初演:1790年1月26日 ウィーン、ブルク劇場
主な登場人物
登場人物相関図
あらすじ(つづき)
現代(オペラが書かれたころ)のナポリ
第2幕
姉妹が住む家の居間。世に長けたデスピーナは、アリア「女も15になれば」を歌い、適当に浮気でもなさいませとそそのかす。姉妹は「退屈しのぎにじゃあちょっとだけね」とその気になり、二重唱「私は、茶髪を」「私は、金髪を」と、まんざらでもなく相手を選ぶ。
姉妹が住む家の居間。世に長けたデスピーナは、アリア「女も15になれば」を歌い、適当に浮気でもなさいませとそそのかす。姉妹は「退屈しのぎにじゃあちょっとだけね」とその気になり、二重唱「私は、茶髪を」「私は、金髪を」と、まんざらでもなく相手を選ぶ。
海辺の庭園。男二人がもじもじしているので、デスピーナとドン・アルフォンソは助け舟を出し、おずおずと愛を語らいだす二組のカップル。早速ドラベッラはグリエルモといい感じに。二重唱「このハートをあなたに送りましょう」を歌い、グリエルモのロケットペンダントをドラベッラの首にかける。はじめは嫌がるドラベッラだが、勢いに負け、フェランドのペンダントをグリエルモに渡してしまう。一方フィオルディリージはフェランドを拒絶し、アリア「お願い、許して恋人よ」を歌い、遠くの恋人に気持ちの揺れを謝る。
フィオルディリージに拒絶された話を聞き、グリエルモは大いに安心する。反対に自分のロケットペンダントをグリエルモから見せられドラベッラ陥落を知ったフェランドは怒り狂い、グリエルモはアリア「ご婦人方、あなた方は男たちにもてあそばれる」を歌い、慰める。
姉妹が住む家の居間。悩むフィオルディリージにドラベッラは新しい恋人の話をし、アリア「恋は盗人」を歌い成り行きに任せることを勧める。フィオルディリージは、戦場にいる恋人に会いに行く決心し、軍服を着て出かけようとする。そこにフェランドが現れ剣を抜き、まず自分を刺してからお行きなさいと訴える。二重唱「恋人の胸に」。フェランドの熱意に負け、ついにフィオルディリージも陥落する。
フィオルディリージ陥落に、グリエルモも怒り狂う。ドン・アルフォンソは、それ見たことかと「女はみんなこうしたもの(コジ・ファン・トゥッテ)」と歌い、三人でそれを繰り返す。
結婚式の執り行われる大広間。二組のカップルが、デスピーナ扮する公証人の前で婚姻届けにサインをしたまさにその瞬間、戦場から二人の恋人が返ってきた知らせが。大混乱に陥り、男たちは逃げ去り、女たちは途方に暮れる。元の士官の服装で現れた二人。その場の状況を感じ取り、隠れていた公証人を引きずり出す。慌てるデスピーナ。悪いことに婚姻届を発見するグリエルモ。男たちは裏切りだと怒り出す。
「悪いのは私たちなので殺してください」と死を覚悟する姉妹。二人に士官たちは、アルバニア人は私たちの変装でしたと種明かしをする。「騙したのね!」とドン・アルフォンソをにらむ姉妹。だがドン・アルフォンソは慌てず、「盲目の愛よりも、こうなった上で再び抱き合うほうが本物の愛になる」と持論を展開する。二組のカップルはこれを教訓にし、丸く収まる。
アンサンブル・オペラ
このオペラ、登場人物は六人ですが、二組のカップルと二人、男女三人ずつ、など、一人一人の個性というよりも、組み合わせで成り立っています。また、全31曲のうち、一人で歌われる「アリア」などは12曲しかなく、それ以外は重唱です。このように、重唱がオペラの重要な要素を占めているようなオペラをアンサンブル・オペラと呼びます。例えば目玉に一人良い歌手を連れてきたとしてもこのオペラは上手くいきません。逆に一人でも実力のない歌手が入っていると、バランスが極端に悪くなります。六人の素晴らしい歌手を揃えられるか、これがこのオペラの成功のカギだと先生は思います。
自選役
このオペラからは、フィオルディリージ、ドラベッラの2役が、静岡国際オペラコンクール第ニ次自選役リストに含まれています。
参考CD(1)
指揮:ヨーゼフ・クリップス
フィオルディリージ:グンドゥラ・ヤノヴィッツ 他(1968年録音)
フィオルディリージ:グンドゥラ・ヤノヴィッツ 他(1968年録音)
ウィーン国立歌劇場でのライヴ録音です。これは、「Neueinstudierung(改定演出)」と銘打った公演。1966年に初演されたギュンター・レンネルト(1911-1978)演出によるプロダクションなので、新しいものではありません。しかし、時々原点に立ち返るために「改定演出」として公演を行います。
集められた歌手は、いわゆるこの劇場の座付き。「アンサンブル・オペラ」は、日頃の間合いや歌手の性格までもが音に出るので、こういった公演には座付き歌手が持って来いなのです。年齢も比較的若めで、最年長のクリスタ・ルートヴィヒ(1928-2021)がようやく40歳になったところ、最年少のアドルフ・ダッラポッツァが28歳。なお、ルートヴィヒとヴァルター・ベリー(1929-2000)はこの時夫婦(後年離婚しています)でしたので、グリエルモがドラベッラに求愛する場面は、お互いどんな気持ちだったのでしょうね。指揮は、戦後ウィーンのオペラ界を牽引したヨーゼフ・クリップス(1902-1974)。ユダヤ系でユーゴスラビアから引き揚げてきた彼は、ナチスに関係していなかったため、戦後すぐのオペラ公演にはなくてはならない存在でした。ライヴなので傷もあり、カットも多いですが、それ以上に当時の劇場や観客の雰囲気がよく伝わる記録だと思います。
参考CD(2)
指揮:カール・ベーム(1974年録音)
フィオルディリージ:グンドゥラ・ヤノヴィッツ 他(1968年録音)
フィオルディリージ:グンドゥラ・ヤノヴィッツ 他(1968年録音)
カール・ベーム(1894-1981)は、このオペラに相当の思い入れがあったらしく、ウィーン国立歌劇場では、全71公演を指揮しています(劇場HPによる)。これは「フィガロの結婚」の120回に次ぐ二番目の多さで、ちなみに3位はR.シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」で47回でした。「フィガロの結婚」と「ナクソス島のアリアドネ」は、1980年に日本でも指揮していますので、ご覧になった方もいるのでは。
この録音は、1974年のザルツブルク音楽祭における、ベーム80歳の誕生日の公演記録です。誕生日に指揮したいと思うほどお気に入りのオペラだったのかもしれませんね。この他に正規録音は1955年と1962年があります。海賊版を入れると、少なくとも8種類はあるかと思います。
ベームお気に入りの歌手で固められた公演ですので、素晴らしくないはずがありません。歌手だけ見ると、1962年の録音のほうが豪華ですが、その他の部分も総合的にみると、この録音に勝るものはないと先生は思っています。これもライヴなのでカットも多いですが、当意即妙の観客の反応も、この録音の味の1つです。
参考CD(3)
指揮:ジョン・エリオット・ガーディナー
フィオルディリージ:アマンダ・ロークロフト 他(1992年録音)
フィオルディリージ:アマンダ・ロークロフト 他(1992年録音)
古楽の大家ガーディナーによる洗練されたモーツァルトです。前2つと違って、ほぼカットなしの録音、しかもライヴ録音なので、その完成度の高さに驚かされます。ここでも「アンサンブル・オペラ」の特性がよく出ています。特出した有名歌手がいない代わりに、低水準な歌手もいない。ガーディナーのテンポ感は、前2つの録音とは違い、総じて早いもの。かといって、歌手を置いてけぼりにしてしまうほど超ハイスピードでもない。他の古楽指揮者のようにアクの強い音楽づくりでもない。まさに古楽器による王道まん真ん中といった録音です。
姉妹2人の声がとても似通っていて、筋書きから言ってもうってつけ。デスピーナは少し低めの声域のソプラノで、2幕フィナーレの公証人は、1オクターヴ低い声で歌っています。解説書にもありますが、この公演はヨーロッパ5都市で上演され、そのために15ヶ月もの準備期間を必要としました。アルフォンソのみ交代があったようですが、同じメンバーで巡演する。しっくり来ているのも頷けます。