ヴェルディ作曲「ファルスタッフ」 Falstaff(歌詞:イタリア語) vol.2

【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(2)】

主な登場人物

ファルスタッフ登場人物

登場人物相関図

ファルスタッフ相関図

あらすじ(つづき)

第3幕 第1場 ガーター亭
ずぶぬれのファルスタッフは、ホットワインを飲みながらくだを巻いている。そこへクイックリー夫人がやってくる。怒り心頭のファルスタッフに対し、クイックリー夫人は平然と、「あなたをまだ愛しているので、真夜中のウィンザー公園のハーンの樫の木の下に、黒ずくめの狩人の格好で来てほしい」とのアリーチェからのメッセージを伝える。機嫌を直したファルスタッフは、クイックリー夫人を連れ店の中へと入っていく。この様子を物陰から見ていた一同は、ファルスタッフが計略に引っかかったことを喜ぶ。妻から事の次第を聞いたフォードは許しを請い、この計画に参加することにする。みな妖精に扮し、夜の大騒ぎの準備をする。フォードはこのどさくさに乗じてナンネッタとカイウスを結婚させる計画を練る。ナンネッタは「バラの冠、白いベールと長いドレス」という仮装なので、カイウスには「僧侶のマント」を着けていくよう念を押す。しかしその計略も夫人たちに見破られていた。
第3幕 第2場 ウィンザー公園
真夜中。フェントンが「唇から喜びの歌が」を歌う。夫人たちはナンネッタがするはずだった仮装をファルスタッフの手下にさせ、フォードの計画を打ち砕く準備をする。するとそこにファルスタッフが頭に大きな鹿の角を付けて現れると真夜中を告げる鐘が鳴る。彼のもとにアリーチェが現れ、ファルスタッフと愛を語らう。メグが「妖精たちがやってくる!」と叫ぶ声が舞台裏から聞こえてくる。アリーチェは逃げ去り、ファルスタッフは「妖精を見ると命がなくなる」という迷信を信じているので、地面にひれ伏す。するとたくさんの妖精が現れ、妖精の女王に扮したナンネッタが「夏の微風吹く上を」を歌い、他の妖精たちとファルスタッフを小突き回し、痛めつける。しかし一人の変装の仮面がはがれ、ファルスタッフはこのいたずらを見破る。怒り狂うファルスタッフ。まあまあとフォードが執り成し、仮装大会のフィナーレとして、このカップルの結婚をと切り出す。アリーチェも、もう一組の結婚をと切り出す。二組のカップルが仮装を解くと、医師カイウスはファルスタッフの手下と結婚させられる。もう一組のカップルはナンネッタとフェントンだった。逆にファルスタッフにやり込められるフォード。仕方なくフォードも2人の中を認め、ファルスタッフから始まる「この世は全て冗談だ」の掛け合いで幕を閉じる。

自選役

サー・ジョン・ファルスタッフが静岡国際オペラコンクールの第二次予選自選役リストに含まれています。

参考CD(1)

指揮:サー・ゲオルク・ショルティ
ファルスタッフ:サー・ジェレイント・エヴァンス ほか(1963年録音)

ショルティ(1912-1997)は、ロンドンの王立歌劇場やシカゴ交響楽団の監督を務めた人です。なかなか鋭角的な指揮をする人で、オペラ以外の作品の指揮でも有名でした。先生は若いカップルを歌うフレーニとクラウスを聴くためにこのCDを買いました。ショルティは、1993年にベルリン・フィルと再録音しています。


 

参考CD(2)

指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ファルスタッフ:ジュゼッペ・タッデイ ほか(1980年録音)

「ドン・カルロ」に引き続き、ここでも登場カラヤンです。このCDとほとんど同じメンバーでのザルツブルク音楽祭の公演がありました。カラヤンは公演と相前後してレコーディングを行い、会場に足を運ぶことのできない人にも自分の演奏を聴いてもらっていました。まあ、リハーサルの意味もあったかもしれませんね。映像収録もされていますので、DVD等でも視聴可能です。前回のドン・カルロもそうでしたが、この録音も望みうる最高のキャストを集めています。カラヤンは、1956年にも「ファルスタッフ」を録音していて、先生は古い方の録音もよく聴きます。こちらもドリームキャスト!


 

豆知識 「ファルスタッフ」の原作

このオペラはシェイクスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」を大元とし、「ヘンリー4世」からもエピソードがとられています。「ヘンリー4世」に登場するファルスタッフは、巨漢の大酒飲み、戦場には最後に登場する臆病者、でも時々深いい話をする憎めない人物として描かれていて、ファンも相当多かったようです。時のエリザベス女王もファルスタッフのことを大変気に入っていて、シェイクスピアにファルスタッフを主人公にした彼の恋物語を求めて生まれたのが、「ウィンザーの陽気な女房たち」だといわれています。この戯曲をオペラにした作曲家は多く、モーツァルト時代のウィーン宮廷作曲家アントニオ・サリエリ(1750-1825)の「ファルスタッフ」や、イギリスの作曲家ヴォーン=ウィリアムズ(1872-1958)の「恋するサー・ジョン」がありますが、やはり一番面白いのはヴェルディの作品でしょう。このヴェルディの「ファルスタッフ」と双璧をなすのは、オットー・ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」。この作品については、このブログで次回紹介いたしますので、お楽しみに!

サリエリの「ファルスタッフ」のCD