Archive成果発表会 総評

成果発表会「自治体文化財団が拓く新しい公共」総評

全体を通して気づいたこと

受講団体全体の発表をとおして気づいたことは?
荻原:特にこまき市民文化財団と岡山県文化連盟には、中間支援としての役割を意識されてい る点が共通していると感じました。この中間支援としての機能は、新しい公共の担い手として求められてくる役割であるように思います。時代とともに変化する財団の役割に対し、今この財団がどうあるべきで、今後どうなっていくのか、設置者である自治体と適切な役割分担・責任の下にどのように協働していくか、ということが問われてくると思います。

蓮池:なぜ自分たちが受講したか、どのような問題があるかを理解しているかどうかによって、発表の内容が大きく変わっているなとは正直感じました。この受講によって課題整理ができた団体は、これからも大きく進んでいくのではないかと思います。また、非常に難しいとは思いますが、5年、10年先を見据えて課題整理・解決を進めていくことが重要になるのではないでしょうか。

吉本:施設運営だけではなく文化財団の役割を大なり小なり追及されていて、そこに新しい可能性を感じました。新しい公共の実現には行政と財団の共同が何より重要だと思いますので、行政の立場の方と財団の立場の方がこの講座に一緒に参加しているということに大きな意義があると感じました。

課題について

今後、どういった課題が待ち受けていると想定されるか?
荻原:経済面も含めて、「自律」にシフトするように財団内部の意識を改革していく必要があると思います。自治体の外郭団体のままでいるだけでは恐らくいけない時代になっていて、自分たちが財団として存続することよりも、存在している意味を問いかけ続けなくてはいけないと感じます。また、人材の専門性を認め、育てるということが財団のみならず行政側にも必要で、双方が互いに対してどのような役割を求め、委ねるかという関係をつくることがとても重要になると考えています。

蓮池:企画制作、マネジメント、ガバナンスのバランスを見つめ直す時期に差し掛かっていると感じます。ガバナンス(G)とマネジメント(M)、プロダクション(P)の比重をどのようにしていくかということを財団と行政が考え、それぞれの立ち位置を基軸として議論をし続けるということが叶うと良いと思います。

吉本:財団で働く方々がそれぞれモチベーションを持って、その中でキャリアを積んでいくということが担保されるかどうかが非常に重要であると感じます。財団としての継続性・発展性・ガバナンスに貢献する人材をどのように育て、財団内でのポジションを確保するかということが大きな課題になるのではと思います。

課題解決への提言

課題を解決するうえでの提言やヒントをお伺いしたい。
荻原:私自身は、「これは本当にやる意味があるのか、効率的なのか、コストはどのくらいか」ということを一つひとつの手続きを踏んでいく上で常に問いかけ、仕組みとして変えられるところは積極的に変えていくという姿勢で臨んでいます。私は民間から自治体の財団に来たため、これまで財団職員にとって常識であったことが非常識に思える場面もあります。このように外の目を一度入れてみるということが、実はとても重要なことではないかと思っています。とりわけ長年続いている財団であるほど硬直化していることがあるので、外部の力を取り入れることでそうした部分を一度もみほぐすことが必要だと感じます。自治体と向き合うときも、その政策目標と比較して財団が培ってきたものが遅れていないかという確認が求められます。

蓮池:閉塞感からの脱却という意識を持ってみませんか。人材がいない、事業が多く人が足りないという前に、人材を育成しているか、事業を減らせるか、ということを私は自身に問いかけます。事業が増えれば自ずと人は不足し、チームに余裕がなくなり、財団の将来を考えるというような長期的視野をもつことも難しくなってきます。また、ステークホルダーとの関係、課題解決のため自治体との対話も重要です。選択と集中、スクラップアンドビルドをする意味を重要視し、制作現場と自治体の齟齬を埋めていく言語を持つことも非常に重要だと思います。

吉本:行政の課題に対して、文化で何かできるのかということを再考し、それを文化政策のために続けていくということはある意味チャンスだと思います。その時に、財団の中にはそれぞれの芸術の現場等で活躍しているノウハウや経験を有した専門家がいますので、ぜひ芸術分野から行政組織や地域を巻き込みながら行政課題に対してどのように取り組むのか、ということを検討いただければと思います

財団の存在意義

荻原:財団の存在意義について考えるとき、「財団は必要だよ」といわれるような存在感が大切なのだと思います。たとえば基礎自治体が求める政策、あるいは未来に向けて広域的な活動をするときに文化で何ができるかを提言していくですとか、シビックプライドの醸成につながるようなことについて財団がどのような役割を担えるかと日々考えています。財団の事業や文化施設の指定管理については、選択と集中、あるいは新しい独自の事業展開といったことの循環もあるのかなと考えていますので、根本にある財団が存在する意義について忘れないよう過ごして参りたいと思っています。

文化の力

蓮池:生きていく上でアートは必要だというところに私は軸をおいていて、自分の立場が変わって視点を変えざるを得なくても、その原点に戻って考えるようにしています。文化の力を信じて今ご自身がおかれている立場で回りの人を巻き込みながら仕事をしていくべきだと思いますし、自らもそうしていきたいと思います。

説明の重要性

吉本:発表を聞いて、説明をするということが大変重要だということを改めて感じました。財団側は行政に対して、行政担当者は財政当局や地域住民に対して文化の必要性や重要性を説明しなければいけないし、たとえすぐには納得されなくても諦めずに説明し続けるということが重要だと思います。その際には相手を説得できる情報が必要で、今日の会のような場で情報を収集することが有効だと考えます。それと同時に、一人一人が「文化が必要なんだ、芸術が必要なんだ」ということに確信を持つということです。会場の皆さんは文化の重要性を分かっていると思いますので、ぜひ様々な場で文化が重要だということを発言いただけたらと思います。