ベッリーニ作曲「カプレーティとモンテッキ」 I Capuleti e i Montecchi (歌詞:イタリア語)vol.2

【ふじやまのぼる先生のオペラ解説(10)】
初演:1830年3月11日 ヴェネツィア フェニーチェ劇場

主な登場人物

登場人物一覧

登場人物相関図

登場人物相関図

あらすじ(つづき)

1200年代 イタリア・ヴェローナ
第2幕 第1場 カペッリオの館の一室
ジュリエッタが不安そうに佇んでいる。ロレンツォが現れ、ロメオの無事を告げる。彼は、結婚せずにロメオに会うためには、一度死んだことにしなければならないと告げる。そして、数時間仮死状態になる薬を渡す。躊躇うジュリエットだったが、アリア「神よ、私は死を恐れない」を歌い、薬を飲む。
直後にカペッリオが現れ、自室に戻るよう促すが、薬のせいで動くことができない。彼女はアリア「ああ!この場を去るわけにはいきません」を歌い、父に遠回しに別れの言葉を告げる。
ロレンツォの助けを借りてようやく自室に戻ることができるような状態のジュリエッタに不信感を持ったカペッリオは、ロレンツォを外出禁止・面会禁止にするよう命じる。
第2幕 第2場 カペッリオの館の近く、人気のない場所
ロメオはロレンツォを待っているが、なかなか現れない。そこにテバルドが現れ、二人は激しい決闘となる。その時館から、死を悼む合唱が聞こえ、葬列が館の回廊を行くのが見える。合唱から、亡くなったのがジュリエッタだとわかると、二人は戦意を喪失し、ロメオは死を望む。
第2幕 第3場 カプレーティ家の墓所
ジュリエッタが安置されている。ロメオが現れ、アリア「天に昇る美しい魂よ」を歌い、彼女に別れを告げ持ってきた毒を飲む。その時仮死状態から目覚めたジュリエットの声が聞こえる。驚くロメオ。彼女から事のいきさつを聞くが時すでに遅く、ロメオは死ぬ。ジュリエッタはロメオの剣で胸を刺し、彼の後を追う。駆け付ける人々。「誰が殺した」と言うカペッリオの問いに、一同「あなたが」と答え、幕となる。

自選役

このオペラからは、ロメオが、静岡国際オペラコンクール第二次予選自選役リストに含まれています。

豆知識「派閥争い」

あらすじの中で、グエルフィ党(ローマ教皇派)ギベッリーニ党(神聖ローマ帝国皇帝派)が出てきました。オペラに関係あるの?そう言わないで、難しい話はしません。他のオペラでも、この2つの派閥が出てきます。それは、ヴェルディの「シモン・ボッカネグラ」です。シモンは元々海賊でした。彼はグエルフィ党の貴族の娘と恋に落ち子どもが生まれますが、親の反対にあいます。そこで、ジェノヴァの総統になれば結婚を許されるだろうと思い、ギベッリーニ党から推されて総統になりますが、愛する彼女は死んでしまいます。そこからこの物語は進展していきます。また有名ではないですが、ドニゼッティの「ピーア・デ・トロメイ」やザンドナーイの「フランチェスカ・ダ・リミニ」も、両者の対立が物語を展開させます。

今後の公演案内

日生劇場での公演があります。
NISSAY OPERA 2021「カプレーティとモンテッキ」
2021年11月13日、14日(千代田区有楽町)
詳細は下記URLをご参照ください。
https://opera.nissaytheatre.or.jp/info/2021_info/I-Capuleti-e-i-Montecchi/

参考CD

参考CD(1)
指揮:リッカルド・ムーティ
ロメオ:アグネス・バルツァ
ジュリエッタ:エディタ・グルベローヴァ 他(1984年録音)
ライヴ録音というのが信じられないくらい、主役の二人が本当に素晴らしい演奏です。グルベローヴァはこのコーナーにも何度も登場していますね。ロメオのバルツァは、ギリシャ出身のメゾソプラノです。「ドン・カルロ」エボリ公女や、ビゼー作曲「カルメン」カルメンは絶品です。ドイツで研鑽を積んだ彼女は、どの言語のオペラを歌わせてもネイティヴのように発音しています。相当努力したのではないでしょうか。先生も彼女の「カルメン」にはやられました。彼女はロッシーニのメゾ役も得意としていて、ベルカントはお手の物。このロメオでも、惚れ惚れする若者を演じています。モーツァルト作曲「フィガロの結婚」ケルビーノや、リヒャルト・シュトラウス作曲「ばらの騎士」オクタヴィアン「ナクソス島のアリアドネ」作曲家ヨハン・シュトラウス2世作曲「こうもり」オルロフスキー公爵などのズボン役(女声が演じる男性の役)を得意とするバルツァの面目躍如といったところでしょうか。
ムーティCD
参考CD(2)
指揮:ファビオ・ルイージ
ロメオ:エリーナ・ガランチャ
ジュリエッタ:アンナ・ネトレプコ 他(2008年録音)
こちらはガランチャのロメオです。ガランチャはラトヴィア出身のメゾソプラノ。バルツァの30年後を追うといった感で、似通った役柄を得意としていて、今や押しも押されもせぬメゾソプラノとして君臨しています。先生も2003年新国立劇場でのオッフェンバック作曲「ホフマン物語」ニクラウス/ミューズや、2003年末ウィーン国立歌劇場で、ロッシーニ作曲「セビリャの理髪師」ロジーナを聴き、良いメゾソプラノが現れたと感動したことを覚えています。その後の世界的な活躍まではそう時間がかかりませんでした。ガランチャもバルツァと同じくズボン役を得意としています。ガランチャロメオも絶品。ネトレプコはロシア出身のソプラノ。可憐なジュリエットとは一味違う、運命に立ち向かう女性を演じています。脇役感のあるテバルドですが、ジョセフ・カレヤがかっちりと演じていて、とても好感が持てます。
ガランチャCD