クリスマスっていつ?

【ふじやまのぼる先生のオペラ講座(40)】
日本人ほど無頓着に色々なイベントを取り入れる国民を先生は知りません。ここ10年くらいで大盛り上がりとなった「ハロウィーン」。ちゃんとした由来があると思うのですが、日本ではただ仮装がメインのイベントと化しています。ハロウィーンが終わった直後、街はクリスマス一色に彩られます。クリスマスが終わったら年末年始モードになり、箱根駅伝が済むと、街には「恵方巻」ののぼりが立つ。「それが日本」と言われたら、それまでなんですが。
クリスマスツリーのイラスト
クリスマスについては、先生はキリスト教徒ではないので、正確な説明ができませんが、こんな感じかと考えています。
12月24日4週間前日曜日、2022年では11月27日から、「アドヴェント」と呼ばれる時期を迎えます。日本語では待降節(たいこうせつ)などと呼ばれ、クリスマスの準備を始め、気持ちも盛り上がりを見せる時期です。先生の家でも(先生のうちは仏教ですが)この日にクリスマスツリーリースを飾ったり、サンタクロースをぶら下げたりします。
この、2022年11月27日を、「待降節第一主日(主日=日曜日)」12月4日「待降節第二主日」12月11日「待降節第三主日」12月18日「待降節第四主日」と呼び、徐々にクリスマス本番へと向かいます。この、アドヴェントの時期の楽しみとしては、「アドヴェント・カレンダー」があります。要は12月のカレンダーの一種なのですが、1~24(または25)の数字が書かれた窓を、毎日一つずつ開けていくカレンダーで、中にお菓子などが入っている場合もあります。子どもたちはこれを毎日開けるのが楽しみで、指折りクリスマスが近づくのを待ちわびます。ウィーンのフォルクスオーパーのウェブサイトのトップ画像が、アドヴェント・カレンダーを模したものになっていました。クリックすると、お楽しみが!
フォルクスオーパー・ウェブサイトトップ
12月25日はイエス・キリストが生まれた日とされ、この日を「降誕日」と呼びます。この日の前後を「降誕節」と呼び、その期間は12月24日の日没後から1月6日までとされています。「クリスマス・イヴ」は12月24日と認識している方が多いと思いますが、本来は12月24日の日没後から真夜中までを指します。
日本では、12月26日にもなるとクリスマスツリーは撤去され、門松が出現しますが、本来のクリスマスはまだ続きます。12月26日は、ウィーンの守護聖人でもある聖シュテファンの日、イギリスなどでは「ボクシング・デー」といってプレゼントを贈る日です。あっ、格闘技の「ボクシング」とは関係ありません。「ボックス」で贈るプレゼントからきているようです。
1月1日は新年なのですが、イエス・キリストが命名された日1月6日「エピファニー」と呼ばれ、日本語では公現祭(こうげんせつ)といいます。東方の三博士イエス誕生(公に現れる=公現)を祝ってやって来た日とされています。この日までがクリスマスのシーズンとなります。最近では、新年の次の日曜日を「エピファニー」としている国もあります。さらにエピファニーの次の日曜日までを降誕節とするところもあります。
音楽と離れてしまいましたので、クリスマスシーズンに演奏される曲や、クリスマスが舞台設定されている曲についてご紹介します。

(1)クリスマス・オラトリオ(ヨハン・セバスチャン・バッハ)

まずはその名が付いた、ヨハン・セバスチャン・バッハ(1685-1750)が作曲した「クリスマス・オラトリオ」です。この曲は6つの部分からできていて、それぞれ演奏する日が決まっており、その日に初演されています。
 第1部 降誕節第一祝日用 (1734年12月25日)
 第2部 降誕節第二祝日用 (1734年12月26日)
 第3部 降誕節第三祝日用 (1734年12月27日)
 第4部 新年用 (1735年1月1日)
 第5部 新年後の第一日曜日(1735年1月2日)
 第6部 公現節(1735年1月6日)
現在演奏される場合、それぞれの部分は30分弱なので、一回の公演としては間が持ちません。そこで、第1部から第3部を年末に、第4部から第6部までを年始に演奏することが多いようです。
(2)クリスマス・オラトリオ(カミーユ・サン=サーンス)
バッハの曲に完全に隠れてしまっていますが、カミーユ・サン=サーンス(1835-1921)の「クリスマス・オラトリオ」も素敵な曲です。1858年に初演されたこの曲は、独唱、合唱、オルガン、ハープ、弦楽合奏のみの簡素なしつらえですが、40分を超す大曲です。しかし、バッハよりもおおらかな雰囲気の中で、イエスを迎える喜びを歌った曲です。
サン=サーンスCD
(3)ラ・ボエーム
ジャコモ・プッチーニ(1858-1924)が作曲し、1896年に初演されたオペラ「ラ・ボエーム」。世界各国で上演されている、とても人気の高いオペラです。第1幕と第2幕がクリスマス・イヴという設定なので、クリスマスシーズンに演奏されることがあります。第2幕のカルティエ・ラタンの雑踏は、何度観ても心躍る風景が展開されます。
ボエームCD
(4)ヘンゼルとグレーテル
エンゲルベルト・フンパーディンク(1854-1921)が作曲し、1893年に初演されたオペラ「ヘンゼルとグレーテル」(初演の指揮者は、リヒャルト・シュトラウスでした)。皆さんもよくご存じのグリム童話をもとにしたオペラです。お母さんに怒られて野いちごを摘みに行く場面があるのですが、それにもかかわらず、クリスマスの大定番。ウィーンのフォルクスオーパーは、12月24日に公演を行いませんが、前後の23日と25日には、必ずと言っていいほど「ヘンゼルとグレーテル」を上演します。場内の雰囲気もいつもとはがらりと変わって、子ども連れの家族で賑わいます。ちなみに物語は兄妹の話ですが、オペラも兄の作曲妹の台本でできています。
ヘンゼルとグレーテル
(5)ウェルテル
ジュール・マスネ(1842-1912)が作曲し、1892年に初演されたオペラ「ウェルテル」。こちらは第3幕と第4幕がクリスマス・イヴという設定。ちょっとクリスマスに観たいオペラではありませんね。子どもたちが楽しそうにクリスマスの歌を歌うのが聞こえる中、死んでいくウェルテル。壮絶な物語ですが、音楽は耽美。
ウェルテルCD
(6)くるみ割り人形
ピョートル・チャイコフスキー(1840-1893)が作曲し、1892年に初演されたバレエ「くるみ割り人形」。クリスマス・イヴに、くるみ割り人形を贈られた少女が、人形と共に夢の世界を旅するという物語です。オーケストラで演奏される組曲も有名で、「花のワルツ」は、いろいろな場面で耳にする音楽ですね。
他にもいろいろとありますね。ド定番の「クリスマスキャロル」も良いですが、皆さんもお気に入りのクリスマスの音楽を見つけてみてはいかがですか。