Archive名古屋会場 講師レクチャー:石田 篤史

みんなでつくる財団おかやまのミッションと活動

石田 篤史公益財団法人 みんなでつくる財団おかやま 専務理事

土木技術者、(公財)みんなでつくる財団おかやま初代代表理事。1977年岡山県倉敷市生まれ。立命館大学卒業後、2000年に岡山県庁に入庁。2012年3月に退職し、同年9月市民530人の寄付により中四国発のコミュニティ財団を設立。

1. 財団紹介

みんなでつくる財団おかやまは、岡山県内27市町村、100人の若者の呼びかけで530人以上の寄付によりできた組織と岡山県では呼ばれたりしています。2012年9月に設立し、スタッフもいない状態で事業をしていました。2013年4月から本格的に稼働し、2014年8月に公益認定を得て現在に至っています。設立から直接いただいた寄付が約5,000万円。延べ2,800人くらいの寄付者から寄付をいただいています。現在では、寄付の受け取りや仲介を含めて年間で大体2,000万円から3,000万円くらいの寄付に触れたり、扱っているというような状況です。何もないところからスタートした組織ですが、市民活動のインフラをつくりたいという思いがありましたので、事務局に特定の財源がなくとも運営できる仕組みをつくる必要がありました。そのため、ミニマムな組織にしようと考え、方針を掲げて当初から組織づくりに取り組んできました。

2. 組織

非常勤の有給理事が1名、事務局長1名、パートのスタッフが2名、あとは委託です。私は現在、無報酬の理事で、普段は会計管理や事業全体の管理などをしています。普段事業を回しているのが、上述のスタッフ4名と委託の方、その他継続的に関わってくれているボランティア、インターンの方を入れて、大体10名くらいです。基本的には寄付を集めてNPO団体に助成をする仕事をしている組織です。

3. 事業内容

事業をご紹介しますと、基本的には資源循環事業を行っています。市民や企業からの寄付、情報や人を、NPO団体に対して提供する活動です。事業の仕組みとしては、柱が3つあります。1つは地域版のクラウドファンディング事業。もう1つは、基金の事業。最後が円卓会議という、情報や人の交流の場づくりです。ヒト・モノ・カネ、情報をうまく回すということをしている組織です。これら3つの仕組みを活用して上手く回るように、セミナー事業やチャリティーイベントの他、調査研究事業をしたりしています。
私たちは、誰もが社会参加し、こういう地域になったらいいな、ということに対してきちんと資源、時間やお金を使える環境をつくって、関わる・参加する人が増えることを文化にしていこうというようなことをしています。キーワードとしては、「つなぐ・つたえる・シェアをする」です。
私たちが目指しているビジョンは、一人一人の思いが形になる社会。解決しないまでも、自分たちはプラスの方向に向かっているという実感があれば、それは一人一人の生きがいややりがいになるのではないかと思っています。このことを果たすために私たちがやっていることは、「つなぐ、つたえる、シェアをする」ということになります。

4. 情報について

県内の様々なNPO団体に対して助成している団体が他にもありますので、民間の助成財団や自治体が参加する情報交換会を定期的に実施しています。その助成制度を効果的なものにするために調査研究も行っていますが、当然私たちが得意でない分野もあったりしますので、各地の地域調査員と定期的に情報交換をすることで事業の計画づくりに役立てるようにしています。また、最近ではSNS等で情報発信をされる方が多いので、ソーシャルライター講座というライター育成事業を地元の出版社と連携して行っています。普段のSNSの発信の時に、ソーシャルメディアを使って書くことが好きな人に対して、団体を紹介して話題を提供するといったこともしています。

5. 成り立ち

2011年の1月頃に、岡山NPOセンター主催の資源循環の仕組みづくりの勉強会が開催されて、私自身もプライベートで参加をしました。その勉強会の中で、先ほど話した3つの仕組みなどが形作られました。その後の2012年5月から6月に、県内27市町村に呼びかけ、人を集めました。7月から8月は一口5,000円で寄付集めをし、名簿に名前を書いた530人の方に発起人として登録いただき約600人の方から413万3,000円のお金をいただいて設立されました。

6. 寄付とミッション・ビジョンの関係

最後に果たすべき大きなビジョンがあり、社会の課題に対して変革をもたらすために事業を実施し、その後実施後のビジョンを掲げるという流れですが、特に寄付を集める際にはこの一連の流れがはっきりしていないとなかなか広がらない。自分たちのことを知っている人には、○○の事業やりますという説明でいいんですが、何のためにやっているかが伝わらないとお金が集まってこない。他者を巻き込むときに一番難しいことは、問題を問題として認識してもらうことだと私は思います。逆にいうと、財団を作るときにもそこを意識し、事業の実施背景・地域課題、目指すべき社会・状態の説明に共感してもらうと事業実施以降のことはほぼ関係なくなります。なので、自分たちがどこに向かっているのかということが大切になります。
もう一つ、共有するためには言葉が重要です。例えば、私たちがどういうことをやっている組織か、ということを言葉を使って継続的に発信することが重要だと思っています。特に、私たちの場合は新しい組織でかつお金を集めているため、同じことをずっと発信するよう意識していました。また、同じ言葉を使っていても実は違う景色を見ている可能性があるので、根底にある定義をクリアにしていくことによって、何のためにそれをしているのか、ということを何度も話しました。組織の中だけではなく、外に伝えるときにも話すことによって、物差しができます。そうなると、対立ではなく議論になると思っています。対立ではなく議論するためには、どこに向かっているのか、何のための、というものがないと自分の感覚だけの判断になってしまいます。手段は形を変えるものだと思いますので、そのための定義を私たちが行い、私たちが話をしてきたという流れになります。
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