Case Study事例集

人材育成

独自の制度にもとづく人材育成

公益財団法人 三重県文化振興事業団
1994年開館の三重県総合文化センターの運営母体として1992年に設立された。受託管理者を経て現在指定管理者4期目。三重県総合文化センターは文化会館、生涯学習センター、男女共同参画センター、県立図書館の複合文化施設。県立図書館は県の直営。
※全国公立文化施設協会の三重県の正会員(2017年度)は23施設(12施設が指定管理、11施設が直営)。三重県文化振興事業団は三重県公立文化施設協会の永年会長館。

職員のワークライフバランスと人件費の調整

公益財団法人 三重県文化振興事業団は、4つの職階をもとにした独自の登用制度を設けている。これらの職階は「年俸制管理職」、「正規職員」、「年俸制専門員」、「専門員」に分かれている。登用の流れは、まず有期の「専門員」として雇用され、3年の在籍期間を経てほとんどの人が「年俸制専門員」となる。以前「年俸制専門員」は1年更新だったが、労働契約法の改正を受け、無期雇用に転換可能となった。そして、状況に応じて「年俸制専門員」から「正規職員」となる。「年俸制管理職」は各運営部門の長であり、公募による採用を行っている。「年俸制管理職」では、民間企業管理職経験者など専門性を持った人材を適材適所に配置している。
こうした登用制度は、職員の多様な働き方を可能にし、結果として職員のワークライフバランスの実現にもつながっている。また職階を設けることで、人件費の見通しが立てやすくなるというメリットもある。

評価制度-組織力の向上を図る

職員における独自の評価制度として設けているのが「職員・グループ表彰制度」である。これは目に見える評価として職員が考案した制度で、2015年から取り組んでいる。内容は、斬新なアイディアで成果を上げた取り組みを考案した職員に対し、表彰とともに賞金を贈るというものである。年に1回の応募性となっている。これまでの例としては、サークルの立ち上げによる職員の健康増進面での貢献、光熱水費等のコスト削減のルールを研究して実績につなげた、といったものがある。

研修の効用

同事業団では、職員の研修は国内だけにとどまらず、海外でも行われている。2011年には職員有志が海外視察を企画し、アメリカの文化芸術系施設を訪問した。視察先では、主にアート教育とコミュニティ事業について学び、アート教育に関わるコーディネーターの必要性を痛感したという。この視察は、参加した職員たちにとって大きな刺激となった。
帰国後、視察に参加した職員にフィードバックを求めたところ、新たな研修会を独自に立ち上げる構想があがった。結果としてこの構想は実現し、「ミエ・アートラボ」と呼ばれる研修会が発足した。この研修会は、アート教育に関するコーディネーター育成を目的とした全国規模のもので、年に1回三重県にて開催されている。また、職員が互いに協力しあいながら見知らぬ土地での視察を終えることで、部門を超えた職員の交流が活発になり、日常の業務においても部門横断的な情報連絡が行われるようになった。
Point
  • 独自の登用制度は、重要な経営課題である人件費の調整を可能にするとともに、職員に多様な働き方の選択肢を提供し、ワークライフバランスの実現につなげている。
  • 本事例の評価制度の意義は、職員が組織の課題を認識し改善を試みる姿勢が得られることで、それが組織全体の環境改善につながることである。また、成果の表彰は、職員同士が互いの努力を認め合い、切磋琢磨する組織文化の形成にもつながる。
  • 研修においては、所属の違う職員同士が同じ経験を共有することで、日常業務における情報伝達を円滑にする。また、本事例のように研修を終えた職員が、それを組織に還元できる場を設けることが必要である。