ボロディン作曲「イーゴリ公」 Князь Игорь vol.2

【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(38)】
初演:1890年11月4日(ユリウス暦10月23日)ペテルスブルク マリインスキー劇場

主な登場人物

登場人物一覧

あらすじ(つづき)

1185年 プティーヴル市とポロヴェツ人の陣営
第3幕 ポロヴェツ人の陣営
ポロヴェツ人は、ロシアの町々を次々と征服していく。「このままではロシアは滅びる」と心配するウラヂーミルや捕虜たちは、脱出しようと説得する。それを知ったコンチャコヴナは、「ウラヂーミルと一緒に逃げるから連れていって」と懇願し、彼にすがって離れない。仕方なくイーゴリ公は、オヴルールの用意した駿馬でウラヂーミルを残して脱出する。ポロヴェツ人たちが集まってきて、残ったウラヂーミルを殺せと息巻くが、その前に私を殺せと進み出るコンチャコヴナ。そこへコンチャックが現れ、「自分が捕虜だったらイーゴリ公と同じことをしただろう」と言い、二人の恋人たちを結婚させる。
駿馬のイラスト
第4幕 プティーヴル市の城壁 早朝
荒れ果てた城壁にヤロスラーヴナが立っている。鳥になって夫のもとへ行けたなら、とアリア「私は飛び回るかっこうのように」と歌う。農民たちも荒らされた祖国を愁いでいる。すると遠くから馬が駆けてくるのが見える。何と夫のイーゴリ公がオヴルールと共に帰ってきたのだ。イーゴリ公とヤロスラーヴナは固く抱きしめ合う。
ガリツキー公の手下が、捕虜になったイーゴリ公を馬鹿にする歌を歌っていると、何とイーゴリ公の姿が。彼らは罪を逃れるため一計を案じ、鐘を打ち鳴らしてイーゴリ公の帰還を皆に告げる。帰還を喜ぶ民衆の合唱のうちに幕となる。

自選役

このオペラからは、イーゴリ公が、静岡国際オペラコンクール第2次予選自選役リストに含まれています。
https://www.suac.ac.jp/opera/competition/application/guidelines/list/

参考CD

指揮:ワレリー・ゲルギエフ
イーゴリ公:ミハイール・キット
ヤロスラーヴナ:ガリーナ・ゴルチャコーワ 他(1993年録音)
国内では、なかなか上演されるオペラではありません。海外でも、ロシア以外ではそうそうめぐり会う機会はないと思います。これまでの国内上演も、ロシアやその周辺の国からの外来オペラ公演がほとんどです。今話題のウクライナ、オデーサの歌劇場の上演もあったようです。先生は残念ながら「イーゴリ公」の上演を観たことがありません。
プーチンとの仲良し小好しさから、現在ロシアとその友好国以外では、完全に締め出された感のある指揮者ゲルギエフ。彼は、キーロフ歌劇場を世界レベルに引き上げたことで知られていました。教育活動にも熱心で、札幌で行われているPMFにも、芸術監督として携わっていました。キーロフから世界的に飛躍した歌手も大勢います。先生は、コンチャコヴナを歌うメゾソプラノのオリガ・ボロディナの声が好きです。また、学術的な観点にもこだわる指揮者で、このCDでは、プロローブの後、第2幕が演奏され、その後第1幕、第3幕…と続きます。確かに、その方が自然かもしれませんね。
キーロフ歌劇場は、その名前の由来が暗殺されたセルゲイ・キーロフ(1886-1934)という政治家の名前を冠して、1935年に改称されたものでした。その後ソ連の解体後、1860年の開場当時に付けられた「マリインスキー」という名前に戻され、現在は、マリインスキー歌劇場として知られています。「マリインスキー」とは、「マリアの」という意味で、当時のロシア皇帝アレクサンドル2世(1818-1881[在位:1855-1881])の皇后マリア・アレクサンドロヴナ(1824-1880)にちなんでいます。
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