Archive茨城会場 講師レクチャー:安田 賢司

三重県文化振興事業団の人材育成

安田 賢司公益財団法人 三重県文化振興事業団 総務部総務課長

金融機関勤務経験を経て、2000年に財団法人三重県文化振興事業団(現公益財団法人)に入職。三重県文化会館事業推進グループリーダー、施設利用サービスセンター貸出グループリーダー等を経て、2013年4月より現職。人事労務、財務、施設管理、全体広報等の総括を中心に、指定管理者応募作業責任者、中期経営計画策定作業責任者等を担う。(公社)全国公立文化施設協会コーディネーター。

1. 概要

三重県文化振興事業団は、三重県総合文化センターの指定管理者(公募)で現在4期目です。三重県総合文化センターは、三重県文化会館、三重県生涯学習センター、三重県男女共同参画センター、県立図書館で構成され、図書館は県の直営となっています。年間の来館者数は約100万人で、貸館施設は4つのホール(大・中・小・多目的)、ギャラリー、会議室、リハーサル室等、全部で29施設あります。施設の利用率は80.9%で郊外型立地のなかでは驚異的な数字ではないかと思います。運営方法は非常に変わっていますが、よく工場が認証取得するISOの品質サービスの9001を取得しています。

2. 組織図

三重県文化振興事業団は、5部門(管理部門、施設貸出部門、3つの事業部門)で組織化しています。管理部門は総務と施設の維持管理、全体の広報を担い、貸館である施設貸出部門と、文化、生涯学習、男女共同参画の3つの事業部門は他の団体とよく似た感じだと思います。施設の貸出は、大・中・小ホールが業務委託という形で、多目的ホールのみ直営です。

3. 雇用形態・職員数とキャリアアップ制度

雇用形態のうち、「年俸管理職」は5名おり、1年更新の最長5年で、総務部長等など部門長は民間から登用しています。「正規職員」は雇用期間がなく、定年を65歳にしています。将来の幹部候補として中枢事業を担っており、現在18名います。「年俸制専門員」は「専門員」の上級職で現在28名います。1年更新でしたが、労働契約法の改正に伴って一昨年に無期転換制度を導入しました。「専門員」は最初に採用する形態で、こちらは1年更新で最長3年です。その他嘱託員、人材派遣の人などがいまして、合計71名になります。
過去には正規職員を外部から採用していましたが、6年ほど前にすべて内部登用に切り替えました。現在はまず3年間の有期雇用の形態で専門員を募集し、3年後には年俸制専門員に登用していきます。状況に応じて、年俸制専門員から正規職員に登用をしますが、今それを積極的に進めており、この6年間で退職者補充を含め、正規職員を実質6名増やしました。特徴的なこととして、有期の方にも退職金を支給し、専門員には通勤手当や時間外手当の他、扶養手当や住居手当も支給しています。

4. 人材育成 -評価、研修、資格、財源面の支援、表彰

個人別にどういうスキルがあるのかを記した「業務要件表」と「勤務評定」というのがあります。私どもは勤務評価制度を導入していますので、この二つに職員の能力ややる気等がインプットされ、見える化をしています。求める職員像を、業務、能力、執務態度の3項目で合計10個設定し、これが昇級、給料などの評価基準にもなります。誤解を恐れずに言うのなら、仕事をしていく上で専門性は重要になってきますが、「人間力」が一番大事かなと思っています。課題を解決していく力や周りを巻き込んでいく力などが大事なのかと。
研修はOJT、内部研修、外部研修の3本柱で行っており、ほとんどがOJTですが、内部研修に力を入れております。新入社員研修、フォローアップ研修や、接遇研修などありますが、特に重要と思っているのがコンプライアンス研修です。
特徴的な研修としては、2011年度に事業団が海外視察を企画し、アメリカの文化施設等に中堅職員7名を派遣しました。研修後はプロジェクトチームを作り、ミエアートラボというコーディネーター育成のための研修会を実施しています。2016年度は文化庁の「劇場・音楽堂等スタッフ交流研修事業(海外交流研修)」に文化会館の職員1名が派遣されました。海外研修は、職員の視野も広がりモチベーションも上がりますが、一方で財源と代替職員の問題があります。解決策を示せるには至りませんが、そこさえクリアされれば出来るのではないかと投げかけさせていただきます。
資格取得も推進しています。これは指定管理者の応募側としてのアピールポイントになる側面もあります。特徴的なところは、ワークショップデザイナー、サービス接遇検定です。ワークショップデザイナーは、職員は文化事業をするなかでプロデューサーやコーディネーターでもあるので、そこの肝の部分を勉強しています。サービス接遇検定は、施設の貸出部門に受験を義務付けています。貸館部門はサービス業でもあるので、ホスピタリティという部分で資格を取り、自信をつけるようにしています。
今まで紹介したことの財源について、業務に直結した資格は事業団が負担しています。海外視察は「特別研修制度」(最大50万まで助成)で行ってもらいました。業務に隣接しているところは、福利厚生の枠組みで「カフェテリアプラン」というのを実施し、常勤職員に最大で2.5万円まで支給しています。通信講座や音楽鑑賞等も認めています。
「職員・グループ表彰制度」というのを2015年度に立ち上げました。これは業務効率化や新規事業等の、職員の斬新なアイディアの取り組みを表彰する制度です。表彰するのが目的ではなく、組織が変化していくためのツールとして使っています。前年度踏襲の業務が多いなかでそこを打破するために、この制度を核に組織の改善に役立てているところです。

5. 過重労働対策の取り組み

いろいろな取り組みをしているなかで、仕事が飽和してしまうのではないかと考え、過重労働対策にも取り組んでいます。働き方改革がクローズアップされていますが、私どもは2014年度から本格的に取り組んできました。一番大事に思っていることが、経営者側からのメッセージ発信です。年度初めや決算後の説明会等で、業務の見直しをどういうイメージで行っていくか等を、ことあるごとに経営者から発信をしてもらってきました。
また「職場委員制度」を導入し、各課から管理職以外の1名を選び、毎月ミーティングを行い、職場の状態をどう感じどうしていくかを提案してもらっています。課長会議では、時間外の勤務状況を総務部主導で各部署の進捗管理をし、課長同士で話し合ったりしています。その他も色々な取り組みをとしたところ、2014年から2016年度にかけて時間外勤務時間を44%削減することができました。

6. 熱意ある人材の確保と育成ために

熱意のある人材に働いてもらうためには、ごくスタンダードなことかもしれませんが、事業基盤、経営基盤、労働環境基盤、この辺りがしっかりとしていることではないかと思います。この三つをすべて確保するのはなかなか難しいため、このうち一つでも二つでもという気持ちで、いま私たちはやっているところです。
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