プロダクションって何?

【ふじやまのぼる先生のオペラ講座(31)】
「芸能プロダクション」とか「制作プロダクション」といった感じで使われるプロダクション。では、オペラのプロダクションって何だろう?
スタンディングオベーションのイメージ
オペラでは、舞台制作のことで、演出衣装美術なども含めた事業全体を指す言葉として使われます。オペラには相当のお金がかかります。1つのオペラを制作した後、数年はその演出で公演が行われます。その最初の公演のことを「プレミエ公演」とか、「新演出公演」と呼んでいます。プレミエは豪華なメンバーが集められ、チケットも高額、まさに「プレミアチケット」(プレミエとプレミアは同じ意味です)。この日の公演の出来は、各報道機関で取り上げられます。演出家カーテンコールでステージに上がるのはこの日のみ。演出家へのブラーヴォブーイングかで、そのプロダクションの運命の一端が決まります。
言葉としては、「このプロダクションは、2015年に初演された」というように使われます。
1つのプロダクションで数年公演を行うオペラの場合、年によって歌手や指揮者は入れ代わり立ち代わり変更しますし、代役の日もあります。しかし、その都度演出や美術を変更していては、非常に手間がかかります。そのため、演出や衣装、美術は変えずに、歌手にその演出を覚えてもらって上演します。さすがに体の大きさは人それぞれなので、衣装はいくつか用意してあるようです。
しかし、プレミエ公演から何年も経つと、意図した演出からずれが生じます。演出家の死後までそのプロダクションが続く場合もあります。そのため、初演から一定の期間が過ぎると、「Wiederaufnahme(ヴィーダーアウフナーメ=再開、リバイバル)」と銘打って、最初の演出に立ち返る公演を行います。この時も初演並みに豪華な出演者が集められます。
蝶々夫人イメージ
単発的なオペラ公演が多い日本では、なかなか長期にわたるプロダクションは少ないです。それでも、日本のオペラ団体では、「蝶々夫人」を大事にしていて、東京二期会のプロダクションは、栗山昌良さんが2003年に手掛けたもの。また、藤原歌劇団のプロダクションは、1984年粟國安彦(1941-1990)さんが手がけたものです。どちらも再演が続いていて、東京二期会は、今年2022年9月に公演が予定されています。また藤原歌劇団は、昨年2021年6月に公演があり、その後、東京以外でも公演がありました。
1997年に、新国立劇場が開場したので、東京二期会や藤原歌劇団に勝るとも劣らない、歴史に残る名プロダクションが生まれることを期待しています。