人気のあるオペラ とは?

【ふじやまのぼる先生のオペラ講座(30)】
どんなオペラを観に行ったらよいでしょう?
なかなか自分で決めるのは難しいですね。それに、観たくても上演していなければ観れませんもんね。そこで、どんなオペラが多く上演されているのかを、オペラ大国ドイツと日本を比べながら見てみましょう。
まず「ドイツ劇場協会(Deutscher Bühnenverein)」のサイトから引用してみましょう(ここでは、オペレッタは入れていませんので、人気の高い「こうもり」などは入っていません)。ドイツには、大都市の州立歌劇場から、小さな町の小さな劇場まで、なんと386の劇場!があるそうです。小さな町の劇場は、オペラに特化した劇場というよりも、オペラ、演劇、ミュージカル、音楽など、なんでも上演するような、いわば「おらが町の劇場」的な感じなんだそうです。
比較するのはコロナ禍前の、2018/19シーズンの上演についてで、通常上演されていた頃のものです。ドイツのシーズンは、おおむね9月から始まり、翌年6月に終わります。都市によって多少前後しますが、その10か月間の上演と考えてください。
日本国内は、コロナ禍前の2019年に上演された海外作曲家のもので、こちらは、「昭和音楽大学オペラ研究所」のまとめた「日本のオペラ年鑑2019」を参考に引用しました。

Q.1 上演数の多いオペラ作曲家は?

オペラ作曲家別上演数トップ5
オペラ作曲家別上演数トップ5
【日本】オペラ作曲家別上演数トップ5
日本のオペラ作曲家別上演数トップ5
モーツァルトのイラスト
上演数No1!
モーツァルト
第1位は、ドイツ・日本ともに、モーツァルト
モーツァルトは聴きやすく、集客も見込め、話の内容もわかりやすいので、上演数が増えた要因だと思われます。
第2・3位は、ヴェルディプッチーニ
2・3位は順位の違いがあるものの、どちらもイタリアの双璧、ヴェルディプッチーニが入りました。イタリアの美しいメロディーと、感動的(衝撃的)な結末が、観る人を納得させるのでしょう。
ドイツの第4位はワーグナー
ワーグナー生誕の地でもあるドイツ。母国語のオペラということで上演数も多いのですね。長大な作品を楽しむ土壌があるのでしょう。
オペラコンクール審査委員長の木村俊光先生は、ライン・ドイツ・オペラに16年に渡り所属していました。先生のワーグナーはとても素晴らしく、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」ハンス・ザックスや、「タンホイザー」ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハなど、日本人離れした歌唱とドイツ語で、絶賛を集めたそうです。先生も聴きたかったです。
ドイツの第5位はロッシーニ
日本でロッシーニというと、まだまだ「セビリャの理髪師」が大きな比重を占めます。ヨーロッパでは、ロッシーニの研究が進み、楽譜の校訂が行われ、多くのロッシーニのオペラが上演される環境にあります。
第7回コンクール三浦環特別賞を獲得した小堀勇介さんは、ロッシーニを超絶技巧のアリアを歌うことのできる数少ない日本人テノールです。今後の日本のロッシーニ上演を牽引してくれることでしょう。
小堀勇介さん
小堀勇介さん

小堀さんの今後のロッシーニ役での出演

「セビリアの理髪師」
2022年6月12日(日曜日)日生劇場
「泥棒かささぎ」
2022年8月9日(火曜日)フェスティバルホール
日本の第4位はメノッティ
ジャン・カルロ・メノッティ(1911-2007)は、イタリアで生まれアメリカで活躍した作曲家です。「電話」というオペラに代表されるような、比較的小規模で、子どもにもわかりやすい作品も書いていますので、日本語に訳して上演されることも多いです。
日本の第5位はビゼー
ビゼーの回数が多いのは、「カルメン」の上演が多いからでしょう。親しみやすい多くのメロディーが、内容はともかく人を惹きつけます。
オペラコンクールの審査委員でもある伊原直子先生の妖艶で魅惑的なカルメンは、先生もやられました。

Q.2 上演数の多いオペラは?

【ドイツ】オペラ上演数トップ10​
ドイツ オペラ上演数トップ10
【日本】海外のオペラの舞台上演数トップ10
日本 海外のオペラの舞台上演数トップ10
1位はどちらもモーツァルトの作品「魔笛」「フィガロの結婚」でした。「魔笛」は、ドイツ第2位、日本第4位の「ヘンゼルとグレーテル」と並んで、ドイツでは、親が子に見せたいオペラ、また子どもが最初に親しむオペラとして不動の人気を誇っています。また「ヘンゼルとグレーテル」と、ドイツ第3位の「ラ・ボエーム」は、クリスマスの定番として、オペラハウスでは集客を見込める作品として位置づけられています。
上演数=人気作とは限りませんが、人気のない作品を何度も上演する劇場(団体)はほとんど無いといっていいでしょう。人気があれば集客も見込める、集客が見込めれば何度も上演する、またはいろいろな劇場(団体)が上演する、という構図になると考えます
人気のあるオペラって何でしょう?
綺羅星のごとくたくさんのオペラがありますが、どんなオペラが人気があるのでしょうか?ここで、音楽之友社発行の2021年4月号の「音楽の友」という雑誌にあった、あなたが選ぶ「クラシック音楽ベストテン」の中の、「あなたが好きなオペラは?」のトップ10を挙げてみましょう。音楽之友社さんのご厚意で、当ブログに引用させていただきました。

Q.3 あなたが好きなオペラトップ10は?

好きなオペラトップ10
ドイツ オペラ上演数トップ10
先生は「好きなオペラ」には、2つの条件があると思っています。1つはわかりやすい音楽、もう1つは最後感動の涙を流す、この2つです。ベスト10でわかりにくい音楽はありません。
上演数と好きなオペラ、それぞれのトップ10ですが、「カルメン」「魔笛」「椿姫」「蝶々夫人」「フィガロの結婚」「トゥーランドット」6作品がどちらにも含まれています。好きに含まれていた「トスカ」「ラ・ボエーム」10位台前半にランクされています。
好きな作品には入っているけれど、でもあまり上演されないのが、「アイーダ」「ばらの騎士」です。先生の推測ですが、「アイーダ」は、舞台装置や衣装に相当のお金がかかるので上演が少ない、「ばらの騎士」は、聴くにはとても美しい音楽だけれど、演奏はとっても難しいので上演が少ない、と思っています。でも、ご安心ください。新国立劇場では、2022年4月に「ばらの騎士」の上演が、2023年4月に「アイーダ」の上演がありますよ。