モーツァルト作曲「魔笛」 Die Zauberflöte(歌詞:ドイツ語)vol.1

【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(6)】
モーツァルトが最後に発表した、自分の母国語のオペラ。
初演:1791年9月30日 ウィーン アウフ・デア・ヴィーデン劇場

主な登場人物

登場人物一覧

登場人物相関図

登場人物相関図

あらすじ

第1幕
メルヘンの世界。王子タミーノは、大蛇に追われ気を失う。そこへ夜の女王の侍女たちが現れ、大蛇を退治する。侍女たちは、助けたタミーノのイケメンぶりに目を奪われ、夜の女王へ報告に行く。そのあと鳥を採ってそれを売って生活しているパパゲーノが現れ、アリア「おいらは鳥刺し」を歌う。目覚めたタミーノは、大蛇が退治されていることとパパゲーノの出現に気付く。パパゲーノは、大蛇を退治したのは自分だと嘘をつく。そこへ再び侍女たちが現れ、タミーノには夜の女王の娘パミーナの肖像画を、嘘つきパパゲーノには口を封じる鍵が渡される。タミーノはその絵の美しさに、アリア「なんと美しい絵姿」を歌う。すると雷鳴とともに夜の女王が現れ、アリア「ああ、恐れおののかなくても良いのです、わが子よ」で、娘がザラストロにさらわれてしまったと悲しみを歌い、助け出すことができたら、娘を授けると約束する。救出を決意したタミーノは、女王から魔法の笛を授けられ、同じく銀の鈴を授けられた鳥刺しパパゲーノを従え救出に向かう。
ザラストロの宮殿に着いたパパゲーノは、真っ黒なモノスタトスに出会いびっくり仰天。モノスタトスは、全身鳥の羽根で覆われたパパゲーノを見てびっくり仰天。二人とも逃げ去る。パパゲーノは「黒い鳥もいるから、黒い人間がいても不思議じゃないなあ」と戻ってくる。そこに肖像画通りのパミーナを発見した彼はパミーナの信頼を得て、二重唱「恋を知る殿方には」で愛の喜びを歌う。
もう一方のタミーノも、三人の童子に導かれザラストロの神殿にたどり着き、悪者は夜の女王であることを聞かされる。また見えざる声にパミーナは無事であると告げられる。パパゲーノと脱出を試みたパミーナだったが、モノスタトスに捕まりザラストロの前に引き出される。ようやく出会ったタミーノとパミーナであったが、タミーノはパパゲーノとともに、ザラストロから与えられた試練を受けることになる。

豆知識 「『でっかいちっちゃい夢』ではなく
     『たっかい(高い)ひっくい(低い)オペラ』」


「でっかいちっちゃい夢」は「アルプス一万尺」という歌の歌詞ですが、「魔笛」は「たっかい(高い)ひっくい(低い)オペラ」と言うことができます。夜の女王によって歌われる2つのアリアは、超高音連発の高難易度のアリアとして知られています。ポンポン音が飛び、最終的には高いファの音が出てきます。逆にザラストロのアリアは超低音。こちらは低いファの音が出てきます。その差は4オクターヴ。一緒に歌うことはありませんが、二人のキャラクターの対比が面白いです。
夜の女王の最高音(ピンクの部分の音符です)
アリア「地獄の復讐が私の心の中に煮えかえっている」から
夜の女王の最高音
ザラストロの最低音(ピンクの部分の音符です)
アリア「この聖なる殿堂では」から
ザラストロの最低音
(2つとも、Petersのヴォーカルスコアより)
この2曲、セリフを挟んで続けて歌われます。まさに最高音から最低音への対比の妙。

「魔笛」の今後の上演案内

(1)二期会での上演
9月に東京文化会館にて、宮本亞門氏の演出による二期会の上演があります。これは、オーストリアのリンツ州立劇場との共同制作で、まずリンツで発表された後、2015年に東京でも公演があったので、ご覧になった方も多いのでは。今回の公演は、キャストを一新しての再演になります。東京での公演後、全国3都市での公演もありますので、お近くの方は足を運んでみてはいかかでしょうか。
2021年9月8日、9日、11日、12日(東京都台東区)
二期会「魔笛」ホームページ
http://www.nikikai.net/lineup/diezauberflote2021/index.html
 
2021年10月9日(山形市)、10月14日(高崎市)、11月6日(札幌市)
二期会「魔笛」全国公演ホームページ
http://www.nikikai.net/lineup/diezauberflote_caravan/index.html
(2)名古屋二期会での上演
名古屋二期会創立50周年を記念しての上演があります。「魔笛」はジングシュピールなので、歌とセリフがありますね。この上演では、歌はドイツ語で、セリフは日本語での上演です。
2021年10月23日、24日
日本特殊陶業市民会館フォレストホール(名古屋市中区)
名古屋二期会「魔笛」ホームページ
https://nagoya-nikikai.jp/2021年2月13日saikai-再会・再開-vol-1-2-3-2/
(3)新国立劇場での上演
ちょっと先の話ですが、令和4年4月に新国立劇場で上演があります。こちらは、フランス・エクサンプロヴァンス音楽祭、ルーアン歌劇場、ベルギー・モネ劇場の共同制作を新国立劇場でも上演しようというもの。2018年に初めて新国立劇場で上演されたものの再演です。
2022年4月16日、18日、20日、23日、24日(東京都渋谷区)
新国立劇場「魔笛」ホームページ
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/die-zauberflote/
2幕は次回ご紹介いたします。お楽しみに!