オーケストラピットって何?

【ふじやまのぼる先生のオペラ講座(27)】
普通の演奏会では、オーケストラステージの上で演奏します。オペラの場合、オーケストラはステージ上ではなく、ステージと客席との間の大きな溝の中で演奏します。このオーケストラがいる部分のことを「オーケストラピット」と呼びます。通称「オケピ」。「オケピ!」というミュージカルがあったので、名前だけは知れ渡っていますね。

 
オーケストラのイラスト
オーケストラピットは英語です。英語の「pit」は、「窪み、竪穴」です。「モーター・スポーツ」などで「ピット・インする」と言いますね。ガソリンスタンドや自動車整備工場で車を点検してもらうとき、穴のあいたところの上に車を止めて、整備士がその穴の中から車体の下の部分(通称おなか)をチェックしてくれますよね。あの穴が「ピット」なのです。ピット・インとはこの場合整備場に入ることを指します。オーケストラピットは、国によってさまざまな表現をされます。ドイツ語「Orchestergrabenオルケスターグラーベン」といいます。グラーベンは「溝や塹壕、墓」の意味があります。誰ですか、オーケストラの墓場なんて言っているのは!最もしゃれた言い方はイタリア語でしょうか。「Golfo misticoゴルフォ・ミスティコ」といいます。直訳すると「神秘的な湾」となります。確かに指揮者からの指示で、オーケストラが1つのオペラを紡ぎだすという点で、素晴らしい表現だと思います。
通常のホールでオペラを上演するときには、仮設のオーケストラピットを設営します。写真は、コンクール会場であるアクトシティ浜松の大ホールです。座席表を見てください。ステージ近くの1列から5列は、座席が取り外し可能となっていて、ステージをこの部分まで、拡大することができます。同じように拡大したステージを、客席よりも下に沈めた場合、オーケストラピットが出来上がります。
アクトシティ浜松大ホール1階座席表
アクトシティ浜松1階座席表
写真(1)
まず、ステージを拡大した状態で、拡大したステージ上に必要なものを載せて、下げていきます。椅子や譜面台、打楽器が乗っているのが見えますね。下がっている最中、人が近づかないよう、監視員がステージ端に立って注意を促します。
写真(1)
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ステージから見るとこんな感じ。オーケストラのスタッフが、手際よく椅子や譜面台を並べていきます。彼らは本当に仕事が早く、寸分の狂いもなくまた楽器の大小を考えたうえで、配置していきます。
写真(2)
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オケピの中から。この時は、2メートル下げました。意外と深いです。オーケストラの編成の大きさ指揮者の好みにもより、下げる深さや楽器の配列が異なります。
写真(3)
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