リヒャルト・ワーグナー作曲「ローエングリン」 Lohengrin(歌詞:ドイツ語) Vol.2

【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(17)】
初演:1850年8月28日 ワイマール 宮廷劇場

主な登場人物

登場人物一覧

登場人物相関図

登場人物相関図

あらすじ1(つづき)

10世紀前半 アントワープ
第3幕 颯爽とした導入曲(前奏曲とも言われる)が奏される。
第3幕 第1場 エルザと騎士の寝室
婚礼の日の夜。侍女たちが有名な「結婚行進曲」として知られる厳かな婚礼の合唱を歌い去ってゆく。
第3幕 第2場
寝室で二人きりになり、愛の陶酔に浸っているが、エルザはだんだん不安に駆られ、騎士の名前を呼べないことや、白鳥の小舟がやってきて連れ帰ってしまうという妄想にかられ、とうとう「してはいけない質問」してしまう。
そのときテルラムントと四人の貴族が武器を手に現れる。騎士は一刀のもとにテルラムントを倒し、四人の貴族にテルラムントの死体を王の裁きの場に運ぶよう命じる。騎士はエルザに、明朝国王たちの前で名を明かそうと告げる。
第3幕 第3場 シュルデ河のほとり
遠征を前にして国王の前に勇士たちが集まってくる。皆が集まったところにテルラムントの死体が運ばれてくる。
驚く一同の前に騎士が現れ、テルラムントに急襲されたことやエルザが禁を破って素性を訪ねたことを告げる。そして静かに「遥かなる遠い国に」を歌いだし、「名はローエングリン、聖杯王パルジファルの子、聖杯に仕える騎士」と明かす。
人々は感動し、エルザはここにとどまることを願うが、正体を知られたのでこの地を去ることを告げる。
すると白鳥が小舟を引いて到着し、騎士は「わが愛する白鳥よ」を悲しげに歌う。そして、弟が帰ってきたら渡すようにと角笛と剣と指環をエルザに託し小舟に乗る。
白鳩のイラスト
勝ち誇ったオルトルートは、エルザに騎士を追い払ってくれたことを感謝し、あの白鳥こそ、私が妖術で姿を変えたゴットフリートだと言い放つ。それを聞いた騎士が静かに祈ると、上空に白鳩が現れる。騎士が白鳥の首にかかった鎖を取ると、白鳥は行方不明だったゴットフリートの姿に変わる
それを見たオルトルートは、その場に崩れ落ちる。ローエングリンは、白鳩に曳かれた小舟に乗って悲しそうに去り、エルザは悲しみのあまり、ゴットフリートの腕の中で倒れこむ。

「ローエングリン」の今後の上演案内

東京・春・音楽祭での上演
東京文化会館(東京都台東区)
2022年3月30日、4月2日
https://www.tokyo-harusai.com/program_info/2022_lohengrin/

豆知識「結婚行進曲」


第3幕への前奏曲が終わると、有名な「結婚行進曲」となります。「ターン、タータターン」の方です。みなさんはこのあらすじを読んでいただいたと思います。この結末を知ったあなたは、あなたの結婚式にこの曲を使いますか?
結婚のイラスト
もう1つ「結婚行進曲」あるじゃん、「パパパパーン」の方の。ああ、メンデルスゾーンですね。某結婚式情報のCMでも使われていた、シェークスピアの「夏の夜の夢」の音楽です。こっちもなかなか大変な物語なので、先生はお勧めしません。
じゃあ、何がいいか?「フィガロの結婚」序曲がいいかもしれませんね。

参考CD

参考CD(1)
指揮:ルドルフ・ケンペ
ローエングリン:ジェス・トーマス 他(1962,63年録音)
何よりもルドルフ・ケンペ(1910-1976)に率いられた、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の音が美しいこと!「ロマンティック・オペラ」と名付けられたこの作品に、このオーケストラほど似つかわしいものはありません。ローエングリンを歌うジェス・トーマス(1927-1993)は、アメリカのテノール。少し癖はありますが、見事な白鳥の騎士を演じています。それに加えてディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(1925-2012)とクリスタ・クートヴィヒ(1928-2021)の歌う悪役夫婦の何と立派なことか。このCD、どこをとってもスキがなく、本当に素晴らしい!
ケンペCD
参考CD(2)
指揮:ラファエル・クーベリック
ローエングリン:ジェームズ・キング 他(1971年 録音)
バイエルン州と言えば、ビールサッカーで有名なミュンヘンを州都とするドイツ屈指の州で、その昔はバイエルン王国があった土地柄。北のベルリンを中心とするプロイセンとは一線を画しています。ドイツといっても、オーストリアと文化や言葉で共通している部分が多いです。オペラではバイエルン州立歌劇場が有名ですが、オペラ録音としては、バイエルン放送交響楽団がよく使われます。指揮のラファエル・クーベリック(1914-1996)は1961年から1978年までバイエルン放送交響楽団の首席指揮者を務め、オペラをはじめ多くの録音を残しました。この録音は首席指揮者になってから10年を経た、お互いに気心を知ってからのいわば蜜月時代の録音と言えましょう。このローエングリンのジェームズ・キング(1925-2005)もアメリカのテノール。神々しい声は、ローエングリンにぴったりです。清楚なエルザを見事に演じているグンドゥラ・ヤノヴィッツと、悪妻オルトルートを押し出しよく演じているギネス・ジョーンズのやり取りは、この録音の白眉と言えましょう。
クーベリックCD
参考CD(3)
指揮:ヤープ・ヴァン・ズヴィーデン
ローエングリン:クラウス・フローリアン・フォークト 他(2008年 録音)
オランダの有名なコンサートホールであるアムステルダム・コンセルトヘボウでのライヴ録音です(「コンセルトヘボウ」とはオランダ語で、「コンサートハウス」の意味です)。これは、舞台装置があって演技をする上演ではなく「演奏会形式」といって、画像のように、通常のコンサートのようにオペラを上演するものです。ローエングリンを歌うクラウス・フローリアン・フォークトは、とても優れたヘルデンテノール。マッチョなイメージは全くないのですが、レーザービームのように、どんなに大音量のオーケストラをも突き抜けて声が届きます。かといって、大声を張り上げているという風にも聴こえません。最初聴いたときは、驚異でした。彼もローエングリンなど神々しい騎士の役が似合い、新国立劇場での「ローエングリン」では絶賛を博しました。なおこのCDには、この公演の模様を収めたDVDも付属されていました。このCD、オランダ語の解説のみなのでご注意を。
ズヴィーデンCD