オペラの種類(3)~フランス・オペラ~

【ふじやまのぼる先生のオペラ講座(14)】
「オペラ・コミック」
“Opéra Comique”と綴ります。「コミック」とは、日本語では「漫画」ですが、「滑稽な」という意味でとらえてください。「オペラ・コミック」を専門的に上演する劇場が「オペラ・コミック座」です。18世紀に開場した劇場ですが、ナポレオンの政策で、「セリフと歌で構成される、多くても3幕仕立ての軽い喜劇」を上演する劇場とされました。堅苦しくない会場の雰囲気からか、お見合いの会場としても使われたようですよ。ドイツ語の「ジングシュピール」と「オペラ・コミック」は、構造は同じといえましょう。違う点は「オペラ・コミック」は「喜劇」という点です。

一番有名な「オペラ・コミック」は?

それはビゼーの「カルメン」です。もともとはセリフの入る形式でしたが、フランス語のセリフって、ネイティヴでないととっても難しい。国外での上演向けに、セリフにも音楽がつけられて上演されるようになりました。そんなわけで、「オペラ・コミック」らしくない上演が多いです。

「次に有名なのは?」と問われると、グノーの「ファウスト」でしょうか。「ファウスト」も、今「オペラ・コミック」で上演されることはそう多くはありません。歌い通す形式での上演がほとんどです。

その次となると…。オベールの「マノン・レスコー」を挙げておきます。その他全曲ではあまり知られていませんが、マイアベーアの「ディノラ」(アリア「影の歌」で有名)、グルックの「メッカの巡礼」(モーツァルトが「愚民が思うには」により変奏曲を作曲している)が、耳に届きやすい音楽です。
「グラントペラ」​
フランス語です。“Grand Opéra”と綴ります。皆さんの馴染みのあるのは英語表記の「グランド・オペラ」でしょうか。「フランスのオペラ様式の1つで、比較的大きな規模のオペラ」を指します。これはパリ・オペラ座で上演されるのを目的として書かれたオペラの様式です。いくつか条件があって、

(1)4幕または5幕仕立て
(2)バレエの場面があること
(3)地方色を出すこと
(4)スペクタクルの要素があること
 
など。これらの条件が揃えば、他国の作曲家でもオペラ座の門は開かれていました。
ロッシーニやヴェルディも、パリでの成功を夢見て作品を書いています。しかし次第にマンネリ化して、この形式はすたれていきました。そのような理由で、現在盛んに上演される有名な「グラントペラ」は皆無に近いですが、ロッシーニの「ウィリアム・テル」やヴェルディの「シチリア島の夕べの祈り」や「ドン・カルロス」は「グラントペラ」としてパリ・オペラ座で初演されました。「ドン・カルロス」については、以前ご紹介しましたね。