Archive北九州会場 講師レクチャー:樋口 雅史

りゅーとぴあの運営と体制

樋口 雅史公益財団法人 新潟市芸術文化振興財団 新潟市民芸術文化会館(愛称:りゅーとぴあ)   施設運営部 庶務課長

北九州大学(現:北九州市立大学)文学部卒業。1998年4月より新潟市民芸術文化会館に勤務し、同年10月の開館業務に携わる。経理、予算、OAシステムの担当等を経て、2011年4月より現職。現在、指定管理申請、文化庁補助金申請業務等に従事。

1. りゅーとぴあ施設概要

「りゅーとぴあ」というのは、私が所属している新潟市民芸術文化会館という文化施設の愛称です。この施設の一番大きな特徴は、ガラス製の外壁の複合型文化施設ということです。1つの建物の中に3つの専門ホールが入っています。1998年に開館しました。コンサートホールは、最大収容人数が2,000人です。劇場は903人、最後に能楽堂が387人となっています。ほかに、スタジオと練習室があります。その他のパブリックスペースとして共通ロビーがあります。またインフォメーション、託児室、カフェ、ギャラリー、レストラン、展望ロビー等を備えています。

2. りゅーとぴあ建設の背景

1つ目に、舞台芸術活動が経済の一極集中とともに東京圏が中心であったことから、地方発信の強化を行いましょうということがありました。2つ目には、同格都市に比べて歴史的な文化遺産が多くなく、都市の魅力を高めるため芸術文化の振興が重要な行政課題であったというのがあります。3つ目に、市民から芸術文化に親しむこと、優れた芸術文化の鑑賞、創造発信の環境整備が求められていたというのが建設の背景です。

3. りゅーとぴあ運営上の理念と基本方針

理念は、芸術・芸能文化の継承・発展そして創造です。基本方針は4つあります。1つ目は質の高い、専門性に富んだ芸術を鑑賞する機会の提供。2つ目は、新潟市民の文化活動への支援。3つ目は地域に根ざした文化の創造。4つ目が、文化を支える人材の育成です。
これは、新潟市役所の施設整備担当課が中心となって策定した理念・基本方針です。開館以降の数年間は、この担当課の主要メンバーが館運営に中枢ポストで関わり、継続性が担保されました。特徴としては、開館後10年程度を見据えて検討されたもので、理念・基本方針を具現化する事業が想定されたものになっています。
今振り返って見れば、この理念・基本方針には先見性があったのではないかと思われます。その証左として、1つ目にこの理念・基本方針が20年近くを経てもいまだに現役である点があげられます(ただし、11年目に潜在的理念であった「創造」を顕在化しました)。また、劇場、音楽堂等の活性化に関する法律が2012年に施行されましたが、この中であげられている普及啓発事業、他の劇場等との連携、国際交流、人材養成等の事業はすでに取り組み済みでした。

4. 新潟市の政策

新潟市は文化振興条例ではなく、文化ビジョンを定めています。1995年度から2005年度を計画年次として10年間の文化振興ビジョンが作られました。このビジョンに基づき1998年度にりゅーとぴあが開館しています。2012年度から2016年度の5年間を計画年次とした文化創造都市ビジョンがあり、2017年度から2021年度の5年間を計画年次とした最新の文化創造交流都市ビジョンが策定されているという変遷です。
現在の市のビジョンとりゅーとぴあの理念・基本方針には共通するキーワードが多くあり、市のビジョン上でりゅーとぴあに関連している部分が18か所もあります。今後は、市のビジョンにある「活力創出と成長」「世界の中での存在感」を実現するために、りゅーとぴあの理念に「社会貢献」を加えて、取り組みを行っていきます。

5. 文化事業

りゅーとぴあには、鑑賞事業、普及事業、育成事業、創造事業があります。これらは4つの基本方針に必ず対応する関係性を持っています。代表的な事業をご紹介しますと、まず鑑賞事業は、「東京交響楽団新潟定期演奏会」です。東京交響楽団と準フランチャイズ契約を結んで、年間6回新潟で演奏会をしています。普及事業は、「音楽アウトリーチ事業」で、地元のアーティスト育成のため、地元から選抜のうえ、アウトリーチ事業に派遣しています。育成事業は「ジュニアオーケストラ」、「ジュニア劇団」が該当します。最後の「創造事業」ですが、新潟発創造事業と銘打って、演劇や舞踊の作品を新潟で制作し、全国各地で公演を行っています。これには、りゅーとぴあの制作・舞台スタッフに経験を積ませ成長を促すという人材育成意図もあります。専属ダンスカンパニー「Noism」は年間2つ企画を実施しており、日本各地で公演をしたり、海外での公演に招かれたりと活発に活動しています。

6. りゅーとぴあと市の関係

りゅーとぴあは、指定管理者制度に基づいて非公募で選定された公益財団法人新潟市芸術文化振興財団が指定管理者となっています。財団は新潟市の外郭団体でもあり、市から人的・財政的支援を受けたうえで、行政の代行的補完的機能も担っています。りゅーとぴあの文化事業の大きな方向性は新潟市が決定しますが、具体的な事業は指定管理者が決定するという役割分担で行われています。

7. 組織体制

りゅーとぴあの運営を行うための組織体制は、トップに支配人を据えその下に3名の芸術監督、また、副支配人を置き、その下に事業と施設の2つの部を置いています。また各部の中には合わせて7つの課が設置されています。ここでのポイントは3つあります。1つ目は、芸術監督は支配人のもとで芸術面の管理監督を行う役職で、りゅーとぴあ運営における意思決定権はないということです。2つ目は、副支配人と事業企画部長は市の職員ですが、文化専門です。3つ目は、各課長を財団の正規職員が務めていることです。りゅーとぴあの運営においては、7つの課が連携をして理念・基本方針を達成する事業を実施するということになっています。

8. 職員の待遇・人材育成

各課の職員の待遇は、課長及びその下の課長代理は、財団の正職員で任期の定めはありません。これはりゅーとぴあ開館時からの「職員に運営のノウハウが貯まる、つまり職員が文化のストックである」という考え方に基づいています。ただし、職員の成長が前提であるという条件が付きます。なお、各課の職員については任期なし・任期付きが混在しています。
文化のストックである人材の育成は、マネジメントにおいてはOff-JTから実務にどうやってつなげいくかを考えて取り組んでいます。また、文化事業の実施ためにOff-JT、OJTを共に行っていますが、OJTを重視しています。
新潟市は、財団に対して、正職員の人件費と理念・基本方針を実現するために実施する文化事業に対する補助金を財政支援しています。この補助金の中には人材育成ための財源も含まれています。支援を新潟市がすることで、指定管理者であり外郭団体でもある財団に役割を果たしてもらおうということです。ただし、この役割を果たせない場合は現在非公募である指定管理者の選定が公募に代わる可能性があります。
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