新国立劇場「オルフェオとエウリディーチェ」

【ふじやまのぼる先生のオペラ雑感(4)】
 先生が観に行ったオペラの雑感を綴っています。

新国立劇場オペラ
グルック作曲「オルフェオとエウリディーチェ」

2022年5月22日(日曜日)14時開演
新国立劇場 オペラパレス
オルフェオとエウリディーチェ表紙
オルフェオとエウリディーチェ配役表
モーツァルト以前のオペラは、日本ではなかなか上演される機会が多くありませんでした。以前のブログでご紹介したように、「上演回数の多いオペラ」「好きなオペラ」には、決して入ってきません。しかし、東京二期会でもヘンデルのオペラが数年おきに上演されています。新国立劇場でも「バロック・オペラ・シリーズ」と銘打って、2020年に第1弾として、ヘンデルの「ジュリオ・チェーザレ」を上演予定でしたが、コロナ禍のため上演中止となってしまいました。今回の「オルフェオとエウリディーチェ」は、「バロック・オペラ・シリーズ」第2弾として計画されていましたが、奇しくもその最初の作品として、上演されました。
舞台背景は、いたってシンプル。現世と楽園の場面では、ステージに円盤状の台が設えられ、円板に当てられる照明を変化させて、場面や心情を表していました。第2幕の地獄の亡者たちのいる場面は、ステージ左右に合唱を配置し、いわゆる「コロス」的役割を与えていました。ステージ奥には岩山を模した造形物(回転させると、プログラムにもあるような百合の花になる)を配し、そこからの出入りも可能にしていました。簡素な舞台ながら、照明の当て方で、こうもいろいろな表現ができるのだと、とても感動しました。
指揮は鈴木優人さん。オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。そこに、ツィンクシャリュモーといった古楽器の管楽器が加わっていました。配役表に、担当された奏者のお名前が書かれていますね。これらには、少なからず不満があります。モダン楽器の中に古楽器が入るという現象が起きているわけですが、楽器変遷の中でこのような事象は起こりうることだと思います。しかし、融合するわけでもなく、ピッチの安定しているモダン楽器とピッチの不安定な古楽器がケンカしているような印象を受けました。先生は4階の席でしたので、オーケストラピットがよく見えず、最初は小編成による演奏だと思っていました。しかしよく見ると、そんなに小編成でもない。古楽器の奏法を取り入れての演奏だったとはいえ、なんとも枯れた音色に聞こえました。
今回の上演は、「ウィーン版を基本にしつつ、パリ版も取り入れる」ということでした。楽園に至る序奏は効果的でしたが、それ以上の違いは感じられませんでした。それにも増しての違和感は、地上に連れ戻ってからの喜びの舞曲が、第1幕と第2幕との間や、第3幕の開幕前に演奏されていたこと。なんとも時間軸をぶった切った上演で、少なからず首をひねりました。
この上演のウリの1つであるダンス。効果的に舞い踊られていましたが、歌手が歌っているときに後ろで人が動き回るのは、気が散ってしまって仕方ありません。素晴らしいダンスだっただけに、歌手との融合が今一つ図られていなかったのが残念でした。
ユリのイラスト
オルフェオとエウリディーチェを歌った歌手は、本当に素晴らしい。特にオルフェオを歌ったローレンズ・ザッゾは見事の一言。唯一の日本人だった三宅理恵さん。2021年の、素晴らしい「ナイチンゲール」を聞かせたような歌唱を望みます。
2022年10月には、延期されていた第1弾である「ジュリオ・チェーザレ」の上演が2年越しで行われるとのこと。お楽しみに!