ロッシーニ作曲「チェネレントラ(シンデレラ)」 La Cenerentola Vol.1

【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(9)】
初演:1817年1月25日 ローマ、ヴァッレ劇場

主な登場人物

登場人物一覧

登場人物相関図

登場人物相関図

あらすじ

18世紀 イタリアのモンテ・フィアスコーネ
第1幕 第1場 ドン・マニフィコの邸宅​
アンジェリーナ(チェネレントラ)はボロを着せられ、血のつながらない、わがままな二人の姉にこき使われている。彼女は家事の傍らアリア「昔一人の王様がいました」を歌うが、「またその歌!」と姉たちに小言を言われる。
そこに乞食が物乞いに来る。姉たちは汚いものを見るように、乞食を追い払う。かわいそうに思ったチェネレントラは、こっそりパンとコーヒーを与える。乞食はチェネレントラに「きっと良いことがありますよ」と言い残し去る。
そこへ王子ドン・ラミーロの使者が現れ、「王子が花嫁を探しているので、娘たちを宮殿に招待する」と伝える。姉たちはこのことを父親に知らせに行く。父ドン・マニフィコは、良い夢を見ていたのに娘たちに邪魔されたので、アリア「わが娘たち」を歌い文句を言うが、娘が王子と結婚できるかもしれないと聞かされ、大騒ぎでチェネレントラに準備させる。
全員が退場したあとで、自分で結婚相手を見つけるため従者に化けた王子ドン・ラミーロが登場し、出てきたチェネレントラと出会う。互いに一目で恋に落ちた二人。
今度は王子に化けたダンディーニが家来たちを従えて登場。アリア「4月の蜂蜜のごとく」を歌う。皆は偽王子の気を引こうとするが、チェネレントラは偽従者に思いを寄せている。
姉二人が城に出発した後、哲学者アリドーロに「二人しか城に行かない」ことを問われた父親は、三人目は死んだと答える。実は先ほどの乞食はこのアリドーロ。彼は、一人取り残されたチェネレントラのもとへまた乞食の姿で現れ、アリア「天の神秘の深みにある」を歌い、チェネレントラを馬車に乗せ、城へ向かわせる。
第1幕 第2場 ドン・ラミーロの城の一室
城ではドン・マニフィコがおだてられ、酒蔵の番人を拝命する。二人の姉は、偽王子相手に、どちらが王妃になるか言い争っている。
第1幕 第3場 場内の大広間
酒蔵の番人は、アリア「酒きき、酒蔵番」を歌う。偽王子を奪い合う二人の姉。偽王子は「一人としか結婚できない、もう一人は従者と結婚したら」と言う。姉たちは高飛車に、「従者なんてとんでもない、あんな平民の心を持ったつまらぬ顔の男なんて」と偽従者の悪口をさんざん言って怒り出す。偽王子と偽従者は大笑い。
そこに新たな来客の到来が告げられる。それは着飾ったチェネレントラだった。姉たちは「チェネレントラに似ているが、そんなはずはない」と一同大騒ぎ。

豆知識「シンデレラのお話」

チェネレントラはイタリア語ですが、英語ではシンデレラ(Cinderella)です。ドイツ語では「アッシェンプッテル(Aschenputtel)」、ロシア語では「ゾールシカ(Золушкa)」、チェコ語では「ポペルカ(Popelka)」。それぞれオペラやバレエなどの題材になっています。

シンデレラってどんな意味かご存じですか?「灰かぶり」という意味なんです。暖炉のそばで、灰にまみれてこき使われていたので、こんなあだ名になってしまったんですね。「アンジェリーナ」というちゃんとした名前があるのに。
フランスの詩人シャルル・ペロー(1628-1703)の童話で皆さんよくご存じの「シンデレラ」の物語。手掛かりは「ガラスの靴」でしたね。「シンデレラ」の話は、ペローのオリジナルではなく、様々な土地に同じような物語が存在しました。
ロッシーニと台本作者のヤコポ・フェッレッティ(1784-1852)の二人は、劇場の機能的な構造をよく知っていたので、カボチャの馬車やネズミの御者など、幻想的な魔法の世界は登場させていません。
オックスフォードの「オペラ大辞典」によると、「シンデレラ」を題材としたオペラは23作品挙げられています。ロッシーニ以外では、フランスの作曲家ジュール・マスネ(1842-1912)の「サンドリヨン(Cenderillon)」が有名です。こちらはペローの童話の筋書きによっています。ガラスの靴も登場しますよ。音源もあるので、興味のある方はぜひお聴きくださいね。
サンドリヨンCD
サンドリヨンCD

「チェレントラ」の今後の上演案内

新国立劇場での上演
2021年10月1日、3日、6日、9日、11日、13日(東京都渋谷区)
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/lacenerentola/