方、留学生として在留資格を得る方法は比較的余裕があり、2023年度までに15名が在籍予定です。
また、外国人材の受け入れの難しさについて、雇用に関する認識の違いという現実を踏まえたお話がありました。
在住外国人の採用は予想以上に進まない現実があります。聖隷福祉事業団での介護の仕事は長期的に見ると福利厚生や退職金もある安定した仕事と言えますが、外国人同士のコミュニティ内で仕事の情報をやりとりしているので、親や知り合いが働いている「工場」で「派遣」として働き、短期的にでも1,500円の時給を得ることの方に魅力を感じるのです。リーマンショック、コロナショックでは職を失った外国人が生活に困窮し住まいを失ったりしましたが、それでも終身雇用に関心はなく意識は変わりません。
外国人人材を受け入れる際に重要な点は、人材不足の解消を目的とするのではなく、“職員として育成する”ということです。働く外国人、日本人双方のモチベーションが維持されることが重要です。
日本では今後ますます外国人人材の活用が重要となり、聖隷福祉事業団としてはまだ実施していない「技能実習」「特定技能」による在留資格の認定も国として始まっています。
森下哲司さんマスク無しの写真
最後に学生の採用担当として、ご自身の就職活動当時の経験と、3年生夏からのインターンシップの活用についてもアドバイス頂きました。
<学生からの質問>

Q. EPAや留学生(在留資格)で働いている人と日本人の給与差はありますか?また男女の人数比はどのくらいでしょうか。
家族の面倒を見るのは女性という文化があるために、介護職には女性が多いです。給与については資格の有無によって差はありますが、外国人と日本人との差異はありません。

Q. 日本人と外国人と退職者数はどちらが多いですか?
正確な数字は今回持っていませんが、体感的に外国人の方が多いと思います。日本になじめない、母国に住む親の体調が悪い等の理由で退職することもありました。

Q. 福祉の現場でAIの活用は進んでいますか?
ここ2、3年で、介護ロボやiPadの導入が始まっています。手書きの記録をiPadの画面で選択できるようにしたり、床のセンサーマットやベッド上のセンサーで、介護士が巡回しなくてもベッドから落ちたり、いなくなったりした場合に分かるようになりました。ご指摘のように今後は、外国人人材の活用とテクノロジー活用の両輪でやる必要があるでしょう。

Q. 受け入れる際の判断はどのようにするのですか?
何度かフィリピンに面接に行ったこともあります。まず語学力、家族構成を見ます。中には子供を残して日本に行く人もいるのです。それからどのような目的で日本に行って介護職に携わろうとするのか、という志望動機です。年齢は50代の方などもいますが、若くて長く日本に定着できる方の方が望ましいです。

Q. (担当教員より)聖隷事業団で求める一般学生の人材像はどのようなものでしょうか。
挑戦し続ける人です。この仕事は現在の自分にとっての挑戦です。変化しつづける社会における課題解決への対応が期待されます。

発行部署:企画室