About講座について

はじめに

2001年の文化芸術振興基本法以降、指定管理者制度、公益法人制度改革、劇場・音楽堂等の活性化に関する法律など、日本の文化・芸術を取り巻く環境はめまぐるしく変化し、地域における文化・芸術の振興のあり方も問い直されています。特に自治体文化財団は、指定管理者制度をめぐる問題をはじめ、財団としての独立性や行政との関係など、様々な課題を抱えています。そこで、本学では、文化庁「大学を活用した文化芸術推進事業」として、自治体文化財団を対象に、自治体文化財団の経営上の課題とその解決策を考えるための実践的な取り組みを2年間にわたり開催してきました。
1年目は、「SUAC芸術経営統計」(※)をもとに分析した全国の自治体文化財団のデータと先進的な事例で構成したテキストを作成し、それを用いて浜松・東京の2会場で「SUAC自治体文化財団マネジメント講座」を開講いたしました。
2年目は、本学がコーディネーターとなり自治体文化財団と設置者である自治体がともに会し、自治体文化財団の課題を検討する「自治体とともに考えるSUAC自治体文化財団マネジメント講座」を全国5都市で開講いたしました。2018年2月には本講座の受講者が集まり、課題解決を考えるプロセスと今後の取り組みを共有、検討し、新しい公共を担う自治体文化財団のあり方について考える場を持ちました。また、これらの取り組みとは別に、本講座で浮かび上がった自治体文化財団のマネジメント課題の中から5つのテーマを選び、複数の専門家・実務家を講師に迎えた公開セミナーも開催しました。
本報告書は、その2年間にわたる活動の記録および調査・分析したデータや事例調査の結果をまとめたものです。自治体文化財団や自治体職員の皆様、また、文化・芸術活動にかかわる多くの方々にとって、本報告書が今後の課題解決を考える一助となれば幸いです。
※本統計については、事例集統計データをご参照ください。
2018年3月
公立大学法人 静岡文化芸術大学
文化庁補助事業メンバー一同
講座の全体像
講座の全体像の図
2017年度のマネジメント講座の進め方
2017年度のマネジメント講座の進め方の図

メンバープロフィール(五十音順)

石川 緋名子

一般社団法人文化政策経営人材研究所代表理事(2017年10月から)
専門:芸術文化政策、アートマネジメント人材の能力開発

静岡文化芸術大学大学院文化政策研究科修士課程修了。主要著作に「我が国の劇場・音楽堂の現状~既存統計・調査からみた実態~」(『アートマネジメント研究』第13号、2012年)、「若手アートマネジメント人材における能力開発―文化施設等の職員に対する実態調査から―」(『文化政策研究』第6号、2013年)等。研究の傍ら、日本アートマネジメント学会関東部会委員、一般社団法人浜松創造都市協議会理事を務める。

大橋 加奈

文化庁補助事業プロジェクト研究員
専門:芸術文化政策、合併市町村振興

静岡文化芸術大学文化政策学部卒業。同大学大学院文化政策研究科修士課程修了を経て現職。著作に、「文化の領域における「平成の合併」の影響:非中心地域の文化事業に焦点を当てて」(『文化政策研究』第8号、2015年)、「公立文化施設における「平成の合併」の影響 ―旧町村部に立地する文化施設の全国調査を通じて―」(『文化政策研究』第10号、2016年)がある。

片山 泰輔

文化政策学部芸術文化学科教授・大学院文化政策研究科長
専門:芸術文化政策、財政・公共経済、アートマネジメント教育

慶應義塾大学経済学部卒業。東京大学大学院経済学研究科後期博士課程単位取得満期退学。1995年、芸術支援の経済学的根拠に関する研究で日本経済政策学会賞(奨励賞)受賞。2007年、著書『アメリカの芸術文化政策』で日本公共政策学会賞(著作賞)受賞。審議会等で、国や自治体の文化政策に関与する一方、芸術文化団体の経営にも従事。日本文化政策学会副会長、日本アートマネジメント学会運営委員、文化経済学会<日本>理事、日本経済政策学会理事等。

高島 知佐子

文化政策学部芸術文化学科准教授・大学院文化政策研究科准教授
専門:アートマネジメント

大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程修了。博士(商学)。(独)中小企業基盤整備機構や京都外国語大学を経て現職。主な著書に『伝統芸能上演組織のマネジメント』(大阪市立大学博士論文、2010年)、「能楽の家元組織とその制度にみる伝統芸能の継承メカニズム」(『文化経済学』第11巻2号、2014)、「伝統芸能・伝統工芸」『文化経済学 軌跡と展望』(ミネルヴァ書房、2016、山田太門氏との共著)など。伝統文化の組織・産業の研究を中心に、医療・福祉施設での芸術活動等にも従事。

松本 茂章

文化政策学部芸術文化学科教授・大学院文化政策研究科教授
専門:自治体文化政策、まちづくり政策、文化施設研究

早稲田大学教育学部卒業。読売新聞記者、支局長を経て同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程(後期課程)修了。博士(政策科学)。県立高知女子大学文化学部教授を経て2011年から現職。単著に『芸術創造拠点と自治体文化政策京都芸術センターの試み』(2006年)、『官民協働の文化政策 人材・資金・場』(2011年)、『日本の文化施設を歩く官民協働のまちづくり』(2015年)。共編著に中川幾郎・松本茂章編『指定管理者は今どうなっているのか』(2007年)など。(いずれも水曜社)。日本アートマネジメント学会会長、日本文化政策学会理事。

宮治 磨里

文化庁補助事業プロジェクト共同研究員
専門:芸術文化政策、地域文化論

神戸大学文学部卒業、神戸大学大学院総合人間科学研究科(地域文化学専攻)博士前期課程修了。名古屋フィルハーモニー交響楽団事務局(広報担当)、ちりゅう芸術創造協会(事業・企画制作担当)を経て現職。ちりゅう芸術創造協会では、市民オペラや子供向けの音楽・朗読公演等、音楽事業の企画制作に携わった他、ホール・ボランティアの育成にも関わる。著作に『公共文化施設の公共性―運営・連携・哲学』(水曜社、共著、2011年)等がある。