ニコライ作曲「ウィンザーの陽気な女房たち」 Die lustigen Weiber von Windsor(歌詞:ドイツ語) vol.1

【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(3)】
初演:1849年3月9日 ベルリン 王立歌劇場

主な登場人物

ウィンザーの陽気な女房たち登場人物

登場人物相関図

ウィンザーの陽気な女房たち相関図

あらすじ

イギリス・ウィンザー 15世紀初め(楽譜の指定は17世紀初めとある)
第1幕 第1場 フルート邸とライヒ邸の間にある中庭
フルート夫人は、ファルスタッフから恋文をもらったことに憤っている。急いで隣人のライヒ夫人に見せに行くが、ライヒ夫人も恋文をもらったことに憤っている。お互い突き合わせてみると同一人物ファルスタッフからの同一内容の恋文だった。2人はあっと驚くような復讐を練るため、フルート夫人の家に入る。
入れ替わりにフルート氏、ライヒ氏、シュペルリヒ、フランス人の医師カーユスが現れる。フルート氏は皆を夕食に招くが、ライヒ氏とシュペルリヒは遠慮する。というものライヒ氏は娘アンナを金持ちのシュペルリヒと結婚させようと思っているので、夕食に招いていた。しかし、ライヒ夫人は医師カーユスをアンナと結婚させたがっている。そこにフェントンが現れ、ライヒ氏に話があると申し出る。ライヒ氏は、シュペルリヒに「婿どの、先に家に入っていて」と促すので、カーユスは今に見ていろと怒り狂い立ち去る。フェントンはライヒ氏に、アンナとの結婚の許しを求めるが、財産のない者はだめだと断られる。
第1幕 第2場 フルート邸の一室
フルート夫人は、楽しそうにアリア「急いでおいで、愉快ないたずら」を歌う。フルート夫人とライヒ夫人は、ファルスタッフをこらしめ、ついでにフルート氏の嫉妬深さもこらしめる計画を立てている。ライヒ夫人は、フルート氏に「奥さんが愛人と密会する」という手紙を出したことを報告する。準備万端整ったところにファルスタッフが登場し、さっそくフルート夫人を口説き始める。フルート夫人は、「ライヒ夫人のことも好きなんでしょう」と焼きもちを焼いているふりをする。ファルスタッフが懸命に言い訳をしているところにライヒ夫人がやってきて、フルート氏が大勢の男を連れて愛人探しに帰宅したことを知らせる。フルート夫人は、ファルスタッフを用意してあった洗濯籠の中に隠し、召使いに部屋から運び出させる。嫉妬深いフルート氏が家中探すが何も見つからない。フルート夫人は泣いて嘆き、離婚すると怒り出す。
第2幕 第1場 ガーター亭
翌日の朝。川の中に放り込まれたファルスタッフが怒っている。酒を給仕に頼むが、ツケを払ってくれないと出せないと言われるので、よけいに怒りだす。給仕は、仕方なく一杯だけと酒を出してやる。少し機嫌が良くなったファルスタッフのもとに、フルート夫人から、夫のいない時間を知らせる手紙が舞い込むので元気を取り戻す。ガーター亭には、ウィンザーの市民が猟に行く前に立ち寄る。市民たちがファルスタッフをからかうので、彼は酒代を賭けて酒の飲み比べを行い、陽気に「母に抱かれた赤ん坊のころから」を歌い、勝負に勝つ。そこにバッハ氏と名乗る男から、高級酒をファルスタッフに差し入れ、会って話をしたいとの伝言がある。ファルスタッフは喜んでバッハ氏なる人物に会うことにする。バッハ氏は金をちらつかせ、フルート夫人を口説きたいと訴える。ファルスタッフは、そんなことは朝飯前と昨日の出来事を話し、今日の逢引を話してしまう。実はバッハ氏は変装したフルート氏で、逢引の現場を押さえようと息巻き、2人揃って出掛けて行く。
第2幕 第2場 ライヒ氏の裏庭
アンナがいつも庭に出てくる時間になるので、まずシュペルリヒが、続いてカーユスが偶然を装ってアンナに会いにやってくるが、2人とも会う勇気がない。そこにフェントンが「聞け、ひばりが森で歌う」を歌い現れるので、2人とも隠れる。アンナはフェントンに、両親から結婚の許可を取ってとお願いし、愛の二重唱となる。最後に隠れた2人を含めた珍妙な四重唱となり、アンナとフェントンは2人の仲睦まじさを見せつけ、隠れた2人をさんざん馬鹿にする。シュペルリヒとカーユスは、悔しさに歯ぎしりする。
第2幕 第3場 フルート邸の一室
フルート夫人とファルスタッフが逢引していると、フルート氏の帰宅を告げられるので、ファルスタッフは別室に隠れる。ちょうどそこへ洗濯籠を持った召使が現れるので、今度は逃がさないとフルート氏が洗濯物をぶちまけ、剣で洗濯籠を何度も突き刺すが手応えはない。そこに女中の叔母に変装したファルスタッフが現れる。フルート氏は彼女が大嫌いで出禁にさえしていたので、ファルスタッフとも気づかずに叩き追い出してしまう。その後、隣人たちも巻き込んだファルスタッフ大捜索が始まる。

豆知識 「3つのファルスタッフの違い」

サリエリの「ファルスタッフ」、ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」、ヴェルディの「ファルスタッフ」。基本的にファルスタッフを懲らしめるという筋で物語は進行しますが、いくつかの違いがあるのです。細かいものはたくさんありますが、今回は「どのエピソードを省いたか」をご紹介します。
1. ファルスタッフの手下
ファルスタッフの手下は原作では三人いて、ヴェルディには二人、サリエリには一人登場しますが、ニコライには出てきません。
2. ファルスタッフの女装
フォードの嫌いな老婦人。サリエリ、ニコライには、逢引に来たファルスタッフがこの老婦人に変装して逃げる場面がありますが、ヴェルディにはこの老婦人は出てきません。
3. 若いカップル
ニコライ、ヴェルディには、アンナ(ナンネッタ)とフェントンという若いカップルのエピソードが副次的に存在しますが、サリエリにはこの二人は登場しません。
4. クイックリー夫人
ヴェルディでの知恵者クイックリー夫人。彼女がオペラを動かしているといっても過言ではありません。しかし、サリエリ、ニコライには彼女の出番はありません。
台本作家や作曲家の価値観の違いか、または既存の作品との違いを出したいためか、原作からの引き算の答えは、上記のようになっています。
最後の第3幕は、次回ご紹介いたしますね。