Statistical Data使用するデータと分析のねらい

使用するデータと分析のねらい

ここからは自治体文化財団の経営の実態を統計データから捉える。使用するデータは静岡文化芸術大学による「SUAC芸術経営統計」である。自治体文化財団を対象にした公式統計は存在しないなか、静岡文化芸術大学は2013年度に初めて全国の自治体文化財団の統計調査を実施した。本分析では、静岡文化芸術大学で2013年度と2016年度に行った調査にて回答のあった自治体文化財団のデータを使用する。両者は実績としては2012年度及び2015年度のデータである。
本分析により、これまで大きく取り上げられなかった自治体文化財団の実態の一側面が明らかになり、それが個々の自治体文化財団が課題を解決していく際の参考資料となり、また国、自治体の文化政策の立案のための材料のひとつとなることを期待する。

データの概要 ― 地域、設立、法人格

2012年度と2015年度のデータを地域別に概観すると、北海道が約1~4%以下、東北が約5%、北関東が約10%、南関東が約15%~20%、中部が約25%、近畿が15%、中国が約10%、四国が約3%、九州が約10~15%であった。回答としては、南関東と中部、近畿が高い傾向にある。
自治体文化財団の設立年に着目すると、2012年度も2015年度も、1980年代から90年代にかけて設立された財団が約80%となっている。また、法人格については、2012年度データは新公益法人制度への移行期間にあたっていたため、公益財団法人および公益社団法人が約60%だったが、移行後に該当する2015年度データでは、約80%が公益財団法人および公益社団法人となった。なお、2015年度には一般財団法人の形態も約10%みられる。

データの概要 ― 施設の指定管理の状況

2012年度と2015年度のデータの施設の指定管理の状況を概観すると、劇場・音楽堂を少なくともひとつ管理している財団が約80%であった。劇場・音楽堂以外では、少なくともひとつを管理している施設は、美術博物館が約15~20%、美術博物館以外の博物館が約10~15%、社会教育施設が約20~30%、図書館が約5%であるなか、スポーツ施設や公園といったその他の施設が約40%と高い比率となった。全体としては、劇場・音楽堂の指定管理が自治体文化財団の大きな特徴といえるが、指定管理施設をもたない財団も、2012年度は約6%、2015年度は約10%存在している。

分析の視点と方法

分析項目

データの分析は、自治体文化財団の経営に大きくかかわる収入と職員を中心に取り上げる。
収入のデータは、自治体文化財団の収入源を明らかにするべく、事業収入、指定管理料、国・地方自治体および民間からの補助金・助成金、寄付金・会費といった収入項目の構成を分析する。2012年度のデータについては、指定管理料と自治体からの補助金・助成金の比率が最も高いデータと、最も低いデータも参照し、自治体からの財源のあり方を問う。また、民間からの助成金等の支援、寄付金・会費の状況を概観し、これらの比率が高いとされる日本のオーケストラとの比較を試みる。
職員のデータは、主に雇用形態に着目する。総職員数が常勤、非常勤、パート・アルバイトといった雇用形態ごとにどのような比率で構成されるのかをみていく。特に、常勤職員のうちの任期付職員の比率に注意し、自治体文化財団の雇用における課題に迫りたい。なお、雇用の課題は人材育成にもかかわるため、自治体文化財団が職員に実施している研修についても分析する。研修実施率として、職務を離れての研修(OFF-JT)と、職務を通じて行われる体系的な教育訓練(OJT)がどのように実施されているのか、その傾向を把握する。ただし、研修は2012年度データのみの分析である。

自治体文化財団の分類

2012年度データと2015年度データでは、分析における自治体文化財団の分類が異なる点に注意したい。
2012年度のデータは、施設の指定管理の状況に着目する。施設の指定管理の有無とその種類、数が明らかになっている166件の自治体文化財団のうち、少なくともひとつは文化施設の指定管理をしている156件を対象とし、施設の種類と数による分類で分析する。
2015年度のデータでは、施設を指定管理しない自治体文化財団が増加していることを考慮し、指定管理の状況は問わず、広域自治体である都道府県と基礎自治体の市に分類した。

使用する用語について

収入

収入項目(内訳)
◆事業収入 ◆指定管理料 ◆補助金・助成金 ◆基本財産運用益/特定資産運用益 ◆寄付金 ◆会費 ◆その他
事業収入 入場料・入館料、施設使用料、設置自治体からの受託事業収入、広告宣伝料、物品販売収益、企業からの事業協賛金等
補助金・助成金 公的支援と民間支援(※)
公的支援/国(文化庁、芸術文化振興基金)からの支援、その他の国からの支援
     地方自治体(自治体財団を含む)からの支援
民間支援/助成財団及び一般企業からの支援(寄付金扱いのものは除く)
※2015年度は、公的支援、民間支援のほか、未分類としても回答
寄付金 個人・法人からの寄付金、賛助会費等
会費 個人・法人からの会費、友の会会費等

職員

職員の雇用形態
◆常勤職員(うち他機関からの出向者、任期付き職員) ◆非常勤職員 ◆パート・アルバイト ◆派遣職員(※)
※2015年度は外部委託として回答の上、派遣職員、個人への請負の内訳を回答。
常勤職員 月16日以上勤務している職員
非常勤職員 月16日未満勤務している職員
パート・アルバイト 時給制で雇われている職員
協力会社からの
派遣職員(請負契約)
業務を委託している企業等から施設に派遣されている職員
(ただし警備・清掃の委託は含まない)
他機関からの出向者 設置自治体等からの出向者
任期付き職員
(契約社員を含む)
3年上限等、任期を定められた職員
(ただし委託契約のものは除く)

職員研修

OFF-JT 職務を離れての研修。実際の業務から離れ、内部の会議室、研修室や外部で行われるもの
OJT 職務においての体系的な教育訓練。実際に業務をこなしながらの研修で、人材育成計画に基づいて体系的に行われるもの
中堅職員 係長相当職以上
◆比率は、データ上は小数点以下第2位を四捨五入し表示した。