Case Study事例について

本事業では、2016年度と2017年度に実施した講座へ寄せられた、自治体文化財団の抱える課題等をもとに、課題解決の参考になると思われる事例の調査を行なってきた。調査した事例は5つのテーマに分けて整理した。各テーマで紹介する事例の狙いは以下の通りである。なお、事例には自治体文化財団が指定管理する公立文化施設のほか、実演芸術団体も含む。

自治体と財団の関係

自治体文化財団は、自治体の出資で設立されているため、自治体との関係が深い。しかし、近年は自治体文化財団の主な事業であった施設管理を、指定管理者制度により他団体が担うケースも登場するなど、自治体と自治体文化財団の関係も変わりつつある。また、自治体文化財団は財政的に自治体に依存している割合が高いため、自治体との関係を考えることは、自治体文化財団の存続と存在意義を考えることにつながる。

ファンドレイジング

近年、自治体文化財団においても収入多様化の必要性が高まっているが、自治体文化財団におけるファンドレイジングの試みはまだ発展の途上段階にあると言える。ファンドレイジングを進める文化・芸術団体の取り組みと、そうした団体に助成や支援を行う団体(企業等)の取り組みを紹介したい。支援を受ける側とする側、双方の視点を知ることが、ファンドレイジングの実現につながると考える。

人材育成

自治体文化財団は自治体の影響を強く受けている場合が多いため、官僚制の弊害が生じている団体は少なくない。外部環境の変化に柔軟に対応できる人材、組織づくりが求められているだろう。こうした問題意識から、人材育成における工夫を紹介したい。

特色ある事業

自治体文化財団には、指定管理施設をベースに国際的評価を得られるような先進的取り組みを行なっているところがある一方、設置者である自治体をベースに地域に根ざした活動を行なっている団体も多い。両者の方向性は異なるが、両者とも自治体の人口構成、歴史や文化、産業等を考えながら事業を生み出している点では共通している。独自性の高い事業を生み出し、発展させる力に着目した。

ネットワーキング

経営における課題解決策を考えるためにも、特色ある事業を展開するためにも、他者を知り他者とつながることは不可欠である。ネットワーキングの目的は、地域との関係構築やマーケティング、新しい気づき等さまざまである。目的によって繋がり方も違う。異なる目的を持ったネットワーキングの事例を示す。

ミッション・ビジョン

利益を第一の目的としない非営利組織にとって、社会からの支援や働く人々のモチベーションの源泉となるのがミッション・ビジョンである。定款に書かれているような抽象的な目的から一歩踏み込み、組織が社会に提供する価値を考える。近年、ミッション・ビジョンを策定し、経営課題に取り組む自治体文化財団が少しずつ増えてきている。