NISSEY OPERA 2022 「セビリアの理髪師」

【ふじやまのぼる先生のオペラ雑感(5)】
 先生が観に行ったオペラの雑感を綴っています。

NISSEY OPERA 2022
オペラ「セビリアの理髪師」
 

2022年6月12日(日曜日)14時開演
日生劇場
「セビリアの理髪師」プログラム表紙
セビリアの理髪師配役表
セビリアは、スペイン・アンダルシア州の州都でセビリア県の県都でもあります。外国語の日本語での表記はとても難しく、スペイン観光公式サイトの表記は「セビージャ」、その他に「セビリャ」、「セビーリャ」などの表記が見られます。先生はいつもは「セビリャ」と表記していますが、ここでは、今回の公演名を踏襲し、「セビリア」で綴ります。
さて、ロッシーニの最大のヒット作である「セビリアの理髪師」。日本でも100年も前から上演され続けてきました。フィガロの登場の「フィガロ、フィガロ、フィガロ…」とまくしたてるアリアは、先生が子どもの頃よく放送していた「トムとジェリー」というアニメーションで初めて聴いた記憶があります。その頃は、これが有名なオペラのアリアなんて知らず、ただただ笑い転げていました。そのくらい洋の東西を問わず、みんなが知っていたということになりますね。
この公演は、日生劇場が行っている「NISSEY OPERA」で上演されたもので、このプロダクションは2016年に初演されました。プログラムの一番上にあるように、「NISSEY OPERA」として一般に公演する他、「ニッセイ名作シリーズ」として、小中高生向けに公演を行います。子どものころから、こういった公演を鑑賞できる環境があるのは素晴らしいことだと思います。日生劇場で6公演、びわ湖ホール(滋賀県大津市)で1公演、フェリーチェ堺(大阪府堺市)で1公演の合計8公演で、子どもたちが楽しみます。
本来であれば、この公演は2020年に行われるはずでしたが、コロナ禍により延期され、二年越しで上演にこぎつけることができました。上演の質は総じて高く、先生も楽しむことができました。
何と言っても、小堀勇介さんのアルマヴィーヴァ伯爵は素晴らしい。しなやかな高音。見事なコロラトゥーラ。適当な喩えかどうかわかりませんが、柳の木でしょうか。柳は根がしっかり張っていて、葉や幹はしなやかに風を受け流す。基礎(根)がしっかりできているので、どんな音(雨風)にも対応できる。高音でぽっきり折れてしまうテノールでは困るのです。この点、小堀さんはどんな楽譜にも対応できる。これからの活躍が楽しみな歌手です。
小堀勇介
小堀 勇介
(第7回コンクール・三浦環特別賞)
黒田祐(正式には示へんに右)貴さんのフィガロ。フィガロは得な役です。こんなことを言ったら怒られてしまうかもしれませんが、アルマヴィーヴァやロジーナほど、音符上では難しいことはないのです。「私は街の何でも屋」は、ちょっとくらい下手(ごめんなさい)でも、拍手喝采。でも、黒田さんは、素晴らしかった。演技もコミカルで、こなれている感じでした。お父さんもバリトンなので、いろいろと言われることも多いかもしれませんが、それに負けずに活躍してほしいと思います。
オーケストラは沼尻竜典さん指揮する東京交響楽団。東京交響楽団は、音楽監督のジョナサン・ノットの薫陶を受け、コンサートでは本当に素晴らしい演奏を披露します。ピットに入ると「えっ、大丈夫?」ということがなきにしもあらず。もちろん高水準の中での話です。暗くて狭いピットの中なので、思うような演奏ができないかもしれませんが、コンサート並みの優れた演奏を期待します。
ロッシーニは、早口で多くの言葉を歌う場面がしばしば見られます。これも人によって早い遅いの感覚が違うので、あくまで先生の感想ですが、もう少しアップテンポのほうがよい場面も見られました。
演出は、日生劇場芸術参与の粟國淳さん。粟国さんは、2000年に新国立劇場でも「セビリアの理髪師」を演出されていました。今回は盆を使った舞台装置。盆が回っていろいろな表情を作り出していました。ちょっと想像力が必要な舞台でしたが、分かりにくいというものではありません。工夫を凝らした演出で、楽しめました。これなら児童・生徒も楽しむことができるでしょう。
小堀さんのロッシーニは、2022年8月に、大阪で聴くことができます。延期されていた「泥棒かささぎ」です。このオペラ、序曲は有名なのですが、全曲演奏は超超まれ。前回は2008年の藤原歌劇団による上演で、今回関西初演というか、東京以外で初上演ではないでしょうか。聴き逃すと次はいつ聴けるか。これは行くしかない!先生も行くつもりでおります。またレポートいたします。お楽しみに!