声部のはなし(3)~メゾソプラノ・バリトン~

【ふじやまのぼる先生のオペラ講座(10)】
今回は、男声女声ともに真ん中の話をします。

メゾソプラノ

メゾとは、「真ん中」とか「半分」という意味があります。サイズの「M」と同じですね。メゾソプラノは、主役ソプラノと張り合って、テノールを奪い合うライバル的な存在だったり、ソプラノに忠実に使える侍女だったりします。また、宝塚歌劇団のように、男性役を演じることもあります。
(1)リリコ
イタリアオペラで主役を張るメゾソプラノはそう多くない気がしますが、ロッシーニの「セビリャの理髪師」のロジーナや「チェネレントラ」のチェネレントラなどのように、主役メゾも存在します。また、モーツァルトの「フィガロの結婚」のケルビーノや、R.シュトラウスの「ばらの騎士」のオクタヴィアンのように男装(特に美少年)の役があり、「ズボン役」と呼ばれます。
(2)ドラマティコ
ビゼーの「カルメン」のカルメンや、サン=サーンスの「サムソンとデリラ」のデリラなど、フランスオペラの主役女声に多い気がします。また、ワーグナーの「ローエングリン」のオルトルートのように、完全に旦那を尻に敷いた女傑も存在します。

バリトン

木村俊光審査委員長の画像
木村 俊光<審査委員長>
(バリトン・日本)
バリトンは、テノールとバスの中間的な声部です。ギリシャ語が語源で、「低い音」という意味です。バスと同意で使われていましたが、混声四部以上の声部を持つ曲が作られるときに、テノールとバスの中間という現在の意味となりました。
役としては、テノールと張り合いソプラノを奪い合ったり、テノールと硬い友情で結ばれていたり。バラエティに富んだ役が多いような気がします。また年齢的にもテノールよりも年長で、感情的に一直線のテノールをなだめる知的な役が多いかもしれません。そういう性格の人がバリトンには向いているようです。オペラコンクールの審査委員長木村俊光先生も、ワーグナーやヴェルディの作品の、知性あふれる役柄を得意としていました。バリトンも役によっていくつかに分類されます。
(1)リリコ
抒情的なバリトンで、軽く明るい声質が特徴です。モーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」のグリエルモや、ドニゼッティの「ドン・パスクアーレ」のマラテスタなど。
(2)カヴァリエ・バリトン
カヴァリエ=騎士です。リリコよりも重い声質です。モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」のドン・ジョヴァンニ、ヴェルディの「ドン・カルロ」のロドリーゴなど。実際騎士役で出てくることも多いです。
(3)ドラマティコ
さらに悲劇性や劇的表現を求められます。ヴェルディの「オテロ」のイアーゴや、プッチーニの「トスカ」のスカルピアなど。
(4)ブッフォ
モーツァルトの「魔笛」のパパゲーノや、ロッシーニの「セビリャの理髪師」のフィガロなど。早口でたくさんのことばを歌うこともあります。
お待たせしました。次回はソプラノです。