ヴェルディ作曲「ファルスタッフ」 Falstaff(歌詞:イタリア語) vol.1

【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(2)】
第2作目は、「ドン・カルロ」と同じくヴェルディのオペラ、「ファルスタッフ」を選びました。こちらも7月にコンクール入賞者の髙橋絵理さんが出演する公演があります。「ドン・カルロ」とは違って、楽しいオペラです。さて、どんな内容でしょうか。
初演:1893年2月9日 ミラノ・スカラ座

主な登場人物

ファルスタッフ登場人物

登場人物相関図

ファルスタッフ相関図

あらすじ

ヘンリー4世統治下(1399年から1413年) イギリス・ウィンザー
第1幕 第1場 ガーター亭
医師カイウスがサー・ジョン・ファルスタッフのもとに怒鳴り込んでくるが、すでに出来上がっているファルスタッフは、カイウスを適当にあしらい、丁重にお帰りいただく。そんなことよりファルスタッフは、アリーチェとメグという二人の人妻への恋に夢中。きっと自分のことが忘れられないはずだとうぬぼれる。彼は二人への恋文を用意し、手下の二人に託そうとするが、手下たちは、「そんな使い走りは名誉にかかわる」と断る。ファルスタッフは、仕方なく恋文を小姓に持って行かせることにし、手下には「何が名誉だ」と怒り狂い、彼らを追い出す。
第1幕 第2場 フォード家の庭先
ファルスタッフからの恋文を受け取ったアリーチェは、呆れて「この誘いに乗れば、私は騎士夫人に昇格する」と隣家のメグに見せる。そんなメグにも同様に恋文が届いていた。交換して読んでみると、宛名は違うものの、中身は一言一句同じ内容。アリーチェたちの友人のクイックリー夫人を交えて、ファルスタッフをやっつける計画を練る。
同じころ、ファルスタッフに追い出された二人の手下は、カイウスを伴ってアリーチェの夫フォードにファルスタッフの悪口を吹き込み、「お宅の奥さん、狙われていますよ」と密告。フォードは対策を練る。
夫人たち、紳士たちは、お互いのただならぬ雰囲気を察してか、けん制しあいながら密談を続ける。その合間を縫って、フォードの娘ナンネッタは、恋人のフェントンと、愛をささやき合う。
第2幕 第1場 ガーター亭
手下の二人はうその詫びを入れ、ファルスタッフのもとに戻ってくる。クイックリー夫人がファルスタッフを訪ね、アリーチェとメグがファルスタッフのことを憎からず思っていることを伝え、「フォード氏は二時から三時に外出する」と逢引をそそのかし帰る。ファルスタッフは喜び、「行け、老練なジョン」を歌う。その後フォンターナと名乗る紳士が訪れる。彼は、「アリーチェに振り向いてもらいたい」と訴える。フォンターナが持ってきた大瓶のキプロスワインと大金に釣られたファルスタッフは、アリーチェの旦那が留守の隙に逢引に出かける手はずになっていると告げ、着替えのために退席する。フォンターナ氏は実はフォードで、アリア「夢か現か」を歌い、妻が浮気をするのかと訝る。仰々しく飾り立てて戻ってきたファルスタッフとともに家を出るフォード。
第2幕 第2場 フォード家の客間
アリーチェのもとを訪れたファルスタッフ。アリア「私が昔ノーフォーク公爵の小姓だった時」を歌い、思い切り愛をささやく。まさにアリーチェを抱きしめようとしたときメグが現れ、フォードが帰ってきたと大騒ぎ。ファルスタッフは大きな洗濯籠の中へ隠れる。フォードは手下を連れファルスタッフを探すが見つからない。見つかったのは、ナンネッタとフェントンが隠れてキスする現場。そのころアリーチェは召使に、洗濯籠の中身を、隣を流れるテムズ河に捨てさせる。ものすごい水しぶきがして、ファルスタッフは河の中。皆大笑いで幕となる。

ヴェルディと喜劇

「ファルスタッフ」はヴェルディ最後のオペラです。生涯に26作のオペラ(改作は除きます)を作曲していますが、「喜劇」はこの「ファルスタッフ」と、2番目に作曲された「一日だけの王様」の2つだけです。こちらは初演で失敗を喫してしまいました。駆け出しのころの失敗を恐れて、その後喜劇を避けていたのかもしれませんね。

二期会での上演

7月16日、17日、18日、19日の4日間、東京文化会館大ホールにて、「ファルスタッフ」の上演があります。この上演に、「アリーチェ」役で髙橋絵理さんが出演します。この公演は、ダブルキャストで行われます。髙橋さんは、16日と18日に出演されます。
髙橋さんは、第6回静岡国際オペラコンクールで、1位なしの第3位とオーディエンス賞に輝きました。昨年収録した「ふじのくにオペラweek」では、ヴェルディの2つの悲劇のアリアを歌ってくださり、インタビューでは髙橋さんの人となりがうかがえるお話をしてくださっています。「アリーチェ」は一転変わって喜劇のヒロイン。悪漢ファルスタッフをどんなふうに手玉に取るか、今から楽しみです。
「ふじのくにオペラweek」インタビュー・歌唱
https://www.youtube.com/watch?v=e77rhDg-sWU
最後の第3幕は、次回ご紹介いたしますね。