Archive静岡会場 講師レクチャー:奥山 大介

ファンドレイジングとは

奥山 大介日本ファンドレイジング協会 アートチャプター代表

認定ファンドレイザー。2006年より公益財団法人札幌交響楽団に勤務。パトロネージュ会員(寄附会員)担当。北海道やアート分野へのファンドレイジング普及を目指し、ファンドレイジングに関するグループである北海道チャプター及びアートチャプターを開設。両チャプター代表を務める。

1. ファンドレイザーとは

ファンドレイジングの範囲には、狭義の「寄付集め」、一般の「支援性資金獲得(会費、助成金等)」、最広義の「全体財源獲得(事業収入、融資等)」があり、狭い意味で寄付集めだけのことを指す場合もあれば、広く事業収入の話も指すこともあります。セミナーで私はよく、ファンドレイジングアクションにあたる、寄付集めや助成金獲得の方法を聞かれますが、それは一番重要な部分ではないのです。自団体の潜在能力の分析やマーケットを把握し、自分たちの目指す社会や地域を明確化にした上で、事業を組み立て、それに対してどう財源を獲得するか?と考えます。何のための財源かを考えるところからファンドレイジングアクションが始まるというのが、ファンドレイザーの考え方です。
非営利組織の話では、受益者と支援者の仲立ちをするのがソーシャルセクターで、特に支援者とコミュニケーションを取るのがファンドレイザーです。支援を求め、それを1回で終わらせないためには、何のために支援を求めるかをきちんと伝えないといけない。共感性の支援として預かる、というのがファンドレイジングの考え方です。金銭での応援(寄付、物品購入)や、能力や時間を使っての応援(ボランティア、プロボノ)をひっくるめて、支援者に共感してもらって、それらを獲得してくるというのがファンドレイザーの役割です。ファンドレイザーの仕事は、受益者のために支援者からの思いを預かることであり、支援者がともに受益者を支える存在で、仲間であると感じてもらうことが大事です。
ファンドレイジングの最も目標とすべきことは、社会をより良いものにするために、支援者の思いから最大限の効果を生み、それをきちんと支援者に伝え、支援者が支援したことによる満足をしっかり得ることです。

2. 文化・芸術団体のファンドレイジング

資金の種類には、一般的に寄付、助成金、事業収入と3つの大きな収入があり、ファンドレイジングでの柱としています。この3つのバランスが重要です。それは団体が活動しやすいバランスのことです。
例えば、オーケストラの寄付は、『日本のプロフェッショナル・オーケストラ年鑑』によると、全体収入の5%~20%で毎年獲得し続けている団体が多いです。寄付集めは、専任者が1人か1.5人位で担当していることが多いと聞きます。ただ、新規の支援者を見つけてくるのは、団体全体でやっていくのが良いと考えています。広報宣伝の担当者の場合は印刷業者であったり、事業の担当者の場合は公演依頼主であったりと、ファンドレイジング担当者が直接関わっていない人たちと知り合っていますので、職員全員が自団体がどういう団体なのかということを語れるようになっていることが重要です。
文化・芸術団体の寄付の場合によく話すのが、寄付をいただくスリーステップです。まずファンに寄付者になってもらうこと、その次に、ファン以外に寄付者になってもらうこと、そしてそれらの寄付者をさらにファンにしてしまうこと。ファンの度合いを深め、ファンを広げていくことが非常に重要になります。
ファン以外の方から寄付をもらうためにはどうしたらいいか?というと、自団体がメインで行う事業以外のアウトリーチ事業など、地域にその団体があることで生まれているものをきちんとアピールし、ファン以外の方からの支援を集めることです。例えば、支援の依頼書に、小学校での演奏会やワークショップの様子、高齢者施設に行った様子などを入れると効果的かもしれません。地元にその団体がある意義をアピールすると、ファン以外で、自分はあまり観ない聴かないけれど、社会貢献活動をしているのなら応援しようかなと思う方が少しずつ増えてきます。
寄付というのは、期待や共感により託された資源で、団体や事業の成長が支援者の喜びになります。長く関係を継続するためには「人と人」としてのお付き合いが必要で、寄付者はその団体の一番の理解者かもしれなく、仲間です。お客様以上の神様のように扱うのではなくて、自分たちの仲間だと思って接することが非常に大事です。

3. ファンドレイジングの手法

ファンドレイジングには、いろいろなやり方があります。代表的なものをいくつか紹介します。「キャンペーン型」は、何か建物を建てるとか何かを買うなど、目的を掲げた寄付です。最近よく話題になる「クラウドファンディング」もあります。「募金箱」はお金を集めるというよりは、広告塔的な役割があります。また「会員型」は、会員になってもらって寄付を集める方法で、継続率が高まると言われています。それから、日本人によくフィットすると言われるのが「もったいない寄付」です。使用済み品や不要品を寄付してもらいます。「寄付付き商品」は、消費者が商品を購入すると一部が寄付になるもので、企業とタッグを組んでするものもあれば、自分たちで開発するものもあります。あとは「遺贈」「遺産寄付」があり、今非常に注目されています。
ファンドレイジングの手法はいろいろありますが、何のために必要な資金か?ということを考えるのが大事です。それによって、有効な使う手法が変わります。
戦略的な寄付集めは、最初のスタート時に自団体がどういう力を持っているのかを考える、棚卸をします。その上で現状の寄付者がどういう人か、またどういう人が今後の寄付者になってくれそうか、当てをつけます。その当てにいきなり飛び込むのはなかなか難しいので、理事やボランティアを巻き込みながら情報をかみ合わせ、コミュニケーションの方法や内容を選択します。そして実際に計画を練り、それに従ってあいさつに回ります。支援を得た場合には、お礼の書面を送ります。行くと喜んでくれる人には直接行きます。そして、実際に自分たちがしたことを報告し、内部で評価をします。
感謝と報告は、支援につながらなかった人にもぜひして下さい。たまたま予算がなかっただけかもしれないので、話を聞いてくれたお礼と活動報告もして、次の支援のお願いの訪問の可否の話もして、ぜひ来てくれと言われたらチャンスです。寄付をお願いして、してくれる人は、大体すでに理解してくれています。まだ寄付してくれていない人は、そこの団体の価値をまだ理解していないということなので、それを伝えることが大事です。断られたとしてもそれはゼロではなく、話を聞いてくれ、自団体をよく知ってくれる人ができたということです。その人の知り合いの方が来る可能性もあります。

4. ファンドレイザーに求められる5つの能力

ファンドレイザーに求められる能力として言われていることは、「ファンドレイジングの知識とスキル」「誇りと倫理を守る姿勢・誠実さ」「対人コミュニケーション力」「マネジメント・コーディネーション力」「ファンドレイジングの実行・実践力」の5つです。一人で全部をフォローできなくても、団体のなかで補い合ってできればいいと思います。そのなかで一番大事なのは、「倫理を守る」ことでこれは全員に必要です。倫理については、「寄付者の権利宣言」(日本ファンドレイジング協会)で、寄付者、寄付する人の権利、例えば寄付先を自分で選ぶ権利や、寄付した寄付金についてどう使われたのか知る権利等がまとめられています。あとは「ファンドレイジング行動基準」(日本ファンドレイジング協会)があります。これはファンドレイジングをする人が気をつけることや、してはいけないことが書かれています。これらはまたみていただければと思います。
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