Archive名古屋会場 講師レクチャー:渡辺 昌明

立川市地域文化振興財団のミッション・活動・市との関係

渡辺 昌明公益財団法人 立川市地域文化振興財団 事務局長

1957年東京都八王子市生まれ、東洋大学経済学部卒業、民間企業の営業職を経て1993年より財団に勤務。2003年に事業係長、2014年には財団固有職員として初めて事務局長に就任。公益社団法人全国公立文化施設協会コーディネーター。

1. 財団紹介

立川市地域文化振興財団は、1988年4月に設立されました。当初は立川市の職員が出向して財団の運営を行っていましたが、徐々にプロパー職員を増やしていきました。現在は事務局で働く全職員が財団プロパー職員です。立川市の市民会館「たましんRISURUホール」という会館を拠点に、活動をしてきました。現在の財団の特徴として、市民参加型の事業や市内各地に出かけて行くアウトリーチ方の事業に多く取り組んでいます。2006年から、立川市の市民会館の指定管理者に5年の指定管理期間で担当してきました。
2011年から公益法人としての運営が始まりました。それまでは、文化とスポーツが私たちの財団の役割だったのですが、スポーツを定款から外し、文化・芸術の専門的な機関になりました。2013年に「アミューたちかわ」という愛称だった市民会館が、老朽化に伴い市役所の移転と併せてリニューアル工事が行われました。改修後の新しい市民会館に関しては、指定管理を財団にさせないという考えから、市民会館の工事と同時に指定管理の仕事を切り離していただきました。指定管理の仕事を取られたのではなく、指定管理業務から解放してもらったわけです。

2. 職員

当初は、施設管理があったため20名くらいの財団職員が在籍していました。このうち15名が市からの派遣で、財団プロパー職員が4名でした。それが、中期経営計画をつくった2014年の段階では、施設管理がないため職員は減りましたが、11名全員が財団プロパー職員です。有期契約や嘱託の人はいません。

3. 事業

指定管理の仕事がなくなった分、全てのマンパワーをソフト事業に集中できます。2016年度は、130~140くらいの事業を実施しました。コンサートやお芝居、演歌や落語といった多くのホールで行われている事業の他にも、様々なことをしています。コンクールやオペラのためのレクチャーコンサート、オペラのゲネプロの公開、東京文化会館さんと連携してワークショップを行うなどの事業を展開しています。また「財団どこでもステージ」というアウトリーチ事業やロビーコンサートを市民会館と市役所で行っています。市民会館での主催・共催だけでも年間50本くらいの事業を行っています。それに加えて市内全域での事業が非常に多くなっているというのが財団の特徴です。

4. ミッション・ビジョン

中期経営計画を策定する以前に、理念と行動方針を作りました。これは私たち職員が月何回か会合をして1年かけてまとめ、理事会に認めてもらったものです。「市民が人や地域との絆を深め、笑顔あふれる心豊かな生活を送るために、私たちは文化芸術活動を広め・育て・支えます」とあります。「広め・育て・支え」が私たちの大きな理念になっています。大切なこととして、このために私たち職員が、専門的な職員として成長しなければいけない、ということを掲げました。

5. 市の条例・計画との関連

当財団は立川市が設置したため、市の文化行政の考え方を具現化することが私たちの仕事ですが、立川市は2004年に文化振興条例を策定しています。その中に、「市民及び市は、財団法人立川市地域文化振興財団に文化芸術の振興の中心的役割を求める」と記載されています。そのため、施設の指定管理をやろうがやるまいが、文化振興の仕事は財団が行うということが明確になっているわけです。
立川市は条例とは別に、定期的に文化振興計画をつくっています。当然、財団もこの文化振興計画に関連するわけで、この計画における財団の守備範囲を拾う必要があります。この計画を受けて策定したのが、中期経営計画です。ここには、市が目指していることを実際に具現化するような取り組みを入れています。特に、子どもたちに関する部分に力を入れています。中期経営計画はそもそも立川市がどういう町にしたいか、そのために文化ではどうしたいかというオーナーである立川市の考えを具現化するために作ったものです。

6. 事例

中期経営計画に基づいて今やっていることをいくつかご説明したいと思います。例えば、市民オペラです。昨年3月に公演した「カルメン」なら、タバコ工場で働く女たちや兵士たちに扮した合唱団とオーケストラピットで演奏している管弦楽団は市民、舞台には立たないけれども公演の裏方やチケットの販売でオペラを応援してくださるオペラ愛好会も市民団体です。一方主人公のカルメンやホセを演じるソリスト、指揮者、演出家、そして全体を統括する総監督は地元の国立音楽大学の関係者をはじめとしたプロにお任せをしています。プロの力を借りて、自己実現を果たしたいという市民の思いを叶えているのが、市民オペラという取り組みになります。
また、子どもたちへの取り組みですが学校にプロのオーケストラのメンバーや、オペラ歌手などを連れて行き、全20校回っています。今ご覧いただいている映像で小学校の音楽鑑賞教室で歌っている人は、財団主催のコンクールの優勝者です。つまり、事業が有機的に回っているのです。コンクールを行って、優勝者の方たちが私たちにシンパシーを持ってくれることがあり、学校への訪問事業でも手伝ってくれるわけです。

7. ミッション・ビジョンの意義

ミッション・ビジョンが明確であることで一番いいのは、どういう仕事をすればいいかが絶えず分かりやすくなっていることです。私たちがどんな事業をすればいいのか、事業の優先度も、目的に合わせたものに力を注げばいいわけです。事業計画や、2、3年先の計画を考えるところでも、やはり私たちのやるべきことが明確になっているところが一番仕事をする上でやりやすいことだと思います。今の財団の中期計画は、2019年度の5年間ですが、市が次に作る文化振興計画も同じ2019年度までなので、次の文化振興計画や文化行政に合わせて、私たちがやるべきことをまた明確にして、それに合わせて仕事を行っていくという形になると思います。そういう意味で、この中期経営計画を作ったことで、具体的にどうすればいいのかが明確になったことが私たちにとっての仕事のやりやすさだと思います。
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