声部のはなし(4)~ソプラノ~

【ふじやまのぼる先生のオペラ講座(11)】
お待たせしました。今回は、ソプラノです。百花繚乱。様々なものがあります。

ソプラノ

女声の高い声部ですね。語源をたどると「スーパー」ってことです。とっても高いということです。何に対してとっても高いか?「アルト」です。忘れちゃった人は、「声部のはなし(2)」を見てくださいね。
役柄としては、楚々とした美女から自分をしっかり持った女傑まで。侍女役でもまだうら若い、でも男を手玉に取る才女。さあ、見ていきましょう。かっちり区別されているわけではないので、多少前後して分類する人もいます。ソプラノも(1)から(5)に行くにしたがって役柄の年齢が高く、声が重たく力強くなっていきます。
鴫原奈美さん画像
鴫原 奈美<第7回1位>
(ソプラノ・日本)
(1)コロラトゥーラ
大変な超絶技巧で、超高音を発することがあります。モーツァルトの「魔笛」の夜の女王やR.シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」のツェルビネッタが有名です。また、様々な原因で精神の平静を保てなくなった時、「狂乱の場」と呼ばれる超絶技巧を繰り広げる場面があります。ドニゼッティの「ランメルモールのルチア」のルチアや、ベッリーニの「清教徒」のエルヴィーラなどに見られます。
(2)レッジェーロ
若く溌溂とした女性の役が中心です。「おきゃん」とでも言いましょうか。モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」のゼルリーナや、ドニゼッティの「愛の妙薬」のアディーナなど。また、賢い女中、例えばモーツァルトの「フィガロの結婚」のスザンナやJ.シュトラウス2世の「こうもり」のアデーレなど、主役を引き立てる重要な役もあります。
(3)リリコ
抒情性をたたえた少し大人の女性の役が中心です。「フィガロの結婚」の伯爵夫人や「ドン・ジョヴァンニ」のドンナ・エルヴィーラ、「こうもり」のロザリンデなど。
(4)スピント
もう少し大人の、劇的な雰囲気を持った役が多いです。声も張りのある力強いものになっていきます。「ドン・ジョヴァンニ」のドンナ・アンナや、ワーグナーの「ローエングリン」のエルザなど。
(5)ドラマティコ
女傑。なかなかお目にかかれません。どこを切っても熱い血潮が噴き出す、そんなイメージの役が多いです。ベートーヴェンの「フィデリオ」のレオノーレ、R.シュトラウスの「エレクトラ」のエレクトラなどです。
この他、リリコ・レッジェーロとかリリコ・スピントなど、もっと細分化することもあります。
4回にわたって声部のお話をしてきました。厳密に線引きされているわけではないですし、もっと細分化されることもあるので、人によって分類は少しずつ違っていると思います。ネット上でもいろいろな方が綴っていますので、ご覧になって、ご自分の中での分類方法を決められるのが良いかと思います。

例えば、テノールよりも高く裏声で歌う「カウンターテナー」や男性のソプラノ「ソプラニスタ」など、変わり種もあります。

歌手の方の中には、「コロラトゥーラ・ソプラノの○○です」と細分化して、自分の特徴(特技)を入れた自己紹介する人もいます。ブログやFacebook、twitterなど、注意して見ると面白いですね。
いかがだったでしょうか?同じ声種でも、大きな違いがあるのです。いつも「夜の女王」を歌っているソプラノに、同じソプラノだからと言って、「エレクトラ」を歌って、と言ってはいけません。それぞれ自分に合った役を持っているものです。それは、「その役をやりたいから」という理由ではなく、「自分の声で無理なく演じることのできる役だから」なのです。テノールの小堀勇介さんは、「いつまでも叶わない憧れを大切にしたい。」という言葉で、自戒を述べていました。好きな音楽、好きな役柄に対しても、歌いたいけど歌わないという自戒。無理して守備範囲外の役を歌ったがために歌手生命を絶たれた、あるいは歌手の寿命が縮まった歌手は本当にたくさんいます。常に自分が今どういう状態にあるのか、どの役が合っているのか、これからどういう方向に進んで行くのかを考える必要があるのです。
小堀さんのツイート
役名をいろいろ紹介いたしました。役名の洪水だったかもしれません。お許しください。興味のある人は、どんなオペラのどんな役柄なのか調べてみてくださいね。今後、オペラを紹介しながら、第2次予選の自選役についても、紹介していきますのでお楽しみに!