ステージ衣装 あれこれ

【ふじやまのぼる先生のオペラ講座(36)】
クラシックのコンサートに行くと、出演者のみなさんの衣装にも目が行きますね。
男性はほとんどが黒一色ですが、少しずつ違いがあります。女性に至っては百花繚乱!ステージに現れただけで、「うぁーっ!」とため息にも似た歓声が聞かれることも。

1.男性

男性は、本当に黒が多いですね。でもコンサートの開催される時間によって、微妙に違うのです。

夕方から夜のコンサート

これは、ほとんどが燕尾服と呼ばれるもの。いわゆる「つばめ」のしっぽ状の裾がついているジャケットを着ます。男性の正式な夜の礼服です。椅子に座るとき、「しっぽ」を踏まないようさっと払う仕草に憧れたものです。おしゃれな方は、裏地を赤にしているのも見たことがあります。蝶ネクタイは白です。

昼間のコンサート

夜に対し、昼間のコンサートでは、燕尾服を着る決まりはありません(着ている場合もあります)。燕尾服の略装でもある、タキシード黒のジャケットを着ることが多いですね。蝶ネクタイは黒です。

その他

堅苦しくないコンサートの場合は、出演者の好みや他の出演者とのバランスを考えた上で、衣装を楽しんでいる人が多いと思います。
第8回受賞者
この写真は、第8回静岡国際オペラコンクール本選に出場した六名です。なんと全員男声!黒光りしていた記憶があります。それだけこの回は、男声が優秀だったということでしょう。ちなみに上記の写真、向かって右三人は黒ジャケットに黒蝶ネクタイ、左三人は燕尾服でした。これも本当に偶然なのですが、コンクールの1位から3位に入った三人が全員黒ジャケットだったのです!すなわち右三人。

2.女性

男性が燕尾服であるから女性はイブニングドレス、ということは無いようです。女性は本当に色とりどり。楽器や演奏スタイルにもよりますが、スカートも広がりのないものから、直径5メートルはあろうかという広がりを持ったドレスまで様々。特に歌手は、センスの見せ所なのでしょうか、文字通り百花繚乱。男性のように昼間か夜かといった時間にはあまり左右されないようですが、多少夜の方が、派手さアップに先生は感じています。

3.色について

エピソード その1

先生が携わった声楽のコンサート。ピアノ伴奏で男女の歌手が出演されました。この時、伴奏をしてくださったピアニストの方がこんな質問をされました。「当日の女声歌手の衣装は何色?どんな形状?」と。有能なピアニストは、相手よりも目立たないという配慮がありました。そこらへんは、伴奏か、独奏かの違いもあるかと思いますが、心遣いを感じた一コマでした。

エピソード その2

第8回コンクール時、先生はフランス人審査委員のフランソワーズ・ポレ先生のそばにいました。そしてある出場者が出てきたとき、先生が唸ったのです。何事かと思い、様子をうかがうと、「私はあの色のドレスは絶対に着ない」と言うのです。この場で具体的に何色かは言いませんが、なんでもかのモリエール(1622-1673)が、病を押して出演した「病は気から」という舞台を終えて帰宅後すぐに吐血して亡くなったそうです。その舞台で来ていた服がその色だったとか。また、その色を布地にきれいに染めるには砒素が使われるのも使用されない理由の1つと言われています。その衣装を着ているうちに、中毒にかかり亡くなった人がいたとか。そんなお話をポレ先生はしてくださいました。主にフランスでそのジンクスは根強いようです。また、国によって禁忌の色は様々あり、出演を断る歌手もいるとかいないとか。
いろいろな色のドレスのイラスト