ヴェルディ作曲「椿姫」La traviata(歌詞:イタリア語) Vol.1

【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(8)】
初演:1853年3月6日 ヴェネツィア フェニーチェ劇場

主な登場人物

登場人物一覧

登場人物相関図

登場人物相関図

あらすじ

1850年ごろ(現代*)のパリとその郊外
*ヴェルディは、昔話としてではなく現代劇としてのオペラ上演を望んでいたが、劇場が難色を示したため、初演当時の出版物には1700年ごろとの表記がある。
第1幕 パリ ヴィオレッタの豪華な家 10月(または8月)
ドゥミ・モンド」と呼ばれる夜の世界。「クルチザンヌ」と呼ばれる高級娼婦のヴィオレッタは、パトロンたちを招いてのパーティーの真っただ中。田舎から出てきたアルフレードは、密かにヴィオレッタに恋心を抱いていた。皆に請われたアルフレードは、即興で「乾杯の歌」を披露し、ヴィオレッタ、続いて皆もそれに和す。食事が終わりダンスに移ろうとしたとき、ヴィオレッタは急に気分が悪くなる。皆を先にダンスホールへと向かわせるが、一人アルフレードだけその場に残る。かねてから肺の病を得ていたヴィオレッタに、自分の体を大切にするよう訴え、愛を告げるアルフレード。恋愛など慣れ切っているが、いつになく心が騒ぐヴィオレッタ。彼女は椿の花を一輪アルフレードに渡し、この花が枯れるころの再会を約束する。彼が去った後、長大なアリア「そはかの人か~花から花へ」を歌う。今まで出会ったことのないような男性から、言われたことのない真摯な言葉をかけられ、本当の愛に目覚めた自分。しかし、自分はどうすることもできない娼婦の身。自笑しながら、パリという砂漠の中で人生を楽しむことを決意する。

聴いてみよう

「そはかの人か~花から花へ」は実演がありますので、下のリンクから静岡国際オペラコンクールYouTubeにお進みください。第5回コンクール第1位だった光岡暁恵さんの名唱を聴くことができます。18分30秒くらいから解説も含めてお楽しみください。

光岡暁恵さん 「ふじのくにオペラweek」インタビュー&アリア歌唱
※下のバナーをクリックするとYouTubeの動画ページが開きます。

豆知識 「楽譜は本当に正しいのか」

(1)誰のために?
乱筆で知られたベートーヴェン。彼の名曲「エリーゼのために」は、ピアノを習ったことのある人なら、一度は弾いたことがあるのではないでしょうか。「エリーゼ」として私たちは認知していますが、本当は「テレーゼ」だった可能性があるそうです。当時楽譜は、手書きのものを読み取ってきれいに書き写す写譜屋という人がいて、それをもとに印刷できるようにしていたそうです。今はコンピューターできれいな楽譜を作るこのができますが、手書きの場合は、写譜屋さんのためにも、きれいに書かないといけませんね。
(2)転記ミス
「そはかの人か」の歌いだしの楽譜を2つご用意しました。1つ目は、オーケストラのスコア、2つ目はピアノ伴奏の楽譜です。よく見ると、1小節目と3小節目の色を付けたところが違っているのです。
・オーケストラスコア
オーケストラスコア
・ピアノ伴奏用楽譜
ピアノ伴奏用楽譜
3つとも本来は「シのフラット」でなければならない音符が、ピアノ伴奏譜では、「」になっています。これは、楽譜を作るときの転記ミスだと思われます。こういった微妙な差異は、結構たくさんあるものです。全世界的によく使われているオペラ楽譜出版社の楽譜ですので、ちょっと困りますね。最近は、間違いを正した新版の発行が進んでいます。「コレペティトゥア」と呼ばれる、オペラのピアノ伴奏者(仕事はもっと多岐にわたっていますが)は、ピアノの楽譜だけではなく、オーケストラのスコアも確認しながら、伴奏をしているそうです。「コレペティトゥア」については、第9回コンクールの公式伴奏者である岩渕慶子さんのインタビューと実際のお仕事の動画がありますので、こちらをご覧ください。
岩渕慶子さん 「ふじのくにオペラweek」コレペティトゥアのレッスン&インタビュー
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静岡国際オペラコンクールYouTube
第2幕 第1場 パリ郊外 アルフレードとヴィオレッタの家 1月
意を決し夜の世界から身を引いたヴィオレッタは、田舎の家にアルフレードと住んでいる。狩りから帰ってきたアルフレードは、ヴィオレッタとのつつましくも幸せな生活を送ることのできる喜びを、アリア「燃える心を」に込めて歌う。そこにパリから女中が帰ってくる。彼女は、ヴィオレッタの所有物を金に換えてきたといい、ヴィオレッタの要望で、アルフレードには黙っていたことを知る。アルフレードは、いたたまれなくなり、カバレッタ「ああ自責の念が」を歌い、売ったものを戻すためにパリへ出かけていく。入れ違いに帰ってきたヴィオレッタのもとに、パリから夜会への招待状が届く。「よくここがわかったわ」とつぶやく彼女には、夜会へ行く気はもうなかった。そこへアルフレードの父ジョルジョ・ジェルモンがやってくる。彼は、ヴィオレッタが息子をたぶらかし贅沢な暮らしをさせていると思い込んでいる。ヴィオレッタは金銭面での現状を話すと、ジェルモンは少し心動かされるが、アルフレードの妹が結婚するにあたり、娼婦と同棲している家族がいると何かと差し障るので別れてほしいと切り出す。彼女は、「自分はもうじき死ぬ身なので別れさせないで」と訴えるが、ジェルモンは聞く耳を持たない。泣く泣く分かれる決心をする。ジェルモンはこのことは内密にとくぎを刺し、安心して帰っていく。別れの手紙を書いていると、ふいにアルフレードが帰ってくる。父親が来ていたことを察するが、ヴィオレッタはそのことには触れず、アルフレードへの愛を改めて告げると出かけていく。不思議に思っているところに、ヴィオレッタから別れを告げる手紙が届けられる。絶望に陥るアルフレードのもとにジェルモンが現れ、アリア「プロヴァンスの海と陸」を歌い慰める。アルフレードは聞く耳を持たず、折り悪く夜会への招待状を見つけ、ヴィオレッタを追って家をとび出していく。
第2幕 第2場 パリ フローラの夜会の会場 1月
華やかなパーティー。ロマに扮した女性の手相占いや、闘牛士に扮した男性の歌やダンスで、会場は盛り上がる。そんな中、ヴィオレッタとアルフレードの話題になる。そこにアルフレードがふらりと現れ、ヴィオレッタもドゥフォール男爵と共に現れる。険悪な雰囲気の中、アルフレードは賭けに興じ勝ちまくる。そんなアルフレードにドゥフォール男爵は勝負を挑むが、アルフレードはそれにも勝つ。ドゥフォール男爵の気性の荒さを知っているヴィオレッタは、アルフレードを物陰に呼んで、ここを去るように訴える。アルフレードはヴィオレッタにドゥフォール男爵を愛しているのか聞くと、ジェルモンとの約束もあり本当のことが言えず、彼女は彼を愛していると答えてしまう。激高したアルフレードは皆を呼び集め、皆の前で今日勝ったお金をヴィオレッタの足元に投げつけ、彼女が今まで自分のために払ってくれたお金を返したと言い放つ。ヴィオレッタはこの屈辱に耐えられず失神し倒れる。皆に非難されるアルフレード。父ジェルモンがその場に現れ、息子の非道に呆れ激しく叱責する。後悔に苛まれるアルフレード。アルフレードのことを思いささやくヴィオレッタ。皆はアルフレードを非難し、ドゥフォール男爵はアルフレードに決闘を申し込む。
*ロマ:以前は「ジプシー」と言っていました。

豆知識「カラスの亡霊」

不世出のソプラノ、マリア・カラス(1923-1977)。「椿姫」のヴィオレッタは、カラスの当たり役の1つとして知られています。カラスがオペラの殿堂ミラノ・スカラ座で上演した「椿姫」は、スカラ座常連の耳の肥えたオペラファンの間で、長年語り草になっていました。彼女がスカラ座で、最後のヴィオレッタ役での出演は1956年でした。それから10年も立たない1964年カラヤンが「椿姫」を上演します。が、ヴィオレッタ役が天井桟敷からヤジられ、惨憺たる結果になりました。一晩目は何とか最後まで上演したようですが、二晩目は、ついに途中で上演は打ち切られたそうです*。そんなこともあり、1990年にリッカルド・ムーティ指揮で上演されるまで44年間、「椿姫」きちんとした上演はありませんでした。この時は周到な準備を行い、出演者は若手中心の布陣で臨み、ブーイングの巣窟である天井桟敷は閉鎖。ここまで準備してようやくカラスの亡霊は去ったのです。その後は、再演を重ね、来日公演でもムーティが指揮をしていたので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
*ムーティの「椿姫」の解説書より

「椿姫」の今後の上演案内

有名なオペラなので、上演も多いです。
(1)サントリーホールでの上演
サントリーホールでは、かつてそのホールの形状を生かしたオペラ上演を定期的に行ってきました。少し間が空きましたが、再び上演されます。今回は、主要な役を海外から招いた2公演と、日本人の若き音楽家たちによる1公演が行われます。
この公演には、第7回コンクールで三浦環特別賞に輝き、現在飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍中の小堀勇介さんが、海外組に交じってガストーネ子爵を、若手公演ではアルフレードを演じます。乞うご期待!
(2)新国立劇場での上演
ちょっと先の話ですが、令和4年3月に新国立劇場で上演があります。2015年に新国立劇場で上演され、2017年、2019年と再演を重ね、まさに新国立劇場の看板メニューといっても過言ではありません。
2022年3月10日、13日、16日、19日、21日(東京都渋谷区)
新国立劇場「椿姫」ホームページ
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/latraviata/
次回、第3幕をご紹介いたします。

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