Archive静岡会場 意見交換会

公開セミナー静岡会場「ファンドレイジング」意見交換会

クラウドファンディング

クラウドファンディングについてはどう捉えているか?
奥山:クラウドファンディングは、一発事業を立ち上げたり、イベントをスタートさせたりする際の、最初の自己資金を得るにはいいですが、毎年の活動のために資金を得るには向かない場合が多いです。「CAMPFIRE」や「Ready for」といったクラウドファンディングのプラットホーム上では、アップする前段階の目標額まで達成しないと、ゼロ円になるのです。アップする前までに、自分の足で半分の額まで内諾を取っておいて、アップした瞬間に寄付を入れてもらうようにしておくと、成功率が高まると言われています。

澤田:(メセナ協議会では、申請されたプログラムを)各分野の専門家が審査し、本当にきちんと実現するかどうかや、公共的なものかどうか、予算書はきちんとしているかを見て通し、お金もきちんとお支払いします。企業メセナ協議会の認定を得たということが、何らかの後押しをしているということで…。自分の足できちんと信頼をつくり、お金を集めていくことは、大事なことだと思います。インターネット上で、「それいいね」という形でお金が集まるのもいいかもしれませんが、きちんと認定がされたとして、支援者とコミュニケーションを取ることは大切なことだと思います。

ファンドレイジングについての具体的なノウハウ

どのようにファンドレイジングを学んで、認定ファンドレイザーの資格を取ったのか?
奥山:資格は日本ファンドレイジング協会が認定しています。ファンドレイザーの資格は、認定と準認定と二段階に分かれていて、日本ファンドレイジング協会の「FRJ2018」のような大会のプログラムを3日間受講すると、準認定ファンドレイザーの資格試験を取れる要件を満たせます。資格は何でもそうで、ライセンスでない限り役には立たないのですが、資格をもつ時点でそれなりの知識が入ってきています。体系的なファンドレイジングを学ぶことによって、実際にファンドレイジングをする際に自分のなかに棚があるので、自分の活動を落とし込んでいける強みがあると言われています。また、学んだこと、資格を持っていることで、ファンドレイザー同士のセクションを超えたいろいろな人とつながれる利点があり、フルに生かしたいところです。
寄付者はどのように探せるのか?
奥山:いろいろありますが、例えば理事に紹介してくれる先を聞いたり…また、商工会の冊子などをみて、安定している企業と思うところに、いきなり飛び込むこともあり得ます。
事業協賛を依頼する企業と、寄付会員を依頼する企業で、区別はしているのか?
奥山:演奏会への協賛は、ファンドレイジング担当ではなく演奏会の担当者がしたとしても、寄付会員の説明はできます。逆に大口の寄付会員の企業に、冠演奏会の開催依頼をすることもできます。ファンドレイジングの柱である、事業収入と助成金と寄付という3つの収入を、それぞれ消費するのではなく、入ってきた寄付をもとに事業収入を増やし、増えた事業収入で寄付をまた増やす、助成金を消費するのではなく、寄付や事業収入につなげるといった考え方が必要です。
出入り業者に寄付を依頼しても問題にならないとのこと、案内するときに気をつけることは?
奥山:一社独占で仕事を依頼するのではなく、複数の業者から見積もりを取り、一番安い、一番条件に合う業者に頼んでいるという大前提があります。その上で、寄付をもらっているからそこに仕事を頼んでいるわけではないことを、書類上整理しておくのが大事です。きちんと基準を設けることは大事だと思います。
寄付の会員になってもらうことで満足してしまい、その先のケアが難しい。寄付をしてもらった後に、仲間になってもらう、共感してもらう方法はあるのか?
奥山:例えば、寄付に際し招待券を渡すのであれば、その使い方の提案は意図的、意識的にできます。担当の人はどう使っていいのかわからず、回覧や貼り出しで終わることもあります。その際に、取引先の人へのプレゼントとして使っている企業もいますといった話をしたり、小学校の子供たちや高校の演劇部に寄付すると喜ばれるがどうですか?と提案したり、招待券を「死に券」にしないようにします。そうすると、担当者は使えたと感じるし、企業の上の人も、職員に寄付が役立ったと思います。また学校に渡した場合は、学校から自分の企業を感謝してもらえたという満足感や喜びを感じます。せっかくチケットを渡しているのであれば、それをいかに使わせるかのケアはします。
芸術公社ではファンドレイジング専門の担当者はいるのか?事業ごとか?
奥山:基本的には事業ごとにしています。団体を維持していくために資金を集めることはほとんどしていません。自分たちそれぞれがそれぞれの立場で様々な仕事している中で、社会や芸術の今にとって、アクションを起こすべきことといった問題意識が出てきた際に、芸術公社でしようと仲間を募って実際に動いていくことが多いです。コレクティブであり続けることが意義だと思っています。多様なメンバーがいるので、それぞれのこれまでのつながりや強みといったところに、話を持っていく仕方でしています。

ファンドレイジングの課題

片山:アメリカでは民間によって芸術文化が支えられています。アメリカの寄付金全体では8割が個人で、芸術関係は企業が割と多いのですが、それでも半分が個人です。日本では、国の統計で家計貯蓄が過去最高を記録しており、実は個人はお金を持っているのですね。個人から寄付を得るというのは必要かと思います。自治体文化財団は、必ず理事、評議員と役員がいて、そこには社会的地位のある人たちがいて、ミッションを共有しているはずなので、まずはその人たちから寄付を得て、またその交友関係もみます。理事や評議員を働かせることで、個人の寄付を集めることは可能ではないかと思います。
高島:オーケストラのような恒常的に動いている団体は、ファンドレイジングの担当者を核に活動を展開していくことができます。一方、芸術公社はプロジェクト型の組織なので、専門の担当者を置かない代わりに、プロジェクトごとにいろいろなメンバーが関わり、多様なメンバーを強みにして、活動を展開しています。組織の形の違いによっても、ファンドレイジングは担当者がいなくてもでき、またいたほうが広がるということもあるかと思います。
高島:自治体がする支援と企業がする支援は何が違うのかなと。支援を受ける現場では、両者を使い分けていると思うので、支援する側もそこを考えていく必要があります。それができると、全体としていろいろなものが補完され、いい形で皆が活動を展開できるような基盤がつくられていくのではないかと感じました。