ドニゼッティ作曲「ドン・パスクアーレ」 Don Pasquale Vol.2

【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(43)】
初演:1843年1月3日 パリ イタリア劇場

主な登場人物

登場人物一覧

あらすじ(つづき)

19世紀初め ローマ
第3幕 第1場 ドン・パスクアーレの家の居間
新妻に有り金を湯水のように使われるドン・パスクアーレは嘆き、「出かけたら離婚だ」と宣言するが効果なし。逆にドン・パスクワレーに平手打ちを食らわせて、派手に飾り立てて出かける。その時わざと逢引の恋文を落としていく。それを拾ったドン・パスクアーレは、仕返ししてやろうと、逢引の現場を押さえることにする。
マラテスタとエルネストは今後の打ち合わせをする。ドン・パスクアーレは、マラテスタに新妻の豹変ぶりを打ち明ける。マラテスタも驚いたふりをして、二重唱「そっと今すぐ庭へ出ていって」で、逢引き現場を押さえる手はずを整える。
第3幕 第2場 ドン・パスクアーレの家の庭
エルネストがセレナード「4月の宵は何と心地良いのだ」を歌っているとノリーナが現れ、二人で愛の二重唱「もう一度愛の言葉を」を歌う。そこへドン・パスクアーレとマラテスタが来るので、エルネストは身を隠す。浮気の現場を押さえたドン・パスクアーレは堪忍袋の緒が切れ、エルネストをノリーナと結婚させ、彼に財産を譲り、ソフローニャには渡さないと宣言する。一緒に来ていたマラテスタが、「おじさんが結婚を許してくれたよ」と伝えると、エルネストは「ソフローニャこそわが恋人ノリーナ」と言うので、皆に騙されたと悔しがるドン・パスクアーレ。人の良い彼は二人を許し、幕となる。

豆知識「『老人と海』ならぬ『老人と娘』」

老人が若い娘にちょっかいを出して失敗する話は、いろいろあります。このブログで紹介したオペラの中でも「ファルスタッフ」「ウィンザーの陽気な女房たち」「セビリャの理髪師」がありますね。リヒャルト・シュトラウス(1864-1948)の「無口な女」というオペラは、「結婚するまで大人しくて、結婚してしまえばこっちのもの」という点で「ドン・パスクアーレ」とそっくりです。これは、イギリスの詩人ベン・ジョンソン(1572-1637)の「エピシーンまたは無口な女」がもとになっています。ドニゼッティの台本作家がベン・ジョンソンを知っていたか定かではありませんが、ちょっと騙される老人がかわいそうな気もしますが。

今後の上演

新国立劇場での上演
2024年2月4日(日)、8日(木)、10日(土)
詳しくは新国立劇場のHPをご覧ください。
新国立劇場公式ウェブサイト公演特設ページ
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/donpasquale/

参考CD

参考CD(1)
指揮:カルロ・サバイーノ
ドン・パスクアーレ:エルネスト・バディーニ
ノリーナ:アデライーデ・サラチェーニ
エルネスト:ティト・スキーパ 他 (1932年録音)
90年以上前の、スカラ座のオーケストラの音が聴けます。何より、ティト・スキーパ(1889-1965)のエルネストを聴くCDです。戦前の歌唱法がよくわかります。
CD1
参考CD(2)
指揮:リッカルド・ムーティ
ドン・パスクアーレ:セスト・ブルスカンティーニ
ノリーナ:ミレッラ・フレーニ
エルネスト:イェスタ・ヴィンベルイ 他 (1982年録音)
(1)から50年後の録音です。歌唱法の違いがよくわかります。ムーティの生き生きとした指揮が、この喜劇をより明るくチャーミングにしています。フレーニはもう少しはじけても良いと思いますが、まじめな歌唱のイェスタ・ヴィンベルイ(1946-2002)とつり合いが取れていてよい感じです。心臓発作で急逝したヴィンベルイ。もう少し聴きたかったです。レオ・ヌッチのマラテスタなんて、もったいない気もします。おすすめです。
CD2