Case Study事例集

特色ある事業

「地域に根差した楽団」
実現のために、
丁寧に行われる移動音楽鑑賞教室

広島交響楽団/公益社団法人 広島交響楽協会
1963年広島市民交響楽団として発足、72年にプロ化。「平和貢献」「地域に根差した楽団」「世界に通用する楽団」を理念に掲げ、年間約140回の演奏会活動を行う。運営法人名は公益社団法人 広島交響楽協会。2015年度実績の収入構成は、地方自治体(広島県、広島市)からの補助金が30%、文化庁・芸術文化振興基金が10%弱、演奏収入が50%弱、民間寄付金が10%強となっている。
広島交響楽団では教育事業の主たるものとして、県内の小中学生、高校生を対象とした「移動音楽鑑賞教室」を年間約30公演行っている。主催は各学校と広島交響楽団で、各学校の体育館やホールに広島交響楽団が出掛け、2016年度は広島県内の60校、合計14,293名が鑑賞した。
学校が負担する児童生徒一人あたりの鑑賞料は、小学生が700円、中学生が800円、高校生が900円で、広島市内では200名に満たない場合は200名分を、広島市外では400名に満たない場合は400名分を学校側で負担する形となる。2016年度における「移動音楽鑑賞教室」事業全体の収入源は、学校側からの鑑賞料と楽器運搬料負担による収入と、それら合計よりも15%ほど少額での芸術文化振興基金の助成金となっている。ここにわずかの自己負担金を加え、指揮者やソリスト等の楽団員以外の人件費や旅費、会場費といった本事業の経費に充てている。本事業によって生じる楽団員・事務局職員の人件費は、公演準備及び当日分も賄えておらず、全て楽団の自己負担となっている。人件費も含めた教育事業の収支は赤字が大きいのが現状である。
「移動音楽鑑賞教室」の目的は、何よりオーケストラ演奏そのものの教育的価値の高さにある。クラシック音楽という再現芸術の魅力、そして50人のフル編成のオーケストラの生演奏に触れることが子どもの感性を高めるものとして認識されている。50人の楽員が再現芸術に向き合う懸命さは必ず子どもの心に響くとし、そうした状況に導きやすくするためにも、プログラムは各学校の要望を配慮しすべて違うものとなっている。一つ一つの公演が丁寧に実施されていることが特徴である。
広島交響楽団の活動のなかで、「移動音楽鑑賞教室」は地域のための社会貢献活動「音楽の芽プロジェクト」の一つとして位置付けられている。「移動音楽鑑賞教室」を継続的に開催することで、音楽の芽が大きく花開き、地域社会がより豊かになるとし、理念の一つ「地域に根差した楽団」の実現に繋げているのである。財務の観点では厳しい状況のなかで、その教育的価値の高さから、社会貢献活動として丁寧かつ懸命に行われることにより、音楽の種まきを着実にしているのが広島交響楽団の「移動音楽鑑賞教室」といえる。
Point
  • 「移動音楽鑑賞教室」の教育事業としての目的を明確化し、組織の理念のなかに位置付けている。だからこそ財務の観点では厳しい状況の中で、丁寧に行うことが出来ている。