上山 典子

「新ドイツ派」の成立
―リストと彼の仲間たちによる進歩的音楽集団

「「新ドイツ派」の成立」表紙

上山 典子[著]

春風社 2022年12月
ISBN 978-4-86110-843-3

著者からのメッセージ

1859年6月、当時を代表する音楽史家・批評家のフランツ・ブレンデルがベルリオーズ、リスト、ワーグナーの「三人組」に対する名称として提唱した「新ドイツ派 Neudeutsche Schule」は、19世紀の西洋音楽研究史上、もっとも複雑で錯綜した用語の一つに数えられている。提唱直後から、この一派が音楽史におけるどの現象を、いずれの人物を指すのか、という基本的事項に対して異論と批判が続出し、結果として、その概念は曖昧のまま残されてきたからである。
新ドイツ派とは何か。この用語は誰を、あるいはいずれの集団を包含するのか。この名称はなぜ生み出され、その概念はどのような変遷過程を経て成立したのか。本書はこのような根本問題を解明するために、「新ドイツ派」の前身とされた1850年代の「未来音楽 Zukunftsmusik」から概念を説き起こし、一派提唱の歴史的経緯とその後20世紀初頭の音楽史記述に至るまでの広範な関係資料を追う。