オペラの種類(1)~はじめに~

【ふじやまのぼる先生のオペラ講座(12)】
テレビ番組でも、「恋愛ドラマ」や「時代劇」、「お笑い」、「ドキュメンタリー」など様々な種類がありますね。オペラも、いくつかの分類に分けられます。例をあげながらオペラの種類を説明していきたいと思います。まずはオペラが誕生してから、200年くらいまでの分類です。
「オペラ・セリア(Opera Seria)」
「セリア」とは、100円均一のお店ではなくて、「真面目な」という意味です。英語の「シリアス」と同じですね。「シリアスなオペラ」とでも言えましょうか。最初期のオペラ「ダフネ」や「エウリディーチェ」は、「オペラ・セリア」です。登場人物は、神さまや英雄、歴史上の人物、いわば昔のお話です。歌詞はイタリア語で、多くが3幕仕立て上演されます。
この当時のオペラには、「三一致(さんいっち)の法則」というのがありました。
(1)1日の出来事
(2)1つの場所
(3)1つの筋書き
というのものです。これがほとんどのオペラで守られています。例えば、「1幕はパリで、2幕は10年後のウィーン、子どもたちの代の話」というのはダメなのです。
作曲時期はおおむね18世紀より前がほとんどです。筋立ても複雑で、こんがらがった物語が、最終的に「どうなってしまうの!」と思った最後の瞬間、「神様のお告げ」だったり、「王様が慈悲の心で全て許す」など、「えーっ!」と言わせるような辻褄合わせがあります。最後の「オペラ・セリア」は、モーツァルトの「ティートの慈悲」と言われています。
 
「オペラ・セリア」は宮廷や貴族のためのオペラでした。ただ楽しむためのものではなく、不道徳な内容でも最後は「モラル」について考えさせる高徳な内容を伴っていました。その後フランス革命を経て、宮廷や貴族の衰退とともに、「オペラ・セリア」も需要を失っていったと考えられます。

代表的なオペラ・セリア


モンテヴェルディ 「オルフェオ」「ポッペーアの戴冠」など
グルック     「オルフェオとエウリディーチェ」など
モーツァルト   「イドメネオ」など
「オペラ・ブッファ(Opera Buffa)」
「ブッファ」とは、「滑稽な」という意味があります。簡単に言うと「喜劇」です。「オペラ・セリア」よりも後の時代に現れました。登場人物は、普通の人たち中心。まさに今起こっていることを扱います。喜劇的な役割を与えられたバスが物語を動かします。歌詞はイタリア語、2幕仕立てで、「三一致の法則」は守られます。
作品の時期としては、18世紀から19世紀前半に書かれました。ドニゼッティの「ドン・パスクアーレ」が最後の「オペラ・ブッファ」と呼ばれることもあります。規模の小さい1幕仕立てのものは「ファルサ(笑劇)」と呼ばれます。

代表的な「オペラ・ブッファ」


モーツァルト 「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コジ・ファン・トゥッテ」など
ロッシーニ    「セビリャの理髪師」「チェネレントラ(シンデレラ)」など
ドニゼッティ 「愛の妙薬」など

豆知識 「ロレンツォ・ダ・ポンテ」

ロレンツォ・ダ・ポンテ
ロレンツォ・ダ・ポンテ
ロレンツォ・ダ・ポンテ(1749-1838[本名:エマヌエーレ・コネリアーノ])は、とても有名な台本作家で、生涯に36作の台本を書いたといわれています。ヴェネツィアからウィーンに現れた彼は、サリエリの推薦により、皇帝ヨーゼフ2世のもとで、ウィーンの宮廷詩人となり、非常に活躍しました。中でもモーツァルトのために書いた「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コジ・ファン・トゥッテ」の3つは、「ダ・ポンテ3部作」と呼ばれ、ダ・ポンテの名を永遠のものにしました。しかし、ヨーゼフ2世の死後、宮廷内でのいざこざからロンドンへ逃れ、その後アメリカへと移住しています。印刷業を行ったり、興行師のようなことを行ったりしました。名前は残りましたが、決して褒められたような人物ではなかったようです。