教育・研究

2022年07月01日

「インターフェイスデザインⅡ」にて株式会社ディー・エヌ・エーによるゲスト講義が行われました

デザイン学科専門科目「インターフェイスデザインⅡ」(担当:宮田圭介教授)にて、ゲスト講義が行われました。
講師は株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)でデザイナーとして様々なアプリケーションサービスに携わる松田涼さん。松田さんは本学デザイン学部メディア造形学科の卒業生でもあります(2012年度卒業)。

松田涼さんプロフィール画像
株式会社ディー・エヌ・エー
デザイン本部
松田 涼さん

卒業後は出版会社に就職したものの、やりたかったグラフィックデザインではなくWebデザインに携わることになった松田さん。そこで得た経験から転職した後もWebデザイナーとして働く一方、アプリケーションデザインも扱うことになります。初めてUI・UXに触れたことをきっかけに積極的に学んだ松田さんは多くのアプリケーションを手掛けるようになり、現在に至ります。

講義のテーマは「事業会社におけるデザイナーの役割について」。デザイナーというといわゆるプロダクトデザイナーを想像することが多い中、株式会社ディー・エヌ・エーのような多角的なサービスを提供する企業において、デザイナーがどのような役割を果たしているのか、具体的な事例を示しながらご説明いただきました。

サービス開発の3つのフェーズ

インターフェイスデザインⅡゲスト講義の様子

ゲームやライブストリーミング、便利な暮らしのサービスから、スポーツ、ヘルスケアまで、幅広いサービスの事業展開をしている株式会社ディー・エヌ・エー。その中でもアプリケーションを通した顧客体験(サービス)の価値を創造するため、サービス開発には「0から1」「1から10」「10から100」という3つのフェーズがあるといいます。

「0から1」は新しいサービスを世の中に生み出す段階。まずはMVP(Minimum Viable Product)開発が重要になります。MVPとは必要最低限の機能を備えたプロダクトのこと。サービスが世の中に出るために必要なものを準備・開発します。
2022年1月にリリースされた双方向コミュニケーションを気軽に楽しむことができる声系ライブ配信アプリ「Voice Pococha」は、松田さんが開発当初から携わったサービス。ブランディングからキャラクター制作、ワイヤーフレーム制作、UIデザイン制作まで一貫して関わり、開発チームのプロジェクトデザインを推進しました。
次のフェーズに移行するため、顧客体験を継続的に実現することが目的なのが「1から10」フェーズです。

「1から10」ではPMF(Product Market Fit)を目指します。すでにリリースされているサービスをより良く提供するため、実装実験を行ったりして改善や見直しを行います。リアルイベントとのコラボレーションを企画し、周知を広めることも。事例として挙げたパンの取り置きアプリ「sacri(サクリ)」でもパンを特集したイベントでの出店などを行いました。パン屋さんがしたくてもできなかったことを実現するため、パン屋さんやお客様からのフィードバックを取り入れながら、取り組んでいます。
時には実現のために、複数のデザイナーが本業とは別に副業として参加することもあり、その場合は中心となってブランディングの統括やクオリティマネジメントを行います。

「10から100」では、多くのユーザーに認知され利用されているサービスに対し、他サービスとの差別化や継続して提供していくための動きをしていきます。そのためのユーザー観察調査では、分析ツールやユーザーインタビュー、行動観察調査などを通し、新機能に対するヒアリングや課題の抽出、競合との優位性などを調査。それら経てプロダクト戦略の再策定を行い、よい良いサービスを目指します。
この段階になるとチームメンバーや関係者が増え、仕事を分担する必要が出てくるため、ガイドライン化や資料作成が重要となってきます。

変化するデザイナーの役割

サービス開発の「3つのフェーズ」、そのどのフェーズで携わるかによってデザイナーの役割、裁量が変わってくるという松田さん。お話を伺っていると開発のスピード感が伝わってきます。また、サービス開発の際にはデザイナーが起点となり、意見を出してチーム・組織を動かすことができるという点は、いわゆるデザインの能力以上に人を動かしマネジメントする能力も必要になることを感じさせました。
また松田さんが、「学生時代は周囲の(デザインを学ぶ)友人と話していても、なんとなくでも伝わるということがあると思う。ただ仕事で会話する関係者やクライアントは、全員がデザインの共通言語や認識を持っているわけではない。コミュニケーションの難しさも感じる」とおっしゃるように、コミュニケーション能力も大切になってきます。デザイン会社ではなく、営業やエンジニアなどの様々な職種がいる企業で働くことで、得る知識・経験はデザイナーにとっても刺激となります。

「デザインの力が重要性を増している」社会ではその責任も重くなりますが、常に学びながら人々をワクワクさせ、役に立つサービスを生み出し続ける松田さんのお話に、学生たちも今後の進路を考える上で大変参考になった講義となりました。

発行部署:企画室